男装バレてイケメン達に狙われてます【逆ハーラブコメファンタジー】

中村 心響

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第一章 出会い編

5話 ザドルの過去

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施設内を歩きながらアレンは色んな話をしてくれた。

「食事はいかがでしたか?」

「うん、すごく美味しくてボリュームあったよ、エバも優しいし!」

「それは良かった、彼女は施設の創業以来からあそこに勤めてます。食堂は普段は主に、城の兵士や我々役人が使用しておりますからみんなの母親的存在ですよ」

「母親かぁ、うんそんな感じする!」

「正直、彼女に敵う者はこの城にはいないと言っても過言ではないでしょう……もちろん、ルイス様もです…」

アレンは語尾をこそっと耳打ちした

「‥そうなんだ?」

「毎日、何百人もの料理を作ってますからね~彼女のアームパワーは強烈ですよ? 一度、酒を飲んで暴れた者が居て彼女の鉄拳が炸裂した事が…それ以来場内はアルコール禁止です。……怪我人が出てしまいますから…」

「はは、そうなんだ」

‥ザドルもそんな事言ってたな?

「ここで誰を味方につけるか、 って言われたら間違いなく誰もが彼女を選ぶでしょう! もちろん私も。とても心強いですよ、発言力もあるし」

「わかりました。ザドルも言ってたから‥エバなら力になってくれるって」

「おやっ!もうザドルとは話をしたんですか?‥」

「うん?」

驚く素振りを見せたアレンにアルは不思議そうに頷いた。


「いや、実は騒ぎの張本人がザドルだと聞いていたのですが‥ルイス殿が何が何でも少年とザドルの部屋を近くにして置けと…‥なるほど。そういう事でしたか…」

「‥何がなんでもっ? じゃあ部屋が隣は偶然じゃなく、わざと‥って事?」

「はぃ‥計画的犯行、です」

「あっきれたー! もしまた、絡まれたらどうするつもりだったのさっ!」

「いえっ、たぶんそれはルイス殿も絶対に大丈夫だと確信の上で…」


「“たぶん”と“絶対“ は意味違うよ?アレンわかってる!?隊長と二人して大丈夫、大丈夫って‥っ‥」


アルはキレ、さっきとは形勢逆転、アレンが押されるカタチとなった

「まあ、仲良くなったのならいいじゃないですか。エバを紹介したのも彼でしょ?…」

「う…ン‥そうだけど…」

「大丈夫だってのも根拠があるんですよ…
 エバは彼の義理の姉にあたります、」

「えっ‥そうなの?」

「はぃ、彼の奥さんの実のお姉さん‥です、」

「奥さんいるんだ‥」

「はぃ正確には、いました、と言うべきでしょうか‥だいぶ早くに亡くしておられます、体の弱い方だったらしく‥」

‥そうだったのか‥‥

  ・

「そして、そのあとすぐにたった一人の愛息子さんも…まだ、三歳ぐらいだったと思います…生きていればアル、あなたと同じ年頃でしょう…」


「――ッ!…」

アレンはアルを見つめそして続けた。

「私は彼があなたに構う気持ちがわかります…そしてルイス殿も…同じでしょう。彼の人の良さをちゃんと理解しています……あなたを見て自分の息子も生きていればこんなに成長してるはず……
彼ならそう考えてやまないはずです。
こんな危険な大会に出て命を落としてほしくない……

人として当たり前の感情ではないでしょうか……
彼は命の尊さを知ってる男です…」

アレンは表情を歪めたアルに向き直る。

「…とても不器用な男ですがアル……
あなたのお蔭で彼は変われるかも知れません。
最近、彼は自暴自棄になることが増えました。何かをすっかり諦めたような……。
あなたも心優しい少年です。

‥人のために、そこまで涙を流すことは中々できないでしょう……

どうか彼を助けてやってください…アル。あなたならそれができるはずです……」

「……っ…」

何かがつつーっと、アルの頬を伝う。
アレンの言葉で次から次へと溢れ出る涙をアルは拭わずにいた‥

アルはわからなかった。アレンに指摘されるまで自分が泣いてることを、アル自身が信じられなかったからだ。
目頭が熱くなった記憶はある…

でもこんなに泣いてるなんてっ

アルは自分の濡れた頬に気付き動揺した。



下を向けば石造りの床に流れ落ちた涙が染み込みきらずそこに残っていたる。



「…ぁ‥ごめっ‥」




か細い声でアルが今の状況を詫びようとしたときだった。

アレンがすかさずハンカチでアルの鼻をかんでクシャクシャな顔を拭き取ってくれた。

「謝る必要はないです。私がお願いした方なんですから」

「ぅ‥ン」

アレンはね、と首を傾げ優しく微笑む。うつむくアルを覗きこんでアレンはとっさに思った。
涙は止まったが、とても連れて歩ける顔ではないっ…‥このまま一緒に歩けば自分がいじめっ子だと思われてしまうっ…と。


…役所の部下達から
“やっぱりあの人は非道の鬼総督ルイス殿の右腕だ”そう言われては今まで築いてきた私のイメージがっーー…


「……あ、あのっ…もうそろそろお昼になりますからっ…施設を見学しても誰も恐らくいらっしゃらないでしょう…っ…後日に出直しましょうかっ…ね!」

「うん…そうする‥」


正直なところ、アルも今回はパスしたかった。
これだけ泣いたんだ自分の顔がどうなってるか想像がつく…‥

涙が止まり、アルも少し気恥ずかしさを感じていたのだ。

「ホッ‥ じゃあ部屋へ帰りましょう!」

(ホッ?)

「サァ、急いで急いでっ」

思い切り安堵した表情を覗かせたアレンにアルは違和感を感じる。
    ・

アレンはアルの肩を勢いよく掴むと物凄い早足で‥歩いた── 

‥こ、これは競歩!?

アルはアレンに釣られながら着いていく。

不自然な動きに普段、使う事のない前ふくらはぎが悲鳴をあげはじめていた。


「ア、アレン!? ‥いっそのことっ‥走った方がいいのでは‥はぁっ」


「い、いぇっ‥施設内を走るっ‥ことはっ‥はぁっ禁じられてっ‥おるます」

‥お、おるますっ!?

アレンも疲れからか“ろれつ”が廻らないらしい?


「でもっこれじゃ‥走ってるのと変わらな…はぁっ」


正直、走るよりやかましい……。


先陣切って前を行くアレン。
だが、長い旅をして鍛えられてきたせいか、体力的にも年令的にも運動能力に長けているアルにアレンは徐々に遅れをとってしまった。

距離がどんどん離れ自分を気にかけるように後ろを振り返るアルの余裕が憎い!

アレンは歯を食いしばり、あらん限りの雄叫びを上げ力を振り絞り加速する。


「…っ…ぬおぉぉぉぉぉ──」


‥が、しかし 体がついて行かず足がもつれ、気迫ばかりが空回りしアレンは派手にこけた‥‥ 


「ああっ!…っ…む、無念…」

アレンは恨めしげに遠く離れたアルを見上げる。

駆け寄ろうとしたアルにアレンは叫んだ。



「後戻るでないっ!
進むのだ自分の道をっ!!」


アルは床に突っ伏し顔だけを向けて、完全に何かになりきっているアレンに戸惑った‥


そんなこと言われてもっ‥もう着いちゃったんだけどっ…



…沈黙の空気が漂っていた。




アレンは静かに立ち上がると何事もなかったように埃をはたき、アルの傍に歩み寄る。


「施設内は、また明日ご案内致します‥何時でも結構ですから準備ができたら受付室に来て下さい、では私はこれで‥」



普段のアレンに戻り去っていく。アルはそれを見送り無言のまま部屋に入った。


「───……」

閉まるドアの音がカチャリと響く。

アルはベッドにドサリとうつ伏せで身を投げた。



「……──プッ…ププッ…



フっ…フフフ‥アハハハッ!!」



背を向けた肩が大きく震えアルはベッドにうずくまり突然笑い出していた。


「アハハハハッ‥…
はぁーッッ‥なんなんだ!
いったい今日は!‥‥」

くるりと仰向けに直り天井を見つめる。
瞼は重いが気持ちはとても晴々している。

怒って泣いて走って笑って…‥
もう、ぐったりだ……



アルは自然と笑みを浮かべた。

心地いい疲れがアルをそのまま深い眠りへと誘う

柔らかな白いシーツに身を任せアルはゆっくりと目を閉じた‥‥


  ・

―カチャ―

「ただいまー……!…」

「アル、ただい‥プ」

「しっ!‥」

ユリアは後に続いたティムの口を手の平でふさいだ

「‥アル、寝てるみたい…」

「…ほんとだ‥‥疲れたんだな‥寝かしといてあげよぅ‥」

「うん、あんた達も静かにね‥」

ユリアは後ろのちびっ子二人にも言い聞かせた

―ぅん
―シ-ッ!ネ


夕暮れ時、空は綺麗なオレンジ色に輝いている
子供達はアルが目覚めるまで傍らで静かに遊んだ‥













「ぅ…ん………ン…、眩し、ぃ………?…?……!」


目を閉じていても光が射す


――ハッ!

アルは目を覚ますと周りを見渡した。窓の外は暗く部屋は明かりがついている


「あっアル起きた、…!?」

「あれ、みんな帰ってきてた‥なに?」


アルは自分を見つめる子供達の目が点になっているのに気がついた




「どうしたんだその顔ー!?」


「へっ?」



アルは寝起きのせいかイマイチ思考がまわらない。が何となくすごく視界が狭いようには感じていた…

そう、泣き腫らしてすぐ寝てしまったアルの目は綺麗なぱっちり二重の跡形も消え、宇宙人のような瞼になっていた



自分を指差し、けたたましく笑う子供達に憎しみすら覚えそうなアル。

「……っ…ひどいよ、みんな‥」

そう呟きながらベットから降りると自然とお腹に手が行く。時計を見るともう

「8時っ!?」

……だった。
慌てて食堂に行こうとしたアルだったが、とっさに身をひるがえし部屋の鏡を覗くと突然、膝から崩れ落ちた。

‥み、見なきゃよかった。

とても人には見せられない…アルはそう確信した。

後ろを振り向けばアルの挙動不振な行動を心配する子供達の目が‥‥‥

「ごめんみんな‥この顔じゃ、食事取りに行けない‥‥‥‥」


「‥‥‥‥フフっ
‥いいよっ アル、気にしないで! 夜食べないぐらいどうってことないさっ」

「ティム‥」

「それに‥ほら!」

ティムは持っていた紙袋から朝渡したパンを一つ取り出した

「食べ‥なかったの?」

「ちゃんと食べたよ!おやつもっ」

「‥じゃ、なんで‥
余るはずは…」

「マークと半分こ したんだ!‥ユリア達が半分ずつなのに、オレらがまるごと一個食べられるわけないじゃんかっ  なっマークっ」

「うん! みんな半分こだよっ みんないっしょっ!」

「‥‥‥‥」

「みそこなうなよなっ!」


    ・

「‥そう‥みんなで分けたんだね……………エライ!」

アルは何だか嬉しくなってみんなの頭をクシャクシャと、おもいっきり撫で回しす

「…ア、アル痛いよ」


ぐらぐら揺れながらティムが訴えた…



顔も心も笑みでほころぶ。

‥この子達は、すべてを分かち合うことができるんだ!


アルはそれが嬉しかった…

「さぁ、パンを分けようか!」

アルはパンを取り五つに分ける。子供達の手には大きめのパンも五等分にするとたちまち一口大になった…

クスクス笑いながらみんなで“いただきます”をいう

お腹は満たされなくても心が満たされる…今はそれで充分!…アルはそう思っていた




―カチャン―

小さなパンを口に入れようとした時、ドアの向こうで何か物音がした…

「シッ!  ………」

アルが唇に指をあて言った

「…ちょっと、見てくるから‥静かにね…‥」

子供達の喉がゴクリっと鳴る……緊迫した一瞬‥
どうしよう、バレたかな……そういえば、さっきから大声で騒いでばかりだった‥

子供達は今になってアルを大笑いしたことを後悔し始めた‥ 
“追い出されるかも”‥その事が子供達の脳裏をよぎる……



「………ティム、み‥んな来てみなよっ!」

ドアを開けたアルが興奮ぎみにみんなを呼んだ
ドアに駆け寄った子供達の目にうつったものは‥

…5人分の料理とカップとフォークを乗せたトレイ…そして、向こう側には大きなお尻をプリプリさせながら歩くエバの後ろ姿だった…

「うわっ!」

子供達は信じられないっ
そういった顔をしている



…エバ‥ありがとう!‥



アルは感謝の気持ちでいっぱいだった

「みて、‥ポットが二つある!」

ユリアがアルのシャツの裾を摘んでいった

「うん、そうだね」




ティムがポットの蓋を空けて覗き込む




「わあっ…すっげぇっ!
ミルクとオレンジジュースだ! 」



―うわぁ!!



みんなの瞳がいっきに輝きだした

アルはトレイを持ち部屋に運ぶ。ティムとユリアはそれぞれポットを持った。



「よしっ!食べよう! もちろん残さずね!!」



―うんっ!!


子供達は大きく頷くとフォークを一斉に握り締めていた。


   
◇◇◇


「ルイスっ悪い、遅くなったっ!」


「あぁ、べつに構わないよ。名簿が出来上がったから呼んだまでだ………」

「名簿? できたのか?…で、どうだった?」

ルイスは訪れたロイドに椅子を勧めながら書類を渡して言った

「予想通りだよ…危なっかしい奴らも入ってる。
どうしたもんかと思ってね…」


ロイドは少し考えて口を開いた。


「………ザドルと対戦するように仕掛けるってのは?」


「……それも考えたさ‥
でも、今のあいつで大丈夫かどうか…去年の決勝戦で闘ったお前ならわかるだろ……」

ルイスは“ムリムリ”とでもいいたげに手をひらひらさせた


「……あぁ、あいつらしくない闘い方だったな‥‥
なんか、殺してくれ!と言わんばかりの…だから、俺は勝てたんだがな…」

ロイドは天井を仰いで溜め息をつく

「…そう、完全に生きる張り合いをなくしてる……



そういうとルイスは一枚の紙をロイドに渡した‥


「‥なんだ?
‥ディアノル・J・バートン ?」


「ザドルが昨日、受付の時にちょっかい出したガキだ‥」


「……あぁ!青白いひょろひょろしたガキか……こいつがどうした?」



「いや‥ザドルが興味持ったガキだ。立ち直らせるのに一役買ってくれないかと思ってね……」


「立ち直らせる?…どうやって?………」


「さあね……?」

ルイスは両手を広げ肩をすくめた



「さすがの隊長様にも“策は無しっ”ていうことか‥…」


ロイドは溜め息をつきながらテーブルに片肘をつき頭を抱えた


「まぁ、先はわからなからな‥大会まで日がある。取りあえずエントリー表は状況見えるまでお預けって事だな‥」


「‥そうだな…!っ、そういえば今日、体慣らしに鍛練所に行ったんだが、アレンとそのガキが通路の方で、えらい楽しそうにはしゃいでたぞ?」


「はしゃぐ?…
アレンがか?
へぇ、あの鉄仮面がねぇ…アレンにはそいつの世話を頼んであるからな。
でも 出来ればザドルと親密にさせたいんだが………」


「……騒ぎがあったのが昨日の今日だ。
そう、簡単には親密になれないだろ?」


「うーん……まぁ様子を見てからだな…ザドルが望み薄だったら今年の大会は参加者が一気に減るか、死亡者が一気に増えるかどっちかだ…」


   


「確かに、それは避けて通れないだろうな…
まぁ、時間があったら俺もザドルの様子を見に行ってみるよ。
じゃあな、もう行くけどあんまり根を詰めて考え込むなよ!」


ロイドは、ねぎらうようにルイスの肩をぽんと叩くと椅子から腰をあげ部屋を出る…

「あ、ロイ!!」

「ん? なんだ?」

呼ばれてロイドが振り返る

「サンキュー、…愛してるよ!」


「……っ…気色ぃっ!」

―バタンッ!


ロイドはルイスのラブコールを受け付けずに冷く扉を閉めた




「フゥ……冷たいな、
ほんとに困ってんのに…
…よしっ! こんな淋しい夜は愛しのマリリンに慰めてもらうか!

マリリン待ってろよ。君の王子様が今行くからな~」

猫なで声で名を呼ぶとルイスは足どり軽やかに部屋を後にした





「はぁー苦しいぃ~
ちょっと食べ過ぎたかな?」

「ケプッう~おいらも」

「うん、いっぱいあったものね?…でも、しあわせ~」

―ゥンしあわせっ♪
―しゃわしぇ♪

満足そうな顔をして、苦しそうにお腹をさする子供達を見てアルも笑顔になった

‥だけど、ほんと苦しい。


「もう少しゆっくりしたらお風呂行こうか?…たしか、紙には10時以降って書いてあったから‥」


「うん、アルの背中アタシが洗ってあげる!」


「ほんとに?楽しみだな♪その前に食器を持ってかなきゃ……

………!  そうだ、手紙を書こう!みんなでさっきの人に」


「うん、お礼の手紙だろ!」


「そう、お礼の手紙…♪」

アルはそういうと部屋に備え付けてある紙とペンをティムに渡した


「う~ん、 なんて書いたらいい?アル……」


「そんなに難しく考えることないよ! 一言でいいんだから‥“ありがとう”その一言でいいんだよ…

みんな同じでいいよ…」


アルは考え込む子供達に優しく伝えた

「おう、わかったっ!」


ティムはそう返事すると声に出しながら手紙を書いた。


  ・

「あ~り~が~と~おっと!よし、はぃ次ユリアなっ」

「…ティム…さいごは
“お”じゃなくて“う”だよ?」 

ティムから受けっ取った紙をみてユリアが指摘する。

「…っ…い、いーんだよっ意味はおなじだからっ!早く書けよ!」


「書くわよ言われなくてもっ…えっと、 お~い~し~か~…えっと‥ちっちゃい“つ”だなっ!‥‥す
っと、 はい、マーク」

ユリアは何やらぼそぼそと独り言を言いながら書いた

「うんと‥あ・り・が・と・うっ ‥‥と つぎ‥は?」

マークは歯切れがよかった

‥個性がバラバラだな?
アルは子供達それぞれを眺めて苦笑う

「アルぅ?…………ジョンはどうするぅ?」

マークが困り顔でアルに助けを求めた。見ると目をキラキラ輝かせながら、「ボクもっ」 という風にマークに手を差し出しているジョンがいる。

そしてなぜか少々興奮ぎみで“はっはっ”と息が荒い……

ジョンよお前は犬か?


「いいよ、 おいでジョン 一緒に書こうっ」


三つ子の魂百までも…ちょうどなんでも吸収するお年頃。とくに周りの真似をしたい頃だ…

ジョンだけダメでは、当然“ぐずる”であろう‥  

アルはジョンを膝の上に抱え、ジョンの手にペンを握らせ上から自分の手を重ねた。




「ジョン、なんて書くかわかってる?」


アルはジョンに聞いてみた


「うんっ♪あ‥っと!」


「?そうだね。ありがとうだよ。わかってるならいいよ‥‥」


「あっと♪あっと♪」


ジョンはアルの膝の上で
ペコペコお辞儀をしながら言葉を繰り返した


「わかったわかったっ…
書くからじっとして?」

アルは足をブラブラさせて興奮するジョンの動きを押さえながらペンを動かす。

「“…あ、り、が、と、う…”


よしっ!‥て、あ、あーっ……っ」


アルが気を抜いた瞬間、ジョンは己の欲望のままペンを走らせ紙いっぱいに三重丸を書きまくった?

その豪快ぶりに子供達はなす術もなく口を開けままだ。


「やられた…」


‥まぁいい…?
ぱっと見、合格点の丸をもらったようなもんだろぅ……


「あっと♪♪」


満足そうに笑みを浮かべるジョンに屈するしかない一同だった


アルは手紙を読み直してから自分も紙の隅の方に一言付け足す


…これでよしっ!

************

 ありがとお

 おいしかったです

 あ り が と う

 ありがとう

《エバ、あなたの心に
    感謝します…》


************




  


キュッと蛇口を捻り水音が止まる。

「あいつ、結局メシ喰いにこなかったな…腹へってねぇんだろうか?」

ザドルは食堂でデザートのフルーツを食べながらエバに語りかけた

「ははぁ‥普段食べない
フルーツまで食べてここに居座ってたのは、あの子が目的だったからかい?」

エバは濡らした台拭きでテーブルを拭きながら、ザドルの顔を茶化すように覗き込んだ。

「べつに、目的ってわけじゃっ…」


「それじゃ、あたしゃ余計なことしちゃったかねぇ」


「なんだ?余計なことってぇのは…」


エバはテーブルを拭く手を休めザドルの隣に座り込み、身振り手振りで話した。


「‥時間になってもこないからさっ…何か来れない理由でもあんだろぅって思ってね?食事を部屋の前に置いてきてやったんだよ……食べてるといいけどね……」


「なんだ、そうか‥それならいいんだ。 腹減らしてんじゃねぇかと気になってなぁ……そうか、ならよかった…手ぇかけるが頼んだぜエバ‥」


ザドルはエバに感謝した。
機転のきくエバなら任せて安心だと改めて確信する。


「‥可愛い義弟に頼まれたんじゃ断るわけにいかないねぇ♪」


「ッケ!何がっ可愛いだ!人バカにしやがって…っ…」



ザドルは子供扱いされたことが気に入らないらしい。

「はいはい、わかったから早く食べて部屋戻りなよっ」

エバに軽くあしらわれ、ザドルは食堂から追い出されてしまった‥





「ち‥人をおちょくりやがってっ」



愚痴を溢し渋々とザドルが部屋へ向かっている途中、何やら正門の方で馬のいななきと共に暗闇に消え入る男が一人遠目に見える…


「ん!‥なんでぇ、

ルイスじゃねぇか……こんな時間に繁華街の方に向かうたぁ奴らしぃやな、あのエロ番長め」


ザドルは窓から外を覗き、ぶつぶつと呟きながら部屋に入っていった‥

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