男装バレてイケメン達に狙われてます【逆ハーラブコメファンタジー】

中村 心響

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第四章 伝説編

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城の裏には千年樹と呼ばれる古い大樹が静かに佇んでいた‥

このルバールが建国される前からそこに存在している大木は、立派な幹を天高くそびえさせ、見るものを圧倒させる。

沢山の葉を生い茂らせ、見事な白い大輪の花を咲かせる“母なる樹”

そう呼ばれた大樹は城が建てられてからも守護樹としてずっと奉られていた。

だが、長い歴史を重ね、年老いたせいか今は青々とした葉を茂らせることも、大輪の花を咲かせることもなくなってしまった。

枯れてしまったと人々に思われ忘れ去られた大樹は、裸の姿を晒したまま、その影を潜めるように今もその場にある。


いつしか、その大樹よりも高い警鐘塔が建てられ、それに隠れるように一目を忍びながら‥

ただ、立派な幹だけは衰えることなく今も尚、真っ直ぐに天を仰ぎその存在をしっかりと誇示している。

幼いルイスは夕刻時にきてこの大樹の景色を塔から見下ろし、眺めるのが大好きだった

‥ようしっ…今日こそは絶対に見つけてママにプレゼントするんだ!!


そう、幼いルイスには目的があった‥

それは‥
この夕刻の時にしか見つけることのできないもの‥

キラキラと光を放つ綺麗な宝石‥




夕陽が沈むこの時間にしか探すことが出来ない宝石を大好きなママにプレゼントするために、ルイスは天気のいい夕刻時。毎回、この場所を訪れていた。


‥あっもう少しだ…っ



少しずつ沈みかけて行く夕陽。

辺りの景色はオレンジ色に染まり、幼いルイスの白い天使の肌をも紅く染めていく‥

そして、大樹に目を落とすとその幹の根元からは黒く長い影が伸び始めた‥


その影は城の塀を越え、どんどん伸びると別の樹から伸びた影と交差する。

その影はまるで大きな十字架のようにも見えていた──


そして中心を貫くように伸びた大樹の影のてっぺんには、キラキラと宝石のように輝く何かが夕陽の眩い光を受けて反射する。


‥あったっ…!!

今日こそはあれをっ!!


幼いルイスは宝石を見つけると高い塔から一目散に走り降りその場所を目指す。

五才のルイスは知らずに毎回こうやって、光る宝石を見つけてはやみくもに走り、その場を目指した‥

そう、幼いルイスはわからなかった。

沈む夕陽にそって影も移動して行くということを‥

小さな体で高い塔から急いで駈け降り、大樹の根元から伸びた影を息をきらしながら一生懸命追いかける‥



高い塀を飛び越える為に用意しいたハシゴを城の塀に架け、微妙に形の崩れた十字架の影のてっぺんを目指すと‥‥


‥はあっ…はぁ、…ハア、

──‥あ‥っ・・・



眩い光を放つ宝石はもうそこには見当たらなかった…


‥あーぁ‥
またなくなっちゃった‥



幼いルイスは小さな肩で息をきらす。そして、がっかりと首をうなだれる‥

必死で走ってきた道を後戻り、それでも、もう一回探してみよう!そう思った幼いルイスはまた、高い塔に登り、宝石の光るのを待ち侘びてその場で眠りにつくのだった‥



『あらあら、フフ‥やっぱりここに居たのね‥。』


疲れ果てた可愛い天使を誰かが優しく包み込む。

温かくて優しい香りに包まれながら天使は女神が微笑む夢を見て笑みを浮かべた‥


『クスッ‥そんな可愛い寝顔を浮かべて、一体どんな夢を見てるのかしら…
きっと楽しい夢なんでしょうね。
後でママにも教えてね‥可愛い私の天使‥』


女神は柔らかい天使の頬に頬擦りをしてキスをする。
そして優しく抱きしめながら城に連れて帰った…。

───────


「アル!お薬が出来たよ!」


風呂から上がり、部屋で一息ついていたアルをマークが訪ねる。

小さな手には、つい今しがた出来上がったばかりの薬の瓶が握られていた。
モニカの母親の為にアルが頼んでいた薬のようだ。


「ああ!ありがとうマーク。
忙しいのにごめんね」


アルはマークを労いながら薬の瓶を受け取る‥

「そうだ!明日一緒に持って行こうかっ?
マークが作ったって紹介しなきゃだし♪
ついでに飲み方も教えて上げて、ね!」


「うん、わかった」


アルはマークにそう約束を取り付けてベッドに潜った













「お頭ー!
会所(かいしょ)の方は準備が整いましたぜ!!
いつ客人が来てもお迎え出来るでやんすよ!」


「よし、まあ全員が揃うまではまだ日がある!!

お前らは引き続き山の警戒にあたってろ」


夜もとっぷりと暮れた頃、山では大山賊・疾風迅雷の輩達が忙しく動き回っている。

お頭の婚儀の準備もままならぬまま、奇妙な厄介事が浮上し、レオ達の根城に四方の頭領達が集まるとあって昼夜を問わず準備に明け暮れていた‥


「お頭っ薬湯の方も整いました!」

「おお、そうか!
ご苦労だったな!!」




山手の方から下りてきた舎弟が薬湯の仕度が整ったことをお頭に告げた。

薬湯とは‥

益(やく)益を得る

疫(やく)疫*病を払う

厄(やく)厄を祓う


と云われ、山あいにある天然の露天風呂に様々な薬草を浸らせた風呂のことをいう。これは山神一族の伝統儀式、婚儀の前に執り行われる婚前の儀式でもあった。


ほんの少しでも婚儀の準備を進めたい。そう思った舎弟達が、尊敬するお頭を気遣ってこっそりと準備していたのだ。

余計なことを! そう言いながらも、舎弟達の気持ちは有難い。レオはこの計らいを甘んじて受け取ることにした。

‥婚前の儀くらいはやっていても悪くはない‥また、忙しくなりゃいつ会えるかわからねぇからな‥//


「よし!
じゃあ俺はちょっと迎えに行ってくる!!
テメェら覗くんじゃねえぞ!」

レオは意気揚々と山を下り我が愛しい嫁を迎えに行った‥

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