転生?いいえ。天声です!

Ryoha

文字の大きさ
22 / 96
── 1章 アルト編 ──

021.植物の城壁

 魔法の練習から一夜明け、アルトたちはノーアを除く三人でダンジョンの探索を再開していた。ちなみにあのあと「神への祈りをイメージする」方法でホーリーヒールを試してもらったけど、うまくイメージできないみたいで発動しなかった。
 セーフ! いやアウトだって? そうですよ。アルトの貴重な時間を無駄にしました。ごめんなさい。

 道中はキラーラビットやゴブリン、シルバーウルフなどが現れることはあったが特に問題なく倒している。あれから新種の魔物も出てきてはいない。

 道を抜けると魔物の死体が横たわっていた。傷がほとんどついていないシルバーウルフの死体だ。火傷痕はあるので魔法で倒したのかもしれない。

「あれ……。 魔石回収してないわよね……」
「多分そうだな。……しかも1体じゃねえみてーだ」
「これじゃあまた魔物化しちゃうじゃない」

 アリアが不機嫌を隠す様子もなく解体をして魔石を拾い始める。……わかっていないのはわたしだけみたいだね。

『アルト。アリアの言っている意味わかる?』
『魔物の死骸の魔石を拾わないでおくと、魔物が復活することがあるんです。なので倒した魔物の魔石は回収することが冒険者ギルドで規定されています。回収してしまえば復活しませんから。特に魔物排出型ダンジョンでは魔物を氾濫させないという目的もあるので回収するのは絶対必要なことですね』

 なるほど。だからアリアは不機嫌になっているのか。でもなんで回収したら復活しないんだろう。そう思ってアルトに聞いてみると知らなかった。それが当たり前になっていて疑問にすら思わなかったらしい。不思議だ。

「あいつらかしら?」
「多分そうだろうな。他のパーティーどもは別の方向を探索してる。同じ方向を探索しているとしたら〈黒狼の影〉くらいだろ」
「何考えてるのかしら?」
「回収するよりも先に進むことを優先してるんじゃねえか? もしかすると魔物が復活したら他の冒険者を足止めできてラッキーくらいに考えてるかもしれねえけど」
「だとしたら悪質ね」
「そうですね」

 そのとき、アルトたちの進む方向で何かの咆哮が聞こえた。一瞬の沈黙を経て叫び声や悲鳴がこだまするように響いてくる。

「急ぐか?」
「そうね。不本意だけど。他の冒険者パーティーの可能性もなくはないし」
「急ぎましょう!」

 アルトたちは急いで叫び声のする方へ向かっていった。


 ◇◇◇


「ここ、かしら?」
「そうだな。悲鳴は聞こえないが吼え声はまだ聞こえてくる」

 アルトたちはダンジョンの森の中を探索していたはずだ。しかし目の前に広がっているのは、植物でできた檻。巨大な植物の城壁のようなものだった。
 その城壁は、繁茂した葉や花が絡み合ってできており、蔓が絡み合ってまるで植物たちが力を合わせて築き上げたように見えた。高さは十数メートルにも及び、その壁の厚さは隙間から光を通さないほどには分厚く見える。

「とりあえずこの植物の壁を壊さなきゃな。アリア。行けるか?」
「やってみるわ」

 アリアが魔法を発動するために精神集中を始める。
 わたしは植物の壁に〈天眼〉を発動した。

────────────────────
 名称:ヴァインプリズン
 魔物によって形成された植物の蔓の牢。獲物を中から逃がさないようにするために生成される。自動修復機能があり、破損やダメージを受けた部分は、植物の成長力によって素早く修復される。
────────────────────

 この中に冒険者が捉えられているのは間違いなさそうだ。しかもアリアの魔法で燃やそうとしても修復される可能性がある。

『アリアの魔法でも壊し切れないかもしれない。ホーリーレイの〈付与〉の準備をしておいて』
『わかりました』

「いくわ! ファイアジャベリン!」

 炎の槍が植物の壁に突き刺さる。その瞬間、ヴァインプリズンが激しく揺れ、燃え盛る炎が植物の蔓に焼けた穴を開ける。鶴の壁の厚さは5メートルはあろうかというくらい厚かった。さらに炎が燃え盛る中から蔓が伸び出し、炎を今にも消火しようとしている。

「まずい! 穴が閉じるわ!」

 アリアがそういうとほぼ同時にアルトが魔法を自身の長剣に付与する。

付与エンチャントホーリーレイ! ぼくが道を開けます! ついてきてください!」
「わかった! 突っ切るぞ!」

 まだ煙が立ち込めているが急速に再生が始まった。アルトが光の剣を構えて走っていく。焼けた蔓や煙に立ち向かいながらヴァインプリズンの中へと入り込む。迫ってくる蔓を懸命に切り裂きながら前へ前へと進んでいく。

 抜けた! そう思った先にあったのは木を生やした小さな島?とその近くで倒れている冒険者たちの姿だった。
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。