【完結】一夜限りのはずが、ハイスぺ御曹司に熱烈求愛されて一途な愛を刻み込まれました

中山紡希

文字の大きさ
40 / 100
第三章 近付く距離


その日から、私は誰かの為に頑張ることを辞めて、自分の為に頑張ると決めた。
言いたいことがあれば上司にだって盾突くし、理不尽だと思ったことには抗議する。
そうやっているうちに、私には『悪女』というあだ名がついたのだ。

だから正直、彼にだって期待はしていなかった。
コンペに負けたらチームリーダーの私に責任を押し付け、もし通れば自分の手柄にするだろうと予想していた。

「ちょっと待ってて」

そう告げると、彼ははリビングから出ていく。
それを見送って再びパソコンに視線を向けると、意外にもすぐ戻ってきた。
その手には何やら書類のようなものがある。

「それ、なんですか?」
「JJTの企画案。昨日のオリエンと会食で得た情報を盛り込んで作ってみた」

私は書類受け取りざっと目を通す。

「これ、いつ作ったんですか?」

信じられない。このレベルの企画書を作るのは相当な時間がかかるはずだ。
クライアントの要望もしっかりと盛り込まれている。

「今朝早起きして作った」
「今朝?たったの数時間でこの企画案を作ったってことですか?」

まさかという思いで尋ねた。
私では一日かけたとしても作れないだろう。

「そう。ただ、ちょっとざっくり過ぎるから、もう少し細部までこだわりたいと思ってる」

彼は困惑している私の前の椅子に腰を下ろす。

「俺は、人を見る目はあると思ってる。今回の人選も部長にはありえないと呆れられたけど、このメンバーでならできると信じてる」
「女の私がチームリーダーだとしても、ですか?」
「もちろん。それに、社員だからパートだからというのも関係ない」
「え……」

既視感のある台詞に首を傾げると、「実はこの間のコーヒー事件、近くで見てたんだ」と彼はニッと笑った。

「私と黒川さんが水と油って知っててよく同じチームにしましたね」
「水と油だって無理してまじり合わなくてもいい。お互いを尊重しあえば、相乗効果も期待できるかもしれないよ」
「まあ、ないと思いますけど。ただ……、私は伍代さんのことを誤解していたようです。それだけは謝ります。すみません」
「誤解?」

私は入社してから今まで上司に受けてきた酷い仕打ちを手短に話した。

「だから正直、伍代さんがここまで動いてくれているとは思っていませんでした」
「そういう苦々しい経験は誰にでもある。それを乗り越えたからこそ、今の実咲があるんだよ。でも、これだけは言える。人の手柄を横取りする人間はいつか淘汰される運命だし、勝手に自滅するよ」
「そうだといいんですけど」
「大丈夫。実咲が頑張ってることを俺はわかってるから」

そう言うと、彼は私のノートパソコンをパタンっと閉めた。

「え?なんで……」
「だから、今日ぐらいは仕事を忘れてゆっくりしよう」
「でも、伍代さんだって寝る間を惜しんで企画書を作ってたじゃないですか。私に協力できることならーー」
「ありがとう。気持ちだけもらっておく。それとこれは、上司命令だからね」

有無を言わさぬ口調だった。
確かにここ最近は仕事に追われ、何かをしていないと不安になることも多かった。
休んでいる間にも他の人が大きな案件を取ってくるんじゃないかと悪夢を見ることもある。

「こういうときだけ上司ぶるのやめてもらえます?」

憎まれ口を叩きながらも、内心ではホッとしていた。
このまま無理をすれば、心身共に不調になる予感があった。
昔から手を抜けない真面目な性格が災いして、自分を追い込んで無理をしすぎてしまう癖がある。


「でもまあ、今回は上司命令なので素直に従わせていただきます」
「そうそう。素直になることは大事だよ」

私は彼と目を見合わせて、ふっと笑みを浮かべた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

藤白ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

憧れていた敏腕社長からの甘く一途な溺愛 ~あなたに憧れて入社しました~

瀬崎由美
恋愛
アパレルブランド『ジェスター』の直営店で働く菊池乙葉は店長昇格が決まり、幹部面談に挑むために張り切ってスターワイドの本社へと訪れる。でもその日、なぜか本社内は異様なほど騒然としていた。専務でデザイナーでもある星野篤人が退社と独立を宣言したからだ。そんなことは知らない乙葉は幹部達の前で社長と専務の友情に感化されたのが入社のキッカケだったと話してしまう。その失言のせいで社長の機嫌を損ねさせてしまい、企画部への出向を命じられる乙葉。その逆ギレ人事に戸惑いつつ、慣れない本社勤務で自分にできることを見つけて奮闘していると、徐々に社長からも信頼してもらえるように…… そして、仕事人間だと思っていた社長の意外な一面を目にすることで、乙葉の気持ちが憧れから恋心へと変わっていく。 全50話。約11万字で完結です。