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津波の脅威
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「おはよう」
齋藤隆正は、朝起き、着替えと学校への持ち物確認を済ませ、二階の自分の部屋から一回のリビングへと降り、リビングでバタバタと家事をしている母親、斎藤加奈子に、あいさつをした。
「おはよう。隆正」
母は息子に明るい声で返す。
今はまだ六時半、学校に行くまで時間は十分にある。
隆正はかなり早起きなほうだ。目覚めもかなりいいほうだと、自分でもそう思っている。
隆正はいつも自分が座る席に座った。
テーブルには母が用意した、朝食があった。
「いただきます」
隆正は言い飽きたかのようにボソッと言い、食べ始めた。
隆正は、なんだか静かだな。そう思い、テレビのリモコンのスイッチを押した。
テレビをつけるとちょうどニュースがやっていた。
最近、ここ日本も物騒なニュースが増えてきたな。なんとなくそう思った。
隆正は朝食を終え、歯を磨き、顔を洗い、荷物を持った。
時刻は七時になっていた。
「行ってきます」
隆正はそういい、行ってらっしゃいという母の言葉を背に聞きながら家を出た。
隆正が通う高校は家から近いため、徒歩での通学だ。
やっぱり朝の空気ってきれいでいいな隆正はそう思いながら学校へと向かった。
学校へ着き、靴を履き替え、教室へと入った。
自分の席に座るや否や
「よ! 隆正! 今日も早いな!」
友人の神田祐樹が話しかけてきた。
「お! おはよう!」
クラスで唯一、アニメ好きで話が合った隆正のたった一人の親友だ。
「なあ、朝ニュース見た?」
祐樹は隆正に聞いた。
「見たけど?」
「地震……九州で震度六弱だって……結構被害出ているらしいよ」
「いつあったの?」
「今日の早朝らしいよ。五時くらいだってみんな寝てただろうし大変だよね。津波は起きなかったらしいけどね」
「へぇ……最近多いね」
隆正たちが住んでいるここは高知県、確かに九州から近いが、どこか他人事のような、そんな感覚が隆正にはしていた。
そうこういろいろと話しているうちに、あっという間に授業開始の時間となった。
授業では、地震の話もあった。朝から祐樹と地震について話していたからか、いつもより内容に集中することが出来た。
昼食を終え、五時間がもうすぐ始まる……そんな時だった。
突如地面が揺れた。
日本人として、それが地震だとすぐわかった。慣れているせいかあまりパニックにはならない。まあそれが危険だとよく言ったりもするが。教室に生徒たちのスマホから緊急地震速報の警告音が鳴り響く。
揺れがどんどん強くなっていく。
「震度五強だって!」
クラスの誰かがそういったと同時に突き上げられるような感じで激しく地面が揺れた。
避難訓練で学んだようにみんな机の下に隠れている。
震度三くらいだったらみんな机の下に隠れたりしないだろう。
だが皆は恐怖を感じていた。今まで感じたことのない揺れに皆の顔が引きつっている。
「震度七だって」
震度七……この言葉に恐怖以外の感情を感じたものは誰一人いなかった。
すると教室のスピーカーから放送が流れた。
「地震です。皆さん、机の下に入り、頭を守ってください」
もうすでにしてるわ! みんなそう思ったが、放送している先生の声がわずかに震えており、それもまた、クラスの皆の恐怖を駆り立てた。
ウーーーーー
町内放送が窓の空いた外から聞こえた。
津波警報が発令されました。該当の地域にお住まいの方は今すぐ、高台のほうへ避難してください。
そう、皆の耳に入ってきた。
みんなは恐怖で騒ぎ、もうパニック状態へと陥っている。
すると揺れが収まってきた。
担任の先生がよろけながら教室へと入ってきた。
揺れは収まった。
「皆さん津波警報が発令されました。今すぐ、外に出てください。避難します! 訓練を思い出して!」
みんなが廊下に並んだ。早く行こうよ!
そんな声が聞こえてくる。
「落ち着いてください。焦ると二次被害が出る恐れがあります」
先生は皆を落ち着かせようと奮闘している。
「ねぇ……あれ……」
「うそだろ……」
皆が廊下の窓に集中する。
そこには、車、家屋を巻き込みながら迫ってくる並みの様子が写っていた。
まさに地獄絵図というにふさわしい情景だった。
「今すぐ屋上に避難してください!」
隣のクラスの先生がそう叫ぶと同時に皆屋上へと走りだした。
「走らないで!」
先生たちは注意するも、冷静さを失いパニックになっている皆の耳には入っていない。
皆はどんどん屋上へと向かい、階段を駆け上がっている。
屋上の扉付近では、皆が集まり、渋滞となり、入れず押し合いが起こり、今でも事故が起こりそうな状態へとなっている。
そんな様子を階段下で、隆正と祐樹は見ていた。
津波が怖くないわけではない階段のあまりの惨状に体が動けなくなっているだけだった。
「あっ! スマホ忘れた」
祐樹が言った。
「ちょっと取ってくる」
「おい!」
避難訓練で言われている戻ったらいけないってことを忘れたのか? 隆正はそう思った。
隆正は祐樹の後を追おうとした。
すると下の階からほかの学年の人たちが昇ってきた。
「おい、何やってんだ?」
「津波が一階まで来てるんだぞ!」
隆正はなだれ込んできた人たちに流され、階段上まで昇らざるおえなくなった。
隆正は祐樹との距離がどんどん離れていく。そんな感覚が明確に感じ取れた。
先生が生徒を誘導していき、何とか屋上へスムーズに皆が出ていけるようになった。
隆正もその流れにしたがわざるおえなかった。
隆正は屋上へと出た。
屋上に出た先生がクラスで別れて並ぶように指示をし、列を組んでいっている。
隆正は周りを見渡し、屋上の扉から出てくる人々へ目を通していく。
祐樹の姿はない。
そうこうしているうちに屋上から出てくる人の波は無くなった。
皆が列を作り、先生が人数を確認していく。
隆正は自分の担任の先生がすでにもう十回以上確認を繰り返していること、顔が明らかにこわばっていることに気づいていた。
隆正はゆっくりと、担任の先生のもとに近寄った。
生徒、先生たちから注目が集まっているのを隆正は感じた。
「祐樹がスマホを忘れたって教室に戻って、それから祐樹の姿を見ていません……」
祐樹は、先生たちや生徒の目から光が消えたかのような感覚を感じた。
祐樹は皆から人気があり、先生からの人望も大きかった。
こんな僕にも優しくしてくれた祐樹だ。皆が悲しまないわけないよな。隆正はそう思った。
隆正は別に性格が悪いわけじゃない。だが、中学の頃にいじめを受けた影響で、自己肯定感が極端に低くなっているのだ。
その後先生たちは集まり、救助が来るまで屋上で待機することが決まった。
非常食は先生たちで担当が決まっていたようで、先生たち全員が背負っていたバッグの中からいろいろな避難食が出され、翌日、救助ヘリが来るまで、困ることはなかった。
その後、被害のない、別の避難所までヘリで送られ、避難生活を送った。
隆正の母親は、そこで合流でき、母の無事を知れ、隆正は安堵した。
数日後、波が完全に引き、戻ることができた。
戻り、隆正が見た町の様子はまさに、地獄絵図というにふさわしい状況だった。
いまだに祐樹は見つかっていない。
ニュースでは死者の数が日々、更新されていく。
隆正は自分の家の様子を見るため、一人家の場所へと向かった。
その道中でのことだった。
隆正はふと自分の上空に視線というか気配を感じた。
隆正はふと、そちらを見た。
そこには一本の木に枝に何かついているのが視認できた。
そのついているものが木の枝に刺さっていること、それが人であることを認識するのに、脳はそう時間を要しなかった。
だが、唯一脳が理解を拒んだことが一つだけあった。
その刺さった人が祐樹であることだった。
齋藤隆正は、朝起き、着替えと学校への持ち物確認を済ませ、二階の自分の部屋から一回のリビングへと降り、リビングでバタバタと家事をしている母親、斎藤加奈子に、あいさつをした。
「おはよう。隆正」
母は息子に明るい声で返す。
今はまだ六時半、学校に行くまで時間は十分にある。
隆正はかなり早起きなほうだ。目覚めもかなりいいほうだと、自分でもそう思っている。
隆正はいつも自分が座る席に座った。
テーブルには母が用意した、朝食があった。
「いただきます」
隆正は言い飽きたかのようにボソッと言い、食べ始めた。
隆正は、なんだか静かだな。そう思い、テレビのリモコンのスイッチを押した。
テレビをつけるとちょうどニュースがやっていた。
最近、ここ日本も物騒なニュースが増えてきたな。なんとなくそう思った。
隆正は朝食を終え、歯を磨き、顔を洗い、荷物を持った。
時刻は七時になっていた。
「行ってきます」
隆正はそういい、行ってらっしゃいという母の言葉を背に聞きながら家を出た。
隆正が通う高校は家から近いため、徒歩での通学だ。
やっぱり朝の空気ってきれいでいいな隆正はそう思いながら学校へと向かった。
学校へ着き、靴を履き替え、教室へと入った。
自分の席に座るや否や
「よ! 隆正! 今日も早いな!」
友人の神田祐樹が話しかけてきた。
「お! おはよう!」
クラスで唯一、アニメ好きで話が合った隆正のたった一人の親友だ。
「なあ、朝ニュース見た?」
祐樹は隆正に聞いた。
「見たけど?」
「地震……九州で震度六弱だって……結構被害出ているらしいよ」
「いつあったの?」
「今日の早朝らしいよ。五時くらいだってみんな寝てただろうし大変だよね。津波は起きなかったらしいけどね」
「へぇ……最近多いね」
隆正たちが住んでいるここは高知県、確かに九州から近いが、どこか他人事のような、そんな感覚が隆正にはしていた。
そうこういろいろと話しているうちに、あっという間に授業開始の時間となった。
授業では、地震の話もあった。朝から祐樹と地震について話していたからか、いつもより内容に集中することが出来た。
昼食を終え、五時間がもうすぐ始まる……そんな時だった。
突如地面が揺れた。
日本人として、それが地震だとすぐわかった。慣れているせいかあまりパニックにはならない。まあそれが危険だとよく言ったりもするが。教室に生徒たちのスマホから緊急地震速報の警告音が鳴り響く。
揺れがどんどん強くなっていく。
「震度五強だって!」
クラスの誰かがそういったと同時に突き上げられるような感じで激しく地面が揺れた。
避難訓練で学んだようにみんな机の下に隠れている。
震度三くらいだったらみんな机の下に隠れたりしないだろう。
だが皆は恐怖を感じていた。今まで感じたことのない揺れに皆の顔が引きつっている。
「震度七だって」
震度七……この言葉に恐怖以外の感情を感じたものは誰一人いなかった。
すると教室のスピーカーから放送が流れた。
「地震です。皆さん、机の下に入り、頭を守ってください」
もうすでにしてるわ! みんなそう思ったが、放送している先生の声がわずかに震えており、それもまた、クラスの皆の恐怖を駆り立てた。
ウーーーーー
町内放送が窓の空いた外から聞こえた。
津波警報が発令されました。該当の地域にお住まいの方は今すぐ、高台のほうへ避難してください。
そう、皆の耳に入ってきた。
みんなは恐怖で騒ぎ、もうパニック状態へと陥っている。
すると揺れが収まってきた。
担任の先生がよろけながら教室へと入ってきた。
揺れは収まった。
「皆さん津波警報が発令されました。今すぐ、外に出てください。避難します! 訓練を思い出して!」
みんなが廊下に並んだ。早く行こうよ!
そんな声が聞こえてくる。
「落ち着いてください。焦ると二次被害が出る恐れがあります」
先生は皆を落ち着かせようと奮闘している。
「ねぇ……あれ……」
「うそだろ……」
皆が廊下の窓に集中する。
そこには、車、家屋を巻き込みながら迫ってくる並みの様子が写っていた。
まさに地獄絵図というにふさわしい情景だった。
「今すぐ屋上に避難してください!」
隣のクラスの先生がそう叫ぶと同時に皆屋上へと走りだした。
「走らないで!」
先生たちは注意するも、冷静さを失いパニックになっている皆の耳には入っていない。
皆はどんどん屋上へと向かい、階段を駆け上がっている。
屋上の扉付近では、皆が集まり、渋滞となり、入れず押し合いが起こり、今でも事故が起こりそうな状態へとなっている。
そんな様子を階段下で、隆正と祐樹は見ていた。
津波が怖くないわけではない階段のあまりの惨状に体が動けなくなっているだけだった。
「あっ! スマホ忘れた」
祐樹が言った。
「ちょっと取ってくる」
「おい!」
避難訓練で言われている戻ったらいけないってことを忘れたのか? 隆正はそう思った。
隆正は祐樹の後を追おうとした。
すると下の階からほかの学年の人たちが昇ってきた。
「おい、何やってんだ?」
「津波が一階まで来てるんだぞ!」
隆正はなだれ込んできた人たちに流され、階段上まで昇らざるおえなくなった。
隆正は祐樹との距離がどんどん離れていく。そんな感覚が明確に感じ取れた。
先生が生徒を誘導していき、何とか屋上へスムーズに皆が出ていけるようになった。
隆正もその流れにしたがわざるおえなかった。
隆正は屋上へと出た。
屋上に出た先生がクラスで別れて並ぶように指示をし、列を組んでいっている。
隆正は周りを見渡し、屋上の扉から出てくる人々へ目を通していく。
祐樹の姿はない。
そうこうしているうちに屋上から出てくる人の波は無くなった。
皆が列を作り、先生が人数を確認していく。
隆正は自分の担任の先生がすでにもう十回以上確認を繰り返していること、顔が明らかにこわばっていることに気づいていた。
隆正はゆっくりと、担任の先生のもとに近寄った。
生徒、先生たちから注目が集まっているのを隆正は感じた。
「祐樹がスマホを忘れたって教室に戻って、それから祐樹の姿を見ていません……」
祐樹は、先生たちや生徒の目から光が消えたかのような感覚を感じた。
祐樹は皆から人気があり、先生からの人望も大きかった。
こんな僕にも優しくしてくれた祐樹だ。皆が悲しまないわけないよな。隆正はそう思った。
隆正は別に性格が悪いわけじゃない。だが、中学の頃にいじめを受けた影響で、自己肯定感が極端に低くなっているのだ。
その後先生たちは集まり、救助が来るまで屋上で待機することが決まった。
非常食は先生たちで担当が決まっていたようで、先生たち全員が背負っていたバッグの中からいろいろな避難食が出され、翌日、救助ヘリが来るまで、困ることはなかった。
その後、被害のない、別の避難所までヘリで送られ、避難生活を送った。
隆正の母親は、そこで合流でき、母の無事を知れ、隆正は安堵した。
数日後、波が完全に引き、戻ることができた。
戻り、隆正が見た町の様子はまさに、地獄絵図というにふさわしい状況だった。
いまだに祐樹は見つかっていない。
ニュースでは死者の数が日々、更新されていく。
隆正は自分の家の様子を見るため、一人家の場所へと向かった。
その道中でのことだった。
隆正はふと自分の上空に視線というか気配を感じた。
隆正はふと、そちらを見た。
そこには一本の木に枝に何かついているのが視認できた。
そのついているものが木の枝に刺さっていること、それが人であることを認識するのに、脳はそう時間を要しなかった。
だが、唯一脳が理解を拒んだことが一つだけあった。
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