お兄ちゃんって呼ばれたい!

とーま

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母からの救いの手

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  「お兄ちゃん!」

 「なんだ?また何か買って欲しいものでもあるのか?」

 「うん。新作の夏服買って欲しいんだけど、ダメかなぁ?」

 「しょうがないな、お母さんたちには内緒だぞ。」

 「ありがとう。さすが私のお兄ちゃんだね!」


 ードン!ー

 突然頭にヒリついた痛みがはしる。鋭利なもの、鈍器などで殴られたわけではないが、それなりに硬さがあるもので叩かれたようだ。

 「辰秋、お前は今日居残りで補習な。」

 頭を叩いたのは担任の先生だった。右手には教科書を丸め棒状にしたものを持っている。また妄想に浸っていたようだ。最近同じような妄想をよくしてしまう。妹と話せていないというのもあるのかもしれないが、時々自分がシスコンなのではないだろうかと疑ってしまうことさえある。

 「また妄想してたのか?妹好きもいいけど勉強もしろよ。」

  突然後ろからかけられた言葉にすぐ反応することはできなかった。時間はかかったものの声がかかってきた方に身体を向けると、笑みを浮かべながらこちらを見ている海都の顔があった。

 「あいにく俺には勉強は間に合っているので別にやらなくても大丈夫なんだ」

「そうだったな、お前は帰宅部だもんなぁ。勉強する時間たくさんあって羨ましいぜ。」

「お前な。」

 この掛け合いは二人にとっておきまりのパターンだった。海都の言うとうり辰秋は帰宅部で家にいる時間も長い。今日もこの授業を受け終わったら家に帰る予定だ。だが先程担任の先生に居残りを言われたので今日はいつもみたいにすぐには帰れないようだ。授業終了のチャイムが鳴り、挨拶を済ませ、みんな一斉に下校又は部活に走る。そんな中ただ一人教室の中に佇み早く帰りたいがために黙々と補習内容をこなす。

 「あいつは今何してるのかな。」

 辰秋には2つ年の離れた妹がいる。彼の妹は現在中学三年生で、受験勉強まっしぐらな時期だ。そのせいか昔は仲が良かったのに今では口を聞くこともあまりなくなってしまった。

「もう一度話したい。」

そんな事を、呟きながら残りの補習内容を終わらせ、家に帰ることができたのは、午後五時過ぎだった。家に着きリビングに入ると母がいた。

 「遅かったわねぇ。いつもならもう少し早く帰ってくるのに。寄り道でもしてたの?」

 「いや、ちょっと先生に居残りさせられてさ。」

 大概の親はこの一言を聞いたら怒るかもしれたいがうちの親はその類には入らない。怒りはしなく、まるで聞いた話を右耳から左耳に流しているかの様に、綺麗に受け流す。だからいつも嘘はつかずに話すことができる。

 「そうだ、さっき真夏ちゃんが勉強教えて欲しいって言ってたわよ。私じゃわからないから辰秋、あなたが教えてあげなさい。」

 突如母から発せられた一言に辰秋の頭の思考能力は一時停止した。妹への接触がこんな風にやってくるなんて考えてもいなかった。辰秋には断る理由がない。

 「わかった。」

合意の合図を親に向け妹のいる二階へ行った。

 




 
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