ラブプレイ~Hな二人の純愛ライフ~

中村 心響

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美容師っていったら師弟関係は外せない。やっぱり見て覚えろの世界だから新人のアシスタントの子達は鏡越しに技術者である先輩達の仕事を睨むように見つめている。

「読み終わったみたいだから花田さんの週刊誌変えて」

「あ、はい!」

聞こえてきた先輩とアシの会話にさすがとつい唸ってしまった。

目前の客を触りながらその二席向こう隣の客の様子にまで目を配る。

先輩の技術を盗むのに必死になる新人とはちがう余裕も見て取れた。

新人はこれを繰り返しながらサービス業という接客を覚えていくんだろう…。

俺はその新人の中でも一番下っ派だ。

客にもまだ近付けず、ただひたすら床に散れる髪をほうきで掃くのが今は大事な役目。

ただ、そのお陰か店内を自由に行き来して観察中でもある。

外の世界。未知に包まれていてやっぱ楽しい──

経験に敵う学びはやはり他にない。益々そう確信する。

裏の方では先輩に叱られたのか、新人が涙ぐみながら控え室から出てきていた。

「ねえ、あの子…誰かに似てない…」

週刊誌を新しく変えてもらった花田さんとやらが本を口に当て、こっそりアシに耳打ちしていた。

だて眼鏡を掛けて寡黙に床を掃く俺に鏡越しで視線が集中している。

来客した殆どの人には撮影が行われていることが通告されていた筈が、どうやら花田さんだけには通っていなかったらしい。

アシは手早く説明しているようでもあった。


「藤沢さん」

集めた髪をゴミ箱に捨てていると店長に呼ばれた。

「さっき教えたマッサージって出来そう?」

「……っ…」

それはもう客に触れということでは……

俺はつい唾を飲んで頷いた。

たかが肩揉みなのに、客に入れといきなり言われ、変な緊張が走る。

そうか、皆急にそう言われて仕事を任されていくんだな……。

店を見渡せば、さっき泣いていた新人が緊張しながら客と会話して頭皮マッサージをしている。

頑張れっ…

つい心の中で俺はその子を応援していた。

って人どころじゃない。

俺も今、床の掃除人から接客するという立場に立たされているわけで……

客はあの、花田さんだった。。。

店長が多分、許可を取ってくれたんだろう。カメラに映ることと、俺の接客の練習をさせてもらうように。

花田さんは見たとこ40代──

新しく売り出した藤沢 聖夜がターゲットとするファン層だ。

そう思うと緊張とは別に、変な意気込みが俺の中で沸いてきていた。

この感覚だ──

俺が役者という仕事から脱け出せないのはこの高揚感。

試されていることに常に挑み続ける緊張と高揚。

仕事を急に宛がわれ、少し怯えていた感情はもう何処にもない。

俺は藤沢 聖夜だ──

美容師の卵、それを演じればいい。

そう覚悟を決めて花田さんに新人らしく微笑み掛けた。

先ずは顧客第一号。

ターゲット 花田 郁世 46歳──

ゴングの鐘が頭で鳴り響いた。

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