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第一章 謎のイケメン御曹司の登場
19
大通りを抜けて道を一本挟んだ場所にJJTの本社はあった。
彼の後に続いて受付に向かうと、受付嬢が息を飲みポッと頬を赤らめた。
「え……っと、東光エージェンシー様ですね」
横並びにいる若い受付嬢の二人の視線は真っすぐ伍代さんに向けられている。
まるで私が透明人間になったかのように、二人の目には彼しか映らないようだ。
「はい」
「しょ、少々お待ちくださいっ」
普段の彼女の声は知らないが、きっといつもより一オクターブぐらい高いだろう。
明らかな好意の色が全身から漂っている。
「ありがとうございます」
分かりやすく目の中にハートマークを描く受付嬢に微笑む彼は、やっぱりどうしようもない人たらしだった。
ミーティングルームに案内され、JJTの宣伝部長と営業部長と名刺交換を行うとオリエンが始まった。
企画の背景や顧客に伝えたいメッセージ、それからターゲット層の聞き取りや予算など細かい部分の聞き取りを行う。
一通りの話が終わると、伍代さんが尋ねた。
「一つお伺いしたいんですが、御社の系列チェーン店のCMは他社の伝堂に依頼していますよね?それなのに、どうして今回はコンペ形式をとろうとなさったんですか?」
「ああ、それね。ここだけの話なんだけど、伝堂は先代のころから贔屓にしてる代理店なんだよ。だけど、社長がずっと同じことをしていても仕方がないって言いだして。ニーズは時代によって変わるでしょう?」
宣伝部長の言葉に、彼が深く頷く。
「おっしゃる通りです。弊社も精一杯貢献できるように頑張らせて頂きますので、どうぞよろしくお願いいたします」
席を立ち揃って頭を下げたとき、「それにしても、美人な方ですねぇ」と禿げ散らかした50代ほどの宣伝部長が鼻の下を伸ばして私をいやらしい目で見つめた。
「本当ですね。美人なうえにスタイルもいいし、まるでモデルさんのようだ」
ビール腹の40代ほどの営業部長が私をつま先から頭のてっぺんまで舐めるように見つめる。
すると、彼の視線が私の左手に注がれた。
「指輪はなし、か。こんなにべっぴんさんなのに、独身かぁ。あんまり男を選り好みしてると、婚期逃しちゃうよ」
完全なるセクハラ発言。宣伝部長の言葉は間違いなくコンプライアンス違反だ。
ふざけるな、クソじじい。
私はゴツゴツとした熊のように毛深い宣伝部長の左手を確認した。
指輪はあり、か。どうしてアンタみたいな男と結婚したのか奥さんにその理由を聞いてみたいよ、と心の中で呟く。
残念ながら、私はそんなことぐらいで傷ついたり動揺したりなどしない。
そちらがそのつもりなら、こちらはその手に乗るまでのこと。
「あの、それは――」
たまらず伍代さんが私と二人の間に割って入ろうとしたとき、私がそれを遮った。
彼の後に続いて受付に向かうと、受付嬢が息を飲みポッと頬を赤らめた。
「え……っと、東光エージェンシー様ですね」
横並びにいる若い受付嬢の二人の視線は真っすぐ伍代さんに向けられている。
まるで私が透明人間になったかのように、二人の目には彼しか映らないようだ。
「はい」
「しょ、少々お待ちくださいっ」
普段の彼女の声は知らないが、きっといつもより一オクターブぐらい高いだろう。
明らかな好意の色が全身から漂っている。
「ありがとうございます」
分かりやすく目の中にハートマークを描く受付嬢に微笑む彼は、やっぱりどうしようもない人たらしだった。
ミーティングルームに案内され、JJTの宣伝部長と営業部長と名刺交換を行うとオリエンが始まった。
企画の背景や顧客に伝えたいメッセージ、それからターゲット層の聞き取りや予算など細かい部分の聞き取りを行う。
一通りの話が終わると、伍代さんが尋ねた。
「一つお伺いしたいんですが、御社の系列チェーン店のCMは他社の伝堂に依頼していますよね?それなのに、どうして今回はコンペ形式をとろうとなさったんですか?」
「ああ、それね。ここだけの話なんだけど、伝堂は先代のころから贔屓にしてる代理店なんだよ。だけど、社長がずっと同じことをしていても仕方がないって言いだして。ニーズは時代によって変わるでしょう?」
宣伝部長の言葉に、彼が深く頷く。
「おっしゃる通りです。弊社も精一杯貢献できるように頑張らせて頂きますので、どうぞよろしくお願いいたします」
席を立ち揃って頭を下げたとき、「それにしても、美人な方ですねぇ」と禿げ散らかした50代ほどの宣伝部長が鼻の下を伸ばして私をいやらしい目で見つめた。
「本当ですね。美人なうえにスタイルもいいし、まるでモデルさんのようだ」
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すると、彼の視線が私の左手に注がれた。
「指輪はなし、か。こんなにべっぴんさんなのに、独身かぁ。あんまり男を選り好みしてると、婚期逃しちゃうよ」
完全なるセクハラ発言。宣伝部長の言葉は間違いなくコンプライアンス違反だ。
ふざけるな、クソじじい。
私はゴツゴツとした熊のように毛深い宣伝部長の左手を確認した。
指輪はあり、か。どうしてアンタみたいな男と結婚したのか奥さんにその理由を聞いてみたいよ、と心の中で呟く。
残念ながら、私はそんなことぐらいで傷ついたり動揺したりなどしない。
そちらがそのつもりなら、こちらはその手に乗るまでのこと。
「あの、それは――」
たまらず伍代さんが私と二人の間に割って入ろうとしたとき、私がそれを遮った。
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