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第二章 闘技会編
2話 闘技会開催!
しおりを挟むドド――ン☆パ~~ン
賑やかな
打ち上げ花火の音
鳴り響く
ファンファーレ
上空は平和の象徴の白鳩が飛び交い、様々な色彩の風船と紙吹雪でカラフルに彩られていた
今日は待ちに待った闘技大会開催の日!
街には溢れんばかりの観光客と軒並みに連なる露店で大賑わいだった
城では大会開催の入場時に出場選手を率いる騎馬隊が用意され、役場の者達は準備にてんやわんやである
大会開催時刻は10時!
出場者は早めに会場入りしていた
「エバっおはよう!」
子供達は元気に挨拶した
「おはようっ。とうとうこの日がきちまったねぇ‥
ザドルとアルはもう、会場に行ってるから、あたしらも10時に間に合うように行くよっ!」
「うん!」
選手は9時に会場入りしなければ成らなかった為、
アルは子供達の事をエバに任せてから会場入りしていた
「今日はお弁当いっぱい作ったからね!あんた達も
弁当箱に料理詰めるの手伝っておくれよっ♪」
「うん!うわぁすげぇー
タコさんウィンナーだぁ」
並んだおかずをみて子供達は歓喜の声を上げていた
・
一方、先に会場入りしたアル達は選手控室で待機しながら体のコンディションを整えていた。
アルは準備運動をしながら控室の時計に目をやった。
9時半か……
ティム達は準備してるかな?エバに迷惑かけてなきゃいいけど……
「おいアルっ!!」
「なに?」
「向こうに対戦表が貼り出されたみてえだ。ちょっくら見に行こうや!」
ザドルに促された方向を見ると、掲示板に白い大きな紙が張り出されていた。
近づくとトーナメント戦での対戦相手の名前がそこに記されている。
「…!?っ…かぁーーっやりやがったなっルイスの奴!」
アルが自分の名前を探しているとザドルが奇声をあげた。
「どうしたの?ザドル……」
「ああ……実は死神3兄弟ってのがいてなぁ……こいつら賞金よりも人の生き血をみるのが好きな狂った奴らよ!
あんまりにもザクザク対戦相手を殺っちまうもんだからな、ルイスが参加条件を厳しくして出入り禁止にしたんだが……今回は条件なんてほとんどなかったからな…許可するしかなかったんだろうぜ」
掲示板を見てみるとザドルの対戦相手に“ジゼル”と書かれている。
・
「この人がその3兄弟?」
アルは名前を指さして聞いた
「あぁ、
《悪魔の従者リッパー》
《殺戮の申し子ジゼル》
《鮮血の騎士シド》
この三人だ…どう考えてもルイスの策略としか思えねぇ‥
このうちの二人は俺に潰させる気だろうが、ヘタすりゃ俺もあぶねぇぜ」
ザドルの言う通り、三兄弟のうちのもう一人。リッパーも1回戦を勝ち進めばザドルと当たるように組まれている。
「本当だ…でも、なんでまたザドルに?」
「俺が適任ってことだろうよ。腕を高く買われたもんだ…」
「どういう意味?」
「あぁ、なんでもねぇ‥しかし、シドの奴が見当たらねぇな…まさかお前ぇと当たるんじゃねぇだろうな…──…おっ!?」
ザドルはざーっと歩きながら掲示板を眺めると目当ての名前を発見したらしくある場所で立ち止まった
‥シドの相手にこいつを選びやがったか…
さすがだな、ルイス…… こいつも適任じゃねぇか……。
ザドルは顔のヒゲを手で扱(しご)きながらニヤリッとする
「…どうだった?見つかった? 後の一人…」
アルが隣にきて尋ねた
「あぁ…ほら、ここだ‥」
ザドルの指差す方を見るとシド、と名前が書いてあった。その対戦相手は…
「レオ・ギルバート…」
「あぁ‥《狂犬のレオ》」
・
「“狂犬のレオ”!?──
また‥こっちも危なっかしいネーミングだね…」
‥一体誰がこんな呼び名つけたんだろ?
アルは名前を見つめ、思っていた。
「こいつは“疾風迅雷”
てぇ大山賊の頭だ‥‥俺が去年ロイドに負けたのもこいつが絡んでやがる。
大会前日にこいつに心理戦で打ちのめされたあげく大酒喰らっちまったもんでな‥‥まぁ俺が精神的に弱かっただけなんだがよっ」
「へぇ……なんでザドルにそんな事するの?」
「こいつも大会は常連なんだが毎回俺が優勝、こいつが準優勝だ‥目の上のタンコブってやつよっ!
俺が弱ってりゃ勝てるって計算だったんだろうが‥
準決勝でロイドと当たっちまってな。思わぬ敵に怯(ひる)んじまったんだろ?
結局奴はロイドに敗れて俺は決勝戦でロイドに敗れたって訳だ……
レオも筋肉の塊の割に素早いがな、ロイドも身のこなしにキレがある。
腕では五分五分だろうがレオに足りねえのは頭のキレだな。トータルで考えりゃやっぱりロイドの方が上だ……」
‥へぇ‥ロイドってそんなに強いんだっ?
「ところで、おめぇは一回戦目は誰と当たるんだ?」
「それが…一回戦は休みみたい…」
・
「休み?ってぇと‥‥」
「対戦人数が合わなかったんだと思う‥二回戦から名前が載ってたよ」
「ほぅ、一回戦は不戦勝扱いってことか。なら、良かったじゃねえかっ!手間ぁ省けてよ」
ザドルは言いながらアルの肩を叩く。
‥なんだ、ルイスも中々やるじゃねえか?変態長だなんだ言われたわりにゃ、アルのこと気に掛けてくれてんだな!
「じゃあ、ちょっくら俺は便所行ってくらぁ…おめぇも行くか?」
「え?……」
それって‥連れション?…
「ああ…はは…僕はまだいいよ。開催まで時間あるから後で行く」
「そか?じゃあ行ってくらあ!」
苦笑いながら応えたアルに、ザドルは手を振り控室を出ていった。
開催まで充分時間が有り余っている。周りにはザドルと並ぶような体格の男達が血気盛んに息巻く姿が見られた
元居た場所に腰掛けるとふと、ザドルの武器が目に留まった
…だけどほんと大きな斧だよな。
こんなのでやられたら一溜まりもないな…
ザドルと対戦した人は死んでないのかな?
密かにじわりと汗が湧く。アルは立て掛けてあったザドルの斧を持ってみた。
……がとても持てたもんじゃない
ザドルの斧はアルの背丈ほどあったのだ。
‥こんなのをあんなに軽々振ってたのか……
優勝候補ってのがわかる気がする
アルは今朝のザドルの素振りを思い出し一人で深く頷いていた──。
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