【完結】ハイスぺ副社長になった初恋相手と再会したら、一途な愛を心と身体に刻み込まれました

中山紡希

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第二章

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今のターゲットは私だ。
けれど、今後もしまた別の誰かが私と同じようなパワハラを受けることになったら絶対に嫌だ。
私と同じ苦しみを他の人には決して味わわせたくない。
それに、これ以上小田さんにも迷惑を掛けられない。怖いけれど、この機会を逃がすわけにはいかない。

だったら……。
決意を固めた私は震える指先を隠すために、グッと拳を握りしめた。

「私……轟部長からパワハラにあっています」
「なっ……!秋月、お前!!」

目を吊り上げてわなわなと唇を震わせる轟部長。
あまりの剣幕に足が震えそうになり必死に力を込める。

「分かりました。正直に答えてくれてありがとうございます。この件は厳正に対処します」
「よろしくお願いします」

おずおずと頭を下げる私を轟部長が怒りに満ちた目で睨み付ける。
陽介くんが会社を去った後、怒り狂った轟部長に何をされるか分からない。
それも承知の上とはいえ、全身に不安が込み上げてくる。
すると、彼は分かりやすく私への怒りを滲ませる轟部長に視線を向けた。

「そうそう、言い忘れました。彼女にやり返そうなどとおかしな気を起こしたら、私が黙っていません」

轟部長に釘をさした後、ビジネスバッグの中から書類を取り出して私に差し出した。
そこには『辞令』の二文字が記されていた。

「これは……?」
「急な話で申し訳ありませんが、秋月さんには本日付で早瀬商事の秘書課へ異動してもらいます」
「え!」

青天の霹靂とはまさにこのこと。彼の言葉に目を白黒させることしかできない。
私の隣で轟部長は口をわなわなと震わせる。

「今回の異動はもちろん左遷ではありません。有能な君を見込んでのことです」

彼は穏やかに微笑んだ後、ミーティングルームの扉を開けた。

「彼女に詳しい話をしたいので、部外者は今すぐお引き取り下さい」

淡々としながらも、彼のその言葉は分かりやすく刺々しく、轟部長は逃げるように出て行った。

「よ、陽介くん、どういうこと?」

彼に聞きたいことは山ほどあった。
轟部長が出て行き、彼は「立ち話もんなんだし、とりあえず座ろう」と促した。

大声で話さない限り会話は外には漏れない。
とはいえ、ミーティングルームはガラス張りで廊下を歩く社員たちからは丸見えだ。息を吐いて気持ちを落ち着けて、私は彼と向かい合うようにして座った。

「一つずつ順を追って説明する。買収の件は知っての通りだ。パワハラの件については、買収に当たって内密に複数社員と面談をしたのは本当だ。その中の一人が常態的なパワハラがあると内部告発してくれたんだ。音声データの証拠もあった」

買収の件はもちろんのこと、面談があったことすら知らない私が内部告発できるはずがない。
けれど、先程の陽介くんは轟部長が私にしていることを全て知っているような口ぶりだった。
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