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第四章 伝説編
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・
「別に疑っちゃいないさ…お前は馬と鹿に正直がつくくらい嘘は嫌いな奴だからな……」
「馬と鹿か………」
ん?…
レオはルイスが口にした言葉を呟き首を傾げる。
ピンときたのかこないのか?そんなレオにルイスは自分の手を見つめたまま尋ねた。
「お前が手にした石も光ってたのか?」
「あ? ああ…俺様のは青く光ってた…ちょっと指で引っ掻いただけで簡単に取れたからせっかくアルにプレゼントしようと思ってたのによ!」
「…青?」
チッと舌打ちするレオにルイスは顔を上げる。
「ああ…研きの掛ってない石であんなに綺麗なもんはそうはない。
研磨すりゃ相当の値打ちモンになるな…。結局はもう無いが…お前が手にした石は俺様には中々取り出せなかった」
ルイスはもう一度自分の手の平に視線を落とした。
「もう一つある…」
レオは壁を指差した。
「この石もたぶん光るんだろうぜ──」
レオは消えた石と並んで埋め込まれている石ころを指でなぞる…
「こいつは何色に輝くんだろうな…」
そう言ったレオにルイスはニヤリと不敵な笑みを向けた。
「そうだな…おそらくは赤く眩い光りを放つんだろうな…」
・
ルイスの確信を持った表情を見てレオも口端に笑みを浮かべた。
…へっ! やっぱり何か知ってるって顔だなありゃ…
「丁度いい…お前に聞きたいことがあった」
レオはルイスの肩に腕を回す。
「只今、全、お国の一大事ってやつだろ? ここはちょっと…情報交換といくか?…」
「ふ…断る……」
「………あ!?」
「と……言いたいとこだが、こればっかりわね……」
ルイスは肩をすくめた。
「レオ、どうやらお前の力も必要になるようだ」
ルイスはため息を力一杯吐くと半ば愉しそうな笑みを浮かべる。
…ふ…神も中々やってくれる…
ちゃんと選んでるってわけだ…。
レオが青
そしてこの俺が緑…
そうきたら
さあ…
後に残るコイツを手にするのはどんな奴だ?…
ルイスは目の前の石ころを見据えると石の消えた自分の手を握り締めていた………
・
仄暗い室。半分まで溶けたロウソクの頼りない明かりの中、妃奈乃と未夢は経を唱え続けていた。
いつになく、母親 妃奈乃の額に玉の汗が吹き出している…
母様…
「未夢…読経に専念せい」
「はい…」
母を気にする娘…
未夢の集中力の欠けに気付いた妃奈乃は注意を促した。
闇の力が強まっておる…
黒い憎悪の念が南の地を取り囲むようにして渦巻く様が、魔鏡を透して妃奈乃の目には見えていた。
白の神よ…どうか我らにお力添えを―――!
経を読み上げる声を強めた母に続き、未夢も鈴を揺らす手に念を込めて声を張っていた。
寝静まる街を再び冷たい雨が濡らしていく…
深夜遅くにも関わらず城の広い会議室には、知らせを聞き眠気もどこぞへと飛んでいった国王と老師が腰掛けていた。
向かい会った王の風格にひけを取らぬ男。大山賊のお頭、レオは両腕を組んだままその場をじっと見据える。
「神の降りる泉にて…従者の盾となり力となり知恵となる者。使者として貴殿達が選ばれようとはな…」
ゆっくりとした口調で語る王の深い声は天井の高い会議室内に静かに通り、重みを増していた。
・
「神か…ふんっ…神に選ばれんでも俺様がやることは俺様が決める。アルを守るのに神に選ばれようが俺様には関係はねえんだがな…」
レオは強気な発言を王に返す。
遺跡の前で不意に聞こえてきた不思議な声…
“青の使者に相応しき者よ…”
あれはこのことを言ってたって訳か………
これ迄の経緯を聞いて、アルに課せられた使命の重みを知ったレオ…
神がなんと言おうとアルは俺様の大事な嫁だ…
あいつは俺様が守るに決まってやがるだろうが!
神が認めるなんてしゃらくせえってんだ!!―――
「まあ、まだ決まった訳じゃあない…」
「うむ…そうじゃな…」
口元で手を組みため息をつくルイスに老師も頷く。
「勇者と選ばれ“試練”を越えた者。…その者が使者として神獣、天 地 海の守護神の力を与えられる…そう古の書には記されておる…」
「試練?…ああ…はっ! そういやあの時の声もそう言ってやがったな…」
…声!?
知ったように鼻で笑い飛ばすレオをルイスは見た。
「なんだあの時の声ってのは!?…」
「遺跡の前で、試練を受けろってえ声が聞こえてきた」
・
―――…湖で……
「本当かそれは?…」
ルイスは再度レオに尋ねた。
「アルも同じことを言っていた──神の降りる泉…そう名付けられる何かがあるのかも知れないな…」
「うむ…少しずつではあるが、どうやら事が運びつつあるようだな……ならば、先ずはその南の地の者達が無事に着くことを祈ろう。
レオ、我らの力が必要な時は直ぐに申すがいい」
レオは頷くと席を立った。
「ルイス…」
レオの後から席を立ったルイスを王は呼び止めた。
「これからはレオ達山の者とも密に連絡を取るように」
王の言葉に静かに頭を下げてルイスはレオの後を着いて会議室を出て行く。
王と老師はそんな二人を黙って見送っていた…
「クラディウス…我々も各国の大臣達とじっくりと策を練らねばなるまい…」
「そうですな…先ずは被害の酷い西の国に隊の遠征と、南は食料の援助をしていかねばならぬでしょう…やるべきことはたっぷりとある。この歳になって骨が折れますな…」
老師は長い顎髭を撫でると深い溜め息をついていた…
「別に疑っちゃいないさ…お前は馬と鹿に正直がつくくらい嘘は嫌いな奴だからな……」
「馬と鹿か………」
ん?…
レオはルイスが口にした言葉を呟き首を傾げる。
ピンときたのかこないのか?そんなレオにルイスは自分の手を見つめたまま尋ねた。
「お前が手にした石も光ってたのか?」
「あ? ああ…俺様のは青く光ってた…ちょっと指で引っ掻いただけで簡単に取れたからせっかくアルにプレゼントしようと思ってたのによ!」
「…青?」
チッと舌打ちするレオにルイスは顔を上げる。
「ああ…研きの掛ってない石であんなに綺麗なもんはそうはない。
研磨すりゃ相当の値打ちモンになるな…。結局はもう無いが…お前が手にした石は俺様には中々取り出せなかった」
ルイスはもう一度自分の手の平に視線を落とした。
「もう一つある…」
レオは壁を指差した。
「この石もたぶん光るんだろうぜ──」
レオは消えた石と並んで埋め込まれている石ころを指でなぞる…
「こいつは何色に輝くんだろうな…」
そう言ったレオにルイスはニヤリと不敵な笑みを向けた。
「そうだな…おそらくは赤く眩い光りを放つんだろうな…」
・
ルイスの確信を持った表情を見てレオも口端に笑みを浮かべた。
…へっ! やっぱり何か知ってるって顔だなありゃ…
「丁度いい…お前に聞きたいことがあった」
レオはルイスの肩に腕を回す。
「只今、全、お国の一大事ってやつだろ? ここはちょっと…情報交換といくか?…」
「ふ…断る……」
「………あ!?」
「と……言いたいとこだが、こればっかりわね……」
ルイスは肩をすくめた。
「レオ、どうやらお前の力も必要になるようだ」
ルイスはため息を力一杯吐くと半ば愉しそうな笑みを浮かべる。
…ふ…神も中々やってくれる…
ちゃんと選んでるってわけだ…。
レオが青
そしてこの俺が緑…
そうきたら
さあ…
後に残るコイツを手にするのはどんな奴だ?…
ルイスは目の前の石ころを見据えると石の消えた自分の手を握り締めていた………
・
仄暗い室。半分まで溶けたロウソクの頼りない明かりの中、妃奈乃と未夢は経を唱え続けていた。
いつになく、母親 妃奈乃の額に玉の汗が吹き出している…
母様…
「未夢…読経に専念せい」
「はい…」
母を気にする娘…
未夢の集中力の欠けに気付いた妃奈乃は注意を促した。
闇の力が強まっておる…
黒い憎悪の念が南の地を取り囲むようにして渦巻く様が、魔鏡を透して妃奈乃の目には見えていた。
白の神よ…どうか我らにお力添えを―――!
経を読み上げる声を強めた母に続き、未夢も鈴を揺らす手に念を込めて声を張っていた。
寝静まる街を再び冷たい雨が濡らしていく…
深夜遅くにも関わらず城の広い会議室には、知らせを聞き眠気もどこぞへと飛んでいった国王と老師が腰掛けていた。
向かい会った王の風格にひけを取らぬ男。大山賊のお頭、レオは両腕を組んだままその場をじっと見据える。
「神の降りる泉にて…従者の盾となり力となり知恵となる者。使者として貴殿達が選ばれようとはな…」
ゆっくりとした口調で語る王の深い声は天井の高い会議室内に静かに通り、重みを増していた。
・
「神か…ふんっ…神に選ばれんでも俺様がやることは俺様が決める。アルを守るのに神に選ばれようが俺様には関係はねえんだがな…」
レオは強気な発言を王に返す。
遺跡の前で不意に聞こえてきた不思議な声…
“青の使者に相応しき者よ…”
あれはこのことを言ってたって訳か………
これ迄の経緯を聞いて、アルに課せられた使命の重みを知ったレオ…
神がなんと言おうとアルは俺様の大事な嫁だ…
あいつは俺様が守るに決まってやがるだろうが!
神が認めるなんてしゃらくせえってんだ!!―――
「まあ、まだ決まった訳じゃあない…」
「うむ…そうじゃな…」
口元で手を組みため息をつくルイスに老師も頷く。
「勇者と選ばれ“試練”を越えた者。…その者が使者として神獣、天 地 海の守護神の力を与えられる…そう古の書には記されておる…」
「試練?…ああ…はっ! そういやあの時の声もそう言ってやがったな…」
…声!?
知ったように鼻で笑い飛ばすレオをルイスは見た。
「なんだあの時の声ってのは!?…」
「遺跡の前で、試練を受けろってえ声が聞こえてきた」
・
―――…湖で……
「本当かそれは?…」
ルイスは再度レオに尋ねた。
「アルも同じことを言っていた──神の降りる泉…そう名付けられる何かがあるのかも知れないな…」
「うむ…少しずつではあるが、どうやら事が運びつつあるようだな……ならば、先ずはその南の地の者達が無事に着くことを祈ろう。
レオ、我らの力が必要な時は直ぐに申すがいい」
レオは頷くと席を立った。
「ルイス…」
レオの後から席を立ったルイスを王は呼び止めた。
「これからはレオ達山の者とも密に連絡を取るように」
王の言葉に静かに頭を下げてルイスはレオの後を着いて会議室を出て行く。
王と老師はそんな二人を黙って見送っていた…
「クラディウス…我々も各国の大臣達とじっくりと策を練らねばなるまい…」
「そうですな…先ずは被害の酷い西の国に隊の遠征と、南は食料の援助をしていかねばならぬでしょう…やるべきことはたっぷりとある。この歳になって骨が折れますな…」
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