【完結】一夜限りのはずが、ハイスぺ御曹司に熱烈求愛されて一途な愛を刻み込まれました

中山紡希

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第七章 忍び寄る影

七月中旬。うだるような暑さが連日続くこの日、私はJJTの本社へ向かった。
公開になったCMの反響は思った以上に大きく、ジュージューバーグの売り上げも順調に伸びていると喜んでもらえた。
それだけでなく、今回のCMを気に入ってくれたJJTの社長から違う部門のCM制作の打診も受けることができた。

「よしっ、帰ろう!」

ミーティングルームを出ると、足取り軽く廊下を歩きエレベーターのあるほうへ向かう。
智哉さんと付き合い始めて2か月が経ち、仕事もプライベートも順調そのものだった。
どんなに仕事で忙しくても智哉さんはまめに連絡をくれたし、少しの時間だとしても顔を見て話したいとアパートまで会いにきてくれる。
休日には近場の観光地でデートもした。
私が何気なくポロリと行きたいと漏らした場所も覚えてていて、連れて行ってくれる。
智哉さんは言葉でも態度でも、分かりやすく私への愛情を示してくれるし、大切にされていると実感することができた。

エレベーターの前に着き、扉が開く。
中には二人組のスーツ姿の男性が乗っている。その中に俊介の姿があった。
喉の奥がひゅっと音を立てて鳴る。
俊介からの執拗な電話やメールは智哉さんと付き合った後も続いていた。
しかも、それは日を追うごとに多くなり最近では恐怖すら覚えるまでになってしまった。

どうしてこんなタイミングで……。

「……っ」

俯いて険しい表情を浮かべていた俊介が顔を持ち上げる。
目が合った瞬間、俊介の表情がぱあっと明るくなった。

「――実咲じゃん!!俺に会いに来てくれたのか?」

スーツ姿の俊介はエレベーターを降りると、馴れ馴れしく話しかけてきた。
俊介の隣にいた男性が、俊介に「誰?」とこそっと耳打ちする。

「俺の大学生時代の元カノ」
「マジか。すげぇ美人じゃん」
「だろ?同じサークルだったんだけど、実咲は飛びぬけて美人だったんだよ」
「へぇ、羨ましい」
「ふふっ、まあな」

まるで自分が褒められているかのように、得意げに鼻を鳴らす俊介を私は冷めた目で見つめる。

「今日ここへ来たのは仕事の話をするためです。それでは、私はこれで。失礼します」

あえて他人行儀に振る舞い一人でエレベーターに乗り込もうとすると、俊介は逃がさないというように私の手首を掴んだ。

「久しぶりに会えたんだし、少し話そうぜ。佐伯は先戻ってて」
「え……。でも、お前――」
「いいから!」

佐伯と呼ばれる男性は納得のいかない表情を浮かべたものの、私に小さく頭を下げて歩き出した。
今の職場でも俊介は俺様ぶりを発揮しているようだ。

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