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第六章 芽生えた感情
13
「早く出たほうがいいんじゃないですか?」
「あぁ」
やれやれと立ち上がった伍代さんはテレビモニターを覗き込む。
その視線がマズいとばかりに宙を漂ったのを私は見逃さなかった。
来客者が『幸子』か『フミ』のどちらかだと直感した私はスッとソファから立ち上がり、彼の隣へ向かう。
例え傷付くことになろうが、今は真実が知りたいと強く思う。
「実咲、ちょっと待――」
伍代さんが慌てて止めに入るものの、遅かった。
モニターには見知らぬ若い女性が映っていた。
モニター越しでもわかるぐらい可愛らしい顔立ちをしている。
「伍代さん、彼女いないって言ってましたよね?」
私への想いを口にしながらも、他の女性とも交際をしていたの……?
元カレの俊介とのトラウマが蘇りそうになる。
振り返って伍代さんを見る私はきっと、鬼のような形相を浮かべているに違いない。
「いないよ。それは本当だ」
「……実は、以前車で家まで送ってもらったときに女性もののピアスが車のマットの上に落ちていたんです。それに、居酒屋で女性から電話がかかってきたのも知ってます」
「もしかして、俺に女性の影があったのを気にしてた?それって、嫉妬……――」
そのあとに続く言葉に気付き、彼の言葉を切る。
「違います!ただ、今更隠そうとしたってムダですよ」
私の言葉に伍代さんは「分かった」と言い、玄関へ向かう。
私はリビングで待機し、女性が入ってきたらきちんと話し合おうと決めた。
先程彼に気を許してしまいそうになった自分を責める。
恐らく、私は彼に遊ばれていた側だ。これは間違いなく私のほうに落ち度がある。
「ねぇ、ちょっと。なんですぐに開けないわけ!?あと10秒待っても開けないようだったら合鍵使って入ろうかと思ってたんだけど!!……はっ?ていうか、女連れ込んでる?えっ、子供の靴もある?なに?どういうこと!?」
「おい、待て。幸子!」
「どいてよ!!」
伍代さんが玄関先で女と言い争う声がする。
相当怒っているのか、女性は彼の制止を振り切ってリビングにドカドカと足を踏み鳴らしてやってきた。
引き戸が開かれ、私と女性の視線がぶつかり合う。
まだ二十代半ばだろうか。
Aラインの花柄のワンピースの似合う細身の可愛らしい女性だった。アップにした茶色く艶やかな髪は綺麗に編み込まれ、今風なメイクを施している。女子力の塊のような女性だ。
すると次の瞬間、彼女は目を見開き、唇をわなわなと震わせた。
浮気相手がリビングにいたんだ。怒り狂っても仕方がない。
けれど、彼女の反応は意外なものだった。
「え……、フミちゃん……?ねぇ、フミちゃんでしょ!?」
「えっ……?」
女性は顔をくしゃくしゃにしてボロボロと涙を流すと、私にギュっと抱きついてきた。
「えっ?なっ?フミちゃん?」
その名前に聞き覚えがあった。それは、昨日、タクシーの中で伍代さんが放った寝言の名前だ。
「フミちゃんにまた会えた……。よかった。本当によかったよぉ……」
何が起きているのかはわからない。
けれど、彼女から私に対する怒りの感情は一切感じられない。
それどころか、久しぶりの再会を喜んでいるように見える。
もちろん彼女を知らない私の頭の中は疑問で満ち溢れている。
「ううっ……、よかったね……お兄ちゃん……。うぅ……フミちゃんにまた会えて……」
「え、お兄ちゃん?」
彼女と伍代さんを交互に見つめる。
すると、「全部話すよ」と伍代さんは降参したように肩を竦めた。
「あぁ」
やれやれと立ち上がった伍代さんはテレビモニターを覗き込む。
その視線がマズいとばかりに宙を漂ったのを私は見逃さなかった。
来客者が『幸子』か『フミ』のどちらかだと直感した私はスッとソファから立ち上がり、彼の隣へ向かう。
例え傷付くことになろうが、今は真実が知りたいと強く思う。
「実咲、ちょっと待――」
伍代さんが慌てて止めに入るものの、遅かった。
モニターには見知らぬ若い女性が映っていた。
モニター越しでもわかるぐらい可愛らしい顔立ちをしている。
「伍代さん、彼女いないって言ってましたよね?」
私への想いを口にしながらも、他の女性とも交際をしていたの……?
元カレの俊介とのトラウマが蘇りそうになる。
振り返って伍代さんを見る私はきっと、鬼のような形相を浮かべているに違いない。
「いないよ。それは本当だ」
「……実は、以前車で家まで送ってもらったときに女性もののピアスが車のマットの上に落ちていたんです。それに、居酒屋で女性から電話がかかってきたのも知ってます」
「もしかして、俺に女性の影があったのを気にしてた?それって、嫉妬……――」
そのあとに続く言葉に気付き、彼の言葉を切る。
「違います!ただ、今更隠そうとしたってムダですよ」
私の言葉に伍代さんは「分かった」と言い、玄関へ向かう。
私はリビングで待機し、女性が入ってきたらきちんと話し合おうと決めた。
先程彼に気を許してしまいそうになった自分を責める。
恐らく、私は彼に遊ばれていた側だ。これは間違いなく私のほうに落ち度がある。
「ねぇ、ちょっと。なんですぐに開けないわけ!?あと10秒待っても開けないようだったら合鍵使って入ろうかと思ってたんだけど!!……はっ?ていうか、女連れ込んでる?えっ、子供の靴もある?なに?どういうこと!?」
「おい、待て。幸子!」
「どいてよ!!」
伍代さんが玄関先で女と言い争う声がする。
相当怒っているのか、女性は彼の制止を振り切ってリビングにドカドカと足を踏み鳴らしてやってきた。
引き戸が開かれ、私と女性の視線がぶつかり合う。
まだ二十代半ばだろうか。
Aラインの花柄のワンピースの似合う細身の可愛らしい女性だった。アップにした茶色く艶やかな髪は綺麗に編み込まれ、今風なメイクを施している。女子力の塊のような女性だ。
すると次の瞬間、彼女は目を見開き、唇をわなわなと震わせた。
浮気相手がリビングにいたんだ。怒り狂っても仕方がない。
けれど、彼女の反応は意外なものだった。
「え……、フミちゃん……?ねぇ、フミちゃんでしょ!?」
「えっ……?」
女性は顔をくしゃくしゃにしてボロボロと涙を流すと、私にギュっと抱きついてきた。
「えっ?なっ?フミちゃん?」
その名前に聞き覚えがあった。それは、昨日、タクシーの中で伍代さんが放った寝言の名前だ。
「フミちゃんにまた会えた……。よかった。本当によかったよぉ……」
何が起きているのかはわからない。
けれど、彼女から私に対する怒りの感情は一切感じられない。
それどころか、久しぶりの再会を喜んでいるように見える。
もちろん彼女を知らない私の頭の中は疑問で満ち溢れている。
「ううっ……、よかったね……お兄ちゃん……。うぅ……フミちゃんにまた会えて……」
「え、お兄ちゃん?」
彼女と伍代さんを交互に見つめる。
すると、「全部話すよ」と伍代さんは降参したように肩を竦めた。
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