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第二章 甘すぎる一夜の過ち
1
しおりを挟むタクシーのシートに体を沈ませる。
独特な匂いとカチカチッというウインカーの音がまるで子守歌代わりのよう。
私の隣に乗り込んできた伍代さんに家の場所を聞かれた気がするけど、強烈な睡魔に襲われて答えられなかった。
「伍代さ……ん。すみません……」
「いや、気にしないでいいよ。むしろ、大歓迎だから」
彼の言葉が最後まで聞けなかった。
タクシーを降り、珍しくベロベロに酔っぱらってしまった私は伍代さんに支えられて歩く。
車内で少し眠ったお陰でようやく酔いが覚めてきたものの、まだ素面には程遠かった。
広いエントランスを抜けてエレベーターに乗り込む。
「ここは……?」
「俺の部屋」
鍵を開けて中に入ると、パンプスを玄関で脱ぎ彼の部屋に上がった。
リビングに通され、ソファに座る。彼はスーツのジャケットをソファの背に掛けるとキッチンの冷蔵庫を開けた。
「こんなになるまで気付かなくてごめん。もっと早く切り上げるべきだった」
彼は冷蔵庫からミネラルウォーターの入ったペットボトルを取り出してこちらに歩み寄る。
そして、キャップを開けると私にそっと差し出した。
「ありがとうございます……」
御礼を言ってミネラルウォーターを口に含むと、徐々に脳が覚醒しはじめた。
今の状況を客観的にみる。
私は今、クライアントとの会食で酔っぱらって上司に多大なる迷惑をかけているのだ。
腕時計は深夜一時を指している。こんな時間に家まで上がり込むなんて、とんでもない大失態だ……!
「ご、ご迷惑をおかけしてすみません!今すぐ帰りますので……!」
勢いよく立ち上がった瞬間、ぐらりと体が揺れた。
「キャッ……」
そのまま後方に倒れそうになる私の背中に伍代さんは腕を回した。
そして、左手で抱きしめるように私の体を支えて右手でソファの座面に手をついた。
「ご、ごめんなさい……っ」
ソファに押し倒される格好になった私の顔の数センチ前には彼の整った顔がある。
思わずごくりと唾を飲み込む。
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