異世界探検記

秘密 〜負担と責任〜

　その後、四人は村長の家を訪問した。
　ヒロトたちは、受付の女性に西側のことについて聞いたこと、そしてその時、激しく動揺していたことを話した。
「やっぱり受付の女性は、何か知っているのではないかと……」
　ヒロトが村長にそう言うと、村長はしばらく無言になった後、話し出した。
「昔、西側には原子力発電所があった。でも、核戦争が始まり、それによって壊されてしまった。その周辺、ここから西側一帯は、放射能が広がり、ここから西側では多くの人が……亡くなった……そして、残された日本の土地が、この町だけになった……ということです。この町以外の土地は核戦争で更地になり、さらに放射能により汚染された……この現実を残された皆は受け入れたくなかった……そして自然に立ち入り禁止という形でなかったことになり、話をすること自体がタブーとなったのです。あと、魔物の出現の影響で隠蔽しやすかった……ってのもありますね」
「どうしてそのことを黙っていたのですか？」
　ユンセルは村長に詰め寄った。
「それは絶対、このことを話したら西側に行くと思ったからです……」
「もちろん行くよ」
　ユンセルは言った。
「絶対にだめだ！」
　村長は立ち上がり、言った。
「自分たちもただ考えなしに行くのではない」
　ヒロトは言った。
「どうするの？」
　タクは困惑した顔でヒロトの方を向いた。
「タクの力も必要だ」
「え？」

「作戦は、こうだ。まず、カナのガード魔法で全員の周辺を囲んで周辺の環境から守ってもらう。荒廃しているらしいし、原子力発電所となると、爆発だったり、火が出ている可能性もある、そこをユンセルの氷魔法で対応してもらう……そしてタクの球体生成能力で、放射性物質をまとめていってもらう。そしてそのままこの鉛のボックスに入れてくれ、鉛は放射能を遮ってくれるからな……」
「でも、その箱は誰が持つの？」
　タクが聞いた。
「もちろん、俺が持つ」
　ヒロトは言った。
「そうか、お前、力持ちだったな」
　ユンセルは言った。
　そして全員納得した。

「それで、受付の女性なのだが……」
　ヒロトが言うと、村長が口を開いた。
「その女性は……わしの孫のハルミだ」
「え？」
　四人は驚愕した。
　村長は話を続けた。
「わしの娘は、早くして亡くなったんだ……だから、孫だけは守りたかった……でも、ある時、ハルミは、西側の状況を知ってしまった……それは政府側のミスだった……でも、ハルミは殺されそうになった……そのところをわしが情報漏洩を防ぐことに全責任を背負うと言い、なんとか見逃してもらったんだ……だから……ハルミは、そのことを守っていただけなんだ……」
　ここまで話すと村長は口を閉ざした。
　四人は、村長の話を聞き、納得した。