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第三章 近付く距離
4
「どう?サッパリした?」
何故か彼がキッチンに立っていた。
「あ、はい……。ゆっくり入らせてもらったので疲れが取れました」
「それならよかった。朝食を用意しておいたけど、食べられる?」
ガラスのダイニングテーブルの上には二人分の朝食が綺麗に並べられている。
「なっ……!」
それをマジマジと見つめてから、再び視線を彼に戻す。
「これ、全部伍代さんが作ったんですか?」
木製のプレートには美味しそうな料理が盛り付けられている。
カリカリのクロワッサンに挟んであるゆで卵とハムとサニーレタス。
彩のいいサラダやヨーグルト、ガラス皿には果物のオレンジまで添えられていた。
極めつけは自家製と思われるコンソメスープだろう。まるでカフェのような出来栄えだ。
「うん。家に食材がなくて簡単なものしか作れなかったんだけどね。ちなみに、普段の朝食は和食と洋食どっち?」
ダイニングの椅子に座るように促されて、向かい合うように腰掛ける。
「え……っと、そのどちらでもありません。仕事の日はぎりぎりまで寝ていたいので、ゼリータイプのドリンクを飲むだけで出社することが多いです」
私の言葉に彼は目を見開き愕然とした様子だった。
「食事は基本だよ。そんな食生活じゃ、病気になる。もし二日酔いでつらかったら、ほかのものを買ってくるから遠慮なく言って」
ヤルことはヤッたわけだし、理由をつけてさっさと私を追い出せばいいのに律儀に朝食まで振る舞ってくれるなんて。
さらに、心の底から私の健康を心配している様子の心優しき彼に苦笑いを浮かべる。
「そんなに心配しないでください。ぐっすり寝かせてもらってさらにはお風呂までいただいて、絶好調です。あの……これ、本当に食べてもいいんですか?」
「もちろん」
私は彼の厚意に甘えて、朝食を頂くことにした。
「お、美味しい……。彩も栄養バランスも味もすべてパーフェクトです。お世辞抜きにカフェをひらける腕前ですよ!」
私はあっという間に目の前の料理の虜になった。
胃袋を掴まれるとはこういうことをいうんだろうか。
「このコンソメスープも絶品ですね!」
彼といることをすっかり忘れて、つい無邪気な笑顔を向けてしまった。
「喜んでもらえてよかったよ」
「……っ」
うっかり素の姿をさらけ出してしまったことに、気恥ずかしい気持ちになる。
私はコホンッと一度咳ばらいをして姿勢を正した。
「……伍代さん、朝食まで用意していただきありがとうございます」
身体の関係を持ってしまったとはいえ、彼は私の上司だ。ぺこりと頭を下げてお礼を言うと彼は涼し気に笑った。
「俺がしたいと思うことをしてるだけだから気にしないで。それに、今こうやって一緒に朝を迎えて朝食を食べられて幸せなんだ」
その言葉に、不覚にも心臓がトクンッと鳴る。
そんな風に言ってもらえるなんて予想もしていなかった。
正直、あんなに苦手だった彼と、こんな風に穏やかに朝食を食べているなんてとても信じられない。
食事をしている間、彼は終始楽し気だった。
オンとオフの切り替えが上手なタイプなのかもしれない。
彼はいつも以上に砕けた感じでフランクに接してくる。
和やかなムードで朝食を終え、オレンジジュースを口に含みながら室内を見渡す。
床には片付けの終わっていない荷物が点在していた。
すると、私の視線に気付いたのか彼が申し訳なさそうな顔をした。
「まだ引っ越してきて間もないから片付けが終わっていないんだ。実咲が来ると分かっていたら綺麗にしておいたんだけど」
「……ぶっ!!」
突然の『実咲』呼びに、口に含んだオレンジジュースを吹き出しそうになる。
何故か彼がキッチンに立っていた。
「あ、はい……。ゆっくり入らせてもらったので疲れが取れました」
「それならよかった。朝食を用意しておいたけど、食べられる?」
ガラスのダイニングテーブルの上には二人分の朝食が綺麗に並べられている。
「なっ……!」
それをマジマジと見つめてから、再び視線を彼に戻す。
「これ、全部伍代さんが作ったんですか?」
木製のプレートには美味しそうな料理が盛り付けられている。
カリカリのクロワッサンに挟んであるゆで卵とハムとサニーレタス。
彩のいいサラダやヨーグルト、ガラス皿には果物のオレンジまで添えられていた。
極めつけは自家製と思われるコンソメスープだろう。まるでカフェのような出来栄えだ。
「うん。家に食材がなくて簡単なものしか作れなかったんだけどね。ちなみに、普段の朝食は和食と洋食どっち?」
ダイニングの椅子に座るように促されて、向かい合うように腰掛ける。
「え……っと、そのどちらでもありません。仕事の日はぎりぎりまで寝ていたいので、ゼリータイプのドリンクを飲むだけで出社することが多いです」
私の言葉に彼は目を見開き愕然とした様子だった。
「食事は基本だよ。そんな食生活じゃ、病気になる。もし二日酔いでつらかったら、ほかのものを買ってくるから遠慮なく言って」
ヤルことはヤッたわけだし、理由をつけてさっさと私を追い出せばいいのに律儀に朝食まで振る舞ってくれるなんて。
さらに、心の底から私の健康を心配している様子の心優しき彼に苦笑いを浮かべる。
「そんなに心配しないでください。ぐっすり寝かせてもらってさらにはお風呂までいただいて、絶好調です。あの……これ、本当に食べてもいいんですか?」
「もちろん」
私は彼の厚意に甘えて、朝食を頂くことにした。
「お、美味しい……。彩も栄養バランスも味もすべてパーフェクトです。お世辞抜きにカフェをひらける腕前ですよ!」
私はあっという間に目の前の料理の虜になった。
胃袋を掴まれるとはこういうことをいうんだろうか。
「このコンソメスープも絶品ですね!」
彼といることをすっかり忘れて、つい無邪気な笑顔を向けてしまった。
「喜んでもらえてよかったよ」
「……っ」
うっかり素の姿をさらけ出してしまったことに、気恥ずかしい気持ちになる。
私はコホンッと一度咳ばらいをして姿勢を正した。
「……伍代さん、朝食まで用意していただきありがとうございます」
身体の関係を持ってしまったとはいえ、彼は私の上司だ。ぺこりと頭を下げてお礼を言うと彼は涼し気に笑った。
「俺がしたいと思うことをしてるだけだから気にしないで。それに、今こうやって一緒に朝を迎えて朝食を食べられて幸せなんだ」
その言葉に、不覚にも心臓がトクンッと鳴る。
そんな風に言ってもらえるなんて予想もしていなかった。
正直、あんなに苦手だった彼と、こんな風に穏やかに朝食を食べているなんてとても信じられない。
食事をしている間、彼は終始楽し気だった。
オンとオフの切り替えが上手なタイプなのかもしれない。
彼はいつも以上に砕けた感じでフランクに接してくる。
和やかなムードで朝食を終え、オレンジジュースを口に含みながら室内を見渡す。
床には片付けの終わっていない荷物が点在していた。
すると、私の視線に気付いたのか彼が申し訳なさそうな顔をした。
「まだ引っ越してきて間もないから片付けが終わっていないんだ。実咲が来ると分かっていたら綺麗にしておいたんだけど」
「……ぶっ!!」
突然の『実咲』呼びに、口に含んだオレンジジュースを吹き出しそうになる。
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