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「お…来たな」

モニターに映った知也を確認すると、克俊は玄関に急ぐ。

そして玄関の扉を開けて出迎えた知也の姿に、待ちくたびれた克俊の心とチンコがキュンと張りを帯ていた…

「遅かったな」

「そう?」

「そう?…なんて待つ身の辛さは知也には分かんねーんだな……」

 心無しかテンションの低い知也の言葉に克俊は少し気を落とした。

「ご、ごめんねっ!…荷物が重くてっ…これでも家に寄らないで真っ直ぐこっちにきたんだよっ」

「荷物か……言えば迎えに行ったのに」

落ち込む克俊に知也は焦りながら説明していた。

知也に目を向けると、身体半分程の大きな紙袋を重そうに提げている。

持ちきれずに引きずって歩いてきたせいか、袋は底が破け掛けていた…


「なんか、他に大きい袋ある? 今日渡されるとは思わなくて…」

 破け掛けた袋をんしょ、と持ち上げた瞬間にその袋は最後の役目を終えた。

勢い良く、破けた底から袋の中身をブチ撒ける。

克俊はその荷物の山に目を光らせた―――




「こ、れは!?………」

「―――…あ…と、これは……」


白いモコモコとした素材のパンツに丸いしっぽが付いている。近くにはウサミミのカチューシャが落ちていた…


「あ、あの…僕…ウサギの役で」

「ウサギっ!?」

エヘッと頭を掻き知也は愛想笑いを浮かべ中身の説明をする。

克俊はちょいの間だけ放心状態だった。


「ウサ……」

(知也が―――っ…ウサギっ)

「みっっ…見たいっ―――!!」

ガバッと白いモコモコパンツを拾い上げ、握り締めて意気揚々と目を潤ませる。

「克…俊……」


“絶対に有無は言わせないっ”

克俊のそんな勢いの眼差し…

知也は克俊の表情に息を飲んでいた…



「ど、どんな物語なんだ!?」

「どんなって…」

(そんなに興奮しなくても…)

ずずいっと近より瞳を輝かせる。
そんな少し暑苦しい克俊を押しやりながら知也は言った。

「童話だよ…」

「童話?」

「うん、克俊は何もしないの?」

「あー? するわけないだろ。文化の日は祝日だぜ?なーんで休みにわざわざ面倒くさいことすんだよ?」

「そりゃそうだけどでも学校の行事だか…」

(もー、ホントに素行不良なんだから克俊はっ…)
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