【完結】一夜限りのはずが、ハイスぺ御曹司に熱烈求愛されて一途な愛を刻み込まれました

中山紡希

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第一章 謎のイケメン御曹司の登場

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社員食堂を出ると、彼は私を誰もいないミーティングルームへと連れてきた。
十人ほどが入れる小規模な部屋の中にはテーブルを挟み対面に椅子が置かれている。

壁面には大型モニターが埋め込まれ、壁面とテーブルをブラックで統一されたモダンな室内はとてもミーティングルームとは思えないほど洗練されている。
室内に足を踏み入れてから腕時計を確認する。

まだ12時55分。
厳密にいえばあと5分間は昼休みだ。
営業職ということもあり休憩時間など定められていてもその通りにとれることのほうが珍しい。
普段ならばこの時間に社内にいることはまれで、クライアントと会食をしていることも多い。

「ようやくふたりっきりになれた」

後ろ手に扉を閉めて満足げな笑みを浮かべる彼に、冷ややかな視線を向ける。

「手短にお願いできますか。まだ、昼休憩中なので」
「つれないな。久しぶりに会えたのに。とりあえず、立ち話もなんだし座ろう」
「すぐ終わるなら、座る必要はありませんよね」

椅子を引き、座るように促されたものの私は従わなかった。

「ふっ、その目もその態度もあの頃と全く変わってないな」

椅子を戻すと、彼はやれやれといった様子で私と向かい合った。

「私と伍代さんは初対面です。誰かと勘違いなさってるんじゃないですか?」
「君が覚えていないだけだよ」

話の嚙み合わない彼に若干の苛立ちを覚える。

「伍代さんは、いつもこういう風に女性を口説いてるんですか?」

嫌悪感丸出しに尋ねると、彼は「ははっ」と白い歯を見せて笑った。
切れ長の瞳がアーチを描く。無邪気に笑う顔は、悔しいけれど魅力的だった。

「まさか。確かに遠い昔に遊んでた時期もあるけど、今は一途だよ。愛してるのは君だけだ」

さっきまでの笑みは消え、彼はいたって真面目そうな表情で言った。
漆黒の双眸は、私を射貫くように向けられる。

本気で私のことを落とそうとしているなら、『遊んでた時期もある』などと余計なことを言わなければいいのに。
頭の回転が速い人なのは、この若さで局長に就任したことからしても明らかだ。

それならばどうしてこの人はこんな軽率なことを言うの…?
彼の言動は私の予想の斜め上すぎて全く理解できない。
掴みどころのない伍代さんに、私は振り回されっぱなしだ。

「今は一途、ってなんです。残念ですが、私は何を言われてもあなたには落ちません」
「いや、俺は絶対に君を諦めないよ。もうあのときのような後悔だけはしないって心に決めたから」
「あのときってなんです?さっきからおっしゃってることがいまいち理解できないんですが」

そう口にしたとき、彼のいる方からブーッブーッとスマホのバイブ音がした。

「ごめん、ちょっと待って」と律儀に私に断りを入れてから、彼はスマホを耳に当てる。
すると、彼は電話口の相手と流暢な英語で話し始めた。

学生時代も英語の勉強はしてきたし、今も自主的に動画やテキストを使って英会話の勉強をしている。
そんな私ですら聞き取れないレベルにネイティブな発音で会話する彼をじっと見つめる。
もともとはイギリストップの広告代理店に勤務していたぐらいだから、英語はお手の物なのかもしれない。

綺麗な笑みを浮かべながら楽し気に会話する彼をまじまじと見つめる。
華々しい経歴を持ち、さらには実績まである。さらに彼は大企業の御曹司だ。
将来親の会社を継ぐために海外で修行する必要はあったにせよ、どうしてコネ入社と疑われる可能性のある我が社へやってきたんだろう。
局長というポストが欲しかった……?それとも、なにかもっと大きな理由が……?

「待たせてごめん。それで、さっきの話の続きなんだけど……」
「もう昼休憩が終わるので、仕事に戻ります。失礼します」

スーツのポケットにスマホをしまい再び会話を再開させようとする彼に、私はキッパリ告げた。

「そういうサッパリしたところ、本当に変わらないな。でも、懐かしくて嬉しくもあるよ」

やっぱりこの男は意味が分からない。
残念そうな表情の彼に小さく頭を下げ、私は踵を返してミーティングルームを後にした。

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