【完結】一夜限りのはずが、ハイスぺ御曹司に熱烈求愛されて一途な愛を刻み込まれました

中山紡希

文字の大きさ
41 / 100
第三章 近付く距離


……とはいえ、ゆっくりするといっても何をしたらいいのかわからない。
そんなとき、見たいと思っていたゾンビ映画をサブスクで見られると知り、私は食いついた。

100インチ以上の大画面の迫力だけでなく、サウンドバーと呼ばれる棒状のスピーカーが設置されているおかげで臨場感のあるサウンドも楽しめた。
座り心地のいいソファに座り、阿鼻叫喚の映画を楽しむ。
大量のゾンビが人間の肉を食いちぎり貪り食う描写はたまらなくリアルで、私は興奮気味に身を乗り出した。
けれど、隣に座る彼はスプラッターシーンでは画面から顔を背けてしまう。

「こういうの嫌いですか?」
「いや、全然大丈夫」

強がっていたけど、おそらく血が苦手なんだろう。
心なしか顔色も悪い気がする。初めて彼の可愛らしい弱点を見つけた私は、心の中でほくそ笑んだのだった。


結局、私は夕方まで彼の家でまったりとした時間を過ごした。
着替えを済ませて、彼の部屋を出る。

「伍代さん、これからどこかへ行くんですか?」
「ああ、ちょっとね」

髪型も仕事の時のようにワックスで整え、ビシッとスーツを着こなす彼は曖昧に答えると、エレベーターのボタンを押した。
室内の様子からなんとなく想像はついていたけれど、彼の住居はとんでもなく高級なマンションだった。
エレベーターを降りて入り口に向かうと、コンシェルジュがいた。聞くと、宅急便などの荷物も全てコンシェルジュが受け取ってくれるらしい。

「乗って」

駐車場にやってきた私は真っ白な高級車に目をむく。
外国製の車なのか、ハンドルは左側だ。右側の助手席のドアを開け、伍代さんが私をエスコートする。

「ありがとうございます」

座り心地のいい革張りのシートに体を預ける。
ここが車の中であることを忘れてしまうほどラグジュアリーな空間だ。
シートベルトを締めて家の場所を伝えると、彼は首を傾げた。
わずかな間の後、彼は大きなディスプレイのナビに住所を打ち込み始める。

「ずっとイギリスにいたから、この辺りの道がまだよくわからないんだ。ナビがないと迷子だよ」
「大丈夫ですよ。分からなければ、私がナビします」
「カッコ悪いな、俺。悪いけど、頼む」

車はなだらかに動き出し、マンションの駐車場から出た車は右にウインカーを出して大通りへ進む。
私は運転中の彼にチラリと目を向けた。
本人はかっこ悪いと言っていたけど、そんなことはない。
むしろ、左ハンドルの大きな車を平然と運転する彼はかっこいい。
もちろん、海外のメーカーの車は道路の関係上左ハンドルが多いことは知っているけど、それを抜きにしても、だ。
ペーパードライバーの私には、彼の姿が眩しかった。

二車線の道路を走行中、信号が黄色に変わった。
彼はなだらかにアクセルを抜き、ブレーキを踏む。
すると、ゆっくりと減速する車の横を猛スピードの別の乗用車が追い抜いていった。

あれじゃ信号無視と同じだ。

「余裕なさすぎ」

ふたりの声が重なり合い、パッと顔を見合わせる。

「今、シンクロしたね」
「ですね!びっくりですね」

思わず笑うと、それに気づいた彼が少し驚いたような表情を浮かべた。

「やっと笑ってくれた」

彼は感慨深そうに微笑む。

そのとき、ふとシートの足元のマットに光る物を見つけた。
手を伸ばすと、それはゴールドの小さなループのピアスだった。大きさ的に女性もののようだ。
ピアスがあったことを伝えようと彼のほうを向くと、ちょうど信号機が青に切り替わったところだった。

彼に言おうか迷ったけれど、私は黙って運転席と助手席の間にあるコンソールボックスにピアスを収めた。
なぜかわからないけれど、チクリと胸が痛んだ。

彼がアクセルを踏み込む。私の笑顔はすっかり消え去っていた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

藤白ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! ✽全28話完結 ✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 ✽他誌にも掲載中です。 ✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。 →表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?