災害の痕跡

みかん

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風の脅威

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 中村智一は、目を覚ました。
 横になっていた体を起こし、ベッド下にあるスリッパをはいて洗面台へと向かう。
 水道から出る冷たい水を思い切り顔に当てた。
 意識がしっかりしてきた智一は、すでについていたテレビに流れているニュースへと視線を向ける。
 ニュースの内容は智一が住んでいる地域に対する竜巻注意報の内容だった。
 智一は食べ終わり、食器をキッチンのシンクのほうに置き、学校の準備のため部屋に戻ろうとした時だった。
 智一の母がリビングのほうに来て智一に言った。
「今日、竜巻警報が出ているから学校、休みらしいよ」
 突如入り込んできた本日学校休みという内容に智一はテンションが上がった。
 智一は部屋に戻り、ベッドに寝転がり、スマホを手に取り、電話を掛けた。
 電話相手は、智一の友人の松本慎二だ。
「おう! 学校休みなったな! どうする? カラオケでも行く?」
「遊び行くってカラオケ開いてんのかよ?」
 慎二は言った。
「おう、さっき確認したら営業中だったぜ」
「まじか?」
「おう!」 
 こうして智一と慎二は遊びに行くことにした。
 智一は母が見ていない隙を狙って家の外へと出た。
 智一は慎二の家へと向かい始めた。
(やっぱいつもより風強いな……)
 智一は心の中でそう思った。
 木がきしむ音が智一の耳へと入ってくる。
 すると雨が降り出した。
 智一は傘を持ってきていなかったため、入って慎二の家まで向かった。
 無事智一は慎二の家まで着いた。
 スマホで着いたぞと智一が慎二へ連絡すると、慎二が玄関のドアを開け、智一を迎え入れた。
「慎二……親は?」
 慎二の部屋に入るや否や智一は慎二に聞いた。
「ん? ああ、仕事。台風なのに大変だよね~」
 慎二は自分には全く関係ないかのように言った。
 二人は持ってきたゲーム機で遊ぶことにした。
 一時間ほど遊んだ後、二人はゲームに飽きてきた。
「カラオケ行きたくね?」
 慎二は言った。

「行きますか! カラオケ!」
 智一はそう言い、二人は家を出た。
 雨風は智一が慎二の家へ向かった時よりひどくなっていた。
 すると智一の電話の着信音が鳴った。
 スマホの画面を見ると、智一の母からの電話だった。
 智一は電話を無視することにした。
 傘を差し、風に吹かれながらカラオケへと向かっているその道中でのことだった。
 慎二が何かに気づき、指をさした。
 智一はその慎二がさしている指の先のほうを見た。
 そこには建物、車を巻き込みながら迫りくる竜巻の姿があった。
 二人は急いで逃げようと振り返った。
 すると、幸いにもすぐ横に地下駐車場があることに気づいた。
 二人はそこに一目散に入った。
 何とか二人とも無事、駐車場内に入ることができた。
 慎二はニュースを見てみようとスマホを開いた。
 だが、電波が届かず、見れなかった。
 智一も同じだった。
 三十分ほどが経った。
 雨風は一向に良くなっていない。
 むしろなんだか強くなっているそんな気もする。

 すると、妙な物音がすることに二人は気づいた。
 物音のほうに駆け寄る。
 その物音の正体はすぐに分かった。
 駐車場内に水が入ってきている。
 すると、携帯の電波がつながった。
 ニュース速報が流れてきた。
 そこには、川が氾濫し、浸水したという内容が書かれていた。
 二人はここだとやばいと思ったが水流のあまりもの強さに奥へと逃げる以外選択肢がなかった。
 二人が奥へと逃げてもなお、水は絶え間なく入ってきている。
 二人の足まで水が浸かってきている。
 すると二人は入ってくる水の勢いが弱くなってきていることに気が付いた。
 今しかない。二人はそう思った。
 二人は顔を見合せた。
 二人は出口へと進み始めた。
 一歩、一歩慎重に……
「あっ!」
 慎二の足がもつれた。
 慎二の体は前方へと倒れこんだ。
 あっという間に慎二は奥のほうへと流された。
「ともかずぅぅたすけてぇぇえ」
 そんな叫び声が智一の耳へと入ってきた。
 智一は後ろを振り向くことができない。今歩みを止めれば慎二と同じように流され、助からなくなってしまう。そう正確に智一の脳は理解していた。
 智一は何とか柱につかまりながら、外に出ることができた。
 智一は隣の建物へとなんとか入り、階段を駆け上がり、屋上へと出た。
 智一が屋上から見た景色はまさに地獄絵図だった。
 建物と車が水に浸かり、人の気配が全くしていなかった。
 その後しばらくした後、救助ヘリが来て、智一は助けだされた。

 翌日、救助活動が始まり、慎二が遺体で発見された。
 そして後日の専門家の研究により、竜巻とともに台風も発生していたということが判明した。
 避難勧告が出されてからは、住民の避難はスムーズだったそうだ。
 この台風と竜巻による被害は死者一名というかたちを残して幕を閉じた。
 智一はというと注意報が出されているにもかかわらず遊びに誘い、慎二を死なせてしまったという後悔の念に駆られる日々を歩み続けることになってしまった。
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