男装バレてイケメン達に狙われてます【逆ハーラブコメファンタジー】

中村 心響

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第四章 伝説編

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久しぶりに重ね合った唇…


アルの細やかな体温を感じ、ロイドの躰中の血が全身を駆け巡る


ロイドは切ない声でアルの名を何度となく囁いていた。


神の従者―――


これからは否応無しでもアルの身に何かが降りかかる


避けて通れない道…

未知なる世界がアルを待ち受けている…



ロイドはアルの存在を確かめるように何度も抱きしめた。


何故だ!?

不安ばかりが的中するっ…



アルを―――


俺の大事なアルを…



誰も連れていかないでくれ!!──









水銀灯の明かりが暗闇に覆われ始めた街を徐々に照らしていく…


ロイドはアルの手をしっかりと握り締め、夜道を歩いた…

じっくりと交してしまったキスにアルは恥ずかしさが増す。ロイドの顔を見れず、アルはうつ向いたままだった…
また降り始めた雨を懸念して少し足を急がせる。

スタンレー家に辿り着くと手を放し掛けたアルの腕をロイドはぐっと引き戻す。そして再びアルを広い胸の中に抱き寄せた。


…ロイド……


不器用過ぎる情熱を肌で感じる…


ロイドは胸の中で大人しいままのアルをそっと解放してあげた。


「アル…」

顔を覗き込み優しく微笑み掛ける…

「来週には仕立てたドレスが届くから…」

アルはあっ!と口を開き掛けた。

クスリと笑うとそんなアルの小鼻をロイドは軽く抓む。

「次の週末はイースター(復活祭)だ…
一緒に祈りを捧げて…

そして街に出よう…」


ロイドはアルとの約束を確認するとアルの後ろ姿を見つめ、温かな笑みを浮かべた。


たくさん連れて行きたい所がある…



ついでに教会でアルとのこれからも誓いたい――



アルとの二人きりの時間を思い描くだけでロイドの心は幸せな気分に満ち溢れた。


アルと別れ、一人になった帰り道…
ロイドは目を細め、眩しいほどの笑みをほのかに浮かべていた…。













「まあ、呑め…

久しぶりの長き旅だ、大好きな酒もろくに口にしなかっただろうからよ…」


「ああ…

手厚い迎え。ほんに恩にきるがや…
寝所まで用意してくれて、下の者も安生しとる…」



レオは酒の入ったひょうたんを西岸の親方に気前良く薦めていた…



西岸の地を後にし、数日前にルバールの山岳に辿り着いた親方は三日三晩、レオと酒を酌み交している…



「ヒィ〰やっぱり無類の酒好きなだけはあるでやんす!」

「お頭に全然引けを取らねえな!
この分じゃ酒が間に合わんでよ!!」



舎弟達は次々に空になる酒樽を運び出しレオ達の豪快な呑みっぷりに悲鳴を上げていた。新しい酒をひょうたんに注いでは、レオの元へ急ぎで届ける。

まるで呑み比べでも競っているかのような勢いだった…



海沿いの岸壁を渡り、やっとの思いで辿りついたこの地。

「儂らやから通ってこれた…」

親方はそう口にする…

行商の為に開通された山道は岩山の雪崩れでも起きたように閉ざされ、市街の方は身動きが取れぬ程の残骸の山だと言う…


「何とかせねば―――」


ポツリと溢すと親方は手にした盃を一気にあおる。そして、ばたっとその場に倒れ豪快ないびきを掻いた。傍についてずっと酌をしていた舎弟が慌てている。



「なんだ、案外潰れ方が早かったな…

長旅で疲れたんだろう。そのまま寝かせておけ…」



レオは舎弟に言いつけると一人で酒を口にした…




よその国がこれだけの騒ぎになってるってことは、こっちの国王にも何らかの知らせが入ってる筈なんだが…


―――!?


空になった盃に酒を注ぎ足すとレオは後ろの気配に耳を澄ませた。丸太の階段を軋ませレオの室(むろ)へと近づく細身の影…



「おう。来たか、カイン…街の方はどうだ?」

「ああ、兄じゃ…

街は何も変わった様子はない。が、ただ…」

「ただ?…勿体ぶらずに早く言え」


影の主は綺麗な目に掛かる濃紺の髪を邪魔くさそうに掻き上げると、レオの前にドカッとあぐらをかいた。アルに手を出すな、との叱りを受けた日以来の顔合わせ。兄じゃと慕うレオから盃を受けながらカインは口を開いた。


「ただ、…城の方で最近やたらと精鋭の奴らが動いてるみたいだぜ」

「精鋭か…」


「ああ…

結構前に、街外れの草原の湖に妙な建物が急に浮かんだらしい…

今も、隊の奴らが見張りに立ってる」


…草原の湖に?……


「他は?」


「この間は隊を借り出して城の草刈りをしてたらしい…
でも草刈りってのは建前で、城のお宝を探してるって噂になってるな…
怪しい話つったらそのくらいさ…師匠はなんて?」




久しぶりに山頂から降りてきた無双老師のことを耳にしていたカインは酒の御代わりを受けながら聞き返した。 

滅多に人里に降りてくることのない自分達の師匠の突然の訪問…

余程の何かが…と、カインも眉をしかめ、注がれた酒をきゅっと呑み干した。

空にした盃をコトンと置いたカインの手元にレオは一枚の色鮮やかな鳥の羽根を差し出すと、酒を注ぐのも面倒だとばかりにひょうたんの徳利ごとカインに渡す。


そして、自らもひょうたんを手にし喉を鳴らしながらがぶ飲みした。

「この羽根は―――」

「…っああ…デカイだろ?」

口の端に溢れた酒を腕で豪快に拭うとレオはニヤリと笑う。

「我ら守り神。雷鳥の王…

孔雀王の羽根だと―――」


「孔雀王―――」


「師匠が言うにはな。

俺様が見た訳じゃねえから何とも言えねえが…」


驚きを隠せないカインにレオは師匠が山から降りてきた理由を話た。


「枕元に孔雀王か…」

「―――ああ、奴は三日前に此処へ着いたばかりだ…

他の奴らも時期に着くだろうが…今日はお前にちょっと頼みたいことがあってな…」

いびきを掻く西岸の親方に目を向けながら、レオは一呼吸置いた。

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