転生?いいえ。天声です!

Ryoha

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── 1章 アルト編 ──

013.どうやって死を回避する?

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 この感じだと信頼回復は時間がかかるに違いない。

 それよりもアルトが死なないようにすることが重要だね。
 一旦、信頼回復は後回しにして今できること、前回できたことをできるようにするところから始めることにする。

 と言っても念話くらいだろうか? アルトに念話を覚えてもらうのは今後のためにも必要だと思う。

『アルトさん、少しいいですか』
「なんですか? あと、もうアルトでいいですよ。害する気も無いみたいですし」
『じゃあアルトちゃ──』
「殺しますよ」

 何やってんだわたし。バッドコミュニケーション! 調子に乗るな! ふざけている場合じゃないだろう!

『ごめんなさい。アルト。わたしのことはセイって呼んで?』
「はい。セイさん」

 とりあえず話くらいは聞いてくれるみたいだと、ひとまず安堵する。

『それでちょっとお願いなんだけど、念話を覚えてくれないかな?』
「念話ですか? それはなんですか?」
『わたしの技能スキルなんだけど、今わたしがやってるみたいに声に出さないで思考を届けることができるんだ。心の中で思ったことをそのまま相手に届けるみたいな感じで。これをアルトにもやってもらいたいんだけど?』
「それになんの意味が?」
『今後役に立つと思うから』
「……まあ、興味もあるのでやってみます」
『ありがとう!!』
「……そんなに嬉しがられると調子が狂います」

 一度やると言わせてしまえば、生真面目なアルトのことだからきっと念話を習得してくれるだろう。

 その間にわたしは他にすべきことを考えようと思う。
 前回と同じ展開を踏むとまたアルトが死んでしまう展開になりかねない。

 まずは、前回の反省だ。アルトが死んでしまった一番の原因。それは多分わたしにある。

 まず一つ目としてもしわたしがアルト視点に固執して横着していなければ、もし俯瞰視点でアルトを見ていれば、迫ってくるフォレストリザードに気がつけたに違いない。気がつけていればアルトに注意するように指示を出すことができていたはず。完全にわたしの判断ミスだ。

 他にも原因を挙げるとしたら、アルト達〈アークライト〉のメンバーがぎりぎりの戦いをしていたことも挙げられるだろう。
 これは一見どうしようもないのでは?と思うかもしれないが、わたしには〈天授〉がある。アルトに何かしらの技能スキルや魔法、聖遺物を与えていれば戦いが楽になった可能性は十分にある。これもやることを怠ったわたしのミスだ。

 過去の自分をぶん殴りたい気持ちになるが、今はそれを言ってもどうにもならない。

 考えたいことは他にもある。それはフォレストリザードはどこから出てきたのかということだ。六体いたフォレストリザードのうち一体はアルトの魔法で黒焦げになって死んでいたはずだし、二体はアルトが引きつけていた。そして残りの三体はセイソン、ノーア、アリアが一体ずつ受け持っていたはずだ。
 それなのに一体がアルトに向かって飛び込んできた。新しく一体が追加で参戦してきたのでは?と思うかもしれないがそれはない。アルトがフォレストリザードを引きつけたときに目視で確認済みだから。

 だとすると、可能性は……二つくらいかな。

 一つ目は、三人との戦いから抜け出したフォレストリザードがアルトの方に向かってきたという可能性。思うにこれが一番可能性が高いと思う。
 ただ、そうだったとして疑問が残る。〈アークライト〉のメンバーの誰かがフォレストリザードを逃してしまったとして、なぜアルトに注意喚起しなかったのかということだ。
 意図せず逃してしまったのだとすればアルトに伝えるのが普通ではないだろうか? それがなかったのが気にかかる。意図的に言わなかったのではないかとすら邪推してしまう。

 そして二つ目。これはあって欲しくないパターンだけど、〈アークライト〉のメンバーの誰かが意図的にフォレストリザードをアルトにケシかけた場合だ。
 意図してやろうとすれば、アルトに近づくことでわざとフォレストリザードをアルトにぶつけることができるかもしれない。なぜわざわざそんなことをするのかというところと言われると説明はできないが可能性として残しておいた方がいいだろう。

 どちらにせよ、〈アークライト〉のメンバーはあまり信用してはいけないのかもしれないね。

 では、それを踏まえてどうするのか?
 もちろん、わたしの俯瞰視点化と〈天授〉の付与は行う。それに加えて何をするかだね。

 まず考えられることは〈アークライト〉のメンバーからアルトを遠ざける?
 これは無理だと思う。今のアルトのわたしへの信頼度ではそれを実行させることは不可能だろう。

 ならそもそも〈アークライト〉がピンチに陥らならないように誘導する?
 前回はアルトがギリギリのところで大量のフォレストリザードを相手にしたから、意表をつかれて落とされてしまった。そうでなければアルトが崖から落ちて死ぬことはなかったはずだ。
 そのためにフォレストリザードの群れを〈アークライト〉だけで討伐することを避けるようにアルトを誘導する?

 現状、アルトはフォレストリザードが一体だけだと思っているはずだ。それを複数体いると証言して貰えばもしかすると……。いやだめかもしれない。そもそも信じてもらえるかどうか怪しいし、もし信じたとして真面目なアルトが報告を曲げることはしないのではないだろうか。

 なら、あえて今まで通りの展開を踏んでみるのはどうだろう? 〈天授〉で技能なりなんなりを取得すれば、同様の展開を踏んでもなんとかなる可能性もある。
 ……やめた方がいいかな。展開が読めなくなるより読めた方がいいのかもしれないが〈天授〉頼りなのが不安すぎる。

 それなら、ダメもとでアルトにフォレストリザードが複数体いることを証言してもらう方がまだいいだろう。

『アルト』
『なんですか?』
『フォレストリザードを見たと思うんだけど?』
『はい。見ましたけど?』
『あれって実は複数体いるんだよね。それもかなりの数』
『そうなんですか!? 証拠はありますか?』

 意外にも信じてくれた。でも証拠か。証拠はない。そもそも未来の出来事だし。

『証拠はないけど』
『そうすると、困りましたね。一体と複数では脅威度がかなり変わります』
『そうだね』

 知っている。なぜならその脅威にさらされた張本人だから。

『しかし確証がないとなると報告するときに支障が出ます。万が一にも虚偽の報告をするわけにはいかないですから』
『そうだよね。忘れてくれても──』
『なので確認しに行きましょう』
『えっ?』

 アルトが歩いていた道なき森の道を引き返して行こうとする。
 これは予想していなかった。いや、アルトの性格から言って予想すべきだったんだけど、そこまで頭が回らなかった。

『今から戻ると帰りが夜になるよ。危険だからやめよう?』
『冒険者に危険はつきものです。それにフォレストリザードの件が本当だとすると街が危険かもしれないです。嘘じゃないんですよね?』
『もちろん。嘘じゃないけど』

 嘘じゃないけど、わたしの一番の目的はアルトの安全を確保することだ。このまま行かせてしまうのは本末転倒になりかねない。
 せめて、アビスファイアがあれば、いや、アビスファイアは取得できるのか。

『ちょっと待って!』

 わたしは少し考える。
 今にもアルトは戻ろうとしている。おそらく止めることはできないだろう。
 それなら、天声ポイントは惜しいがせめてアビスファイアだけでも取得して使えるようになってもらおう。
 ……それにしてもわたしはアルトを誘導するのが下手すぎではないだろうか?

 わたしは〈天与〉を発動する。

<供与する技能、魔法または聖遺物を選択してください>

 アビスファイアを選択。

<天声ポイント10ptの消費を確認しました。〈天与〉を開始します……完了しました>

 これで余程のことがない限りフォレストリザードに負けることはないだろう。

『よし! いくなら行こうか!』

 アルトは頷いて歩き出した。

 しかし、その歩みはすぐに止められた。

「どこにいく?」

 そう言うノーアの声に呼び止められたからだ。
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