転生?いいえ。天声です!

Ryoha

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── 1章 アルト編 ──

046.ドラゴンオブアビススケイル

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 ダンジョンの扉が閉まる音が響き渡った。

 アルトは事前にホーリースパークとアビスファイアを付与した双剣を、ノーアはアビスシャドウが付与されたミスリルの剣を持ち部屋の中央へと向かっていく。

 目の前には闇を纏った巨大なドラゴンが一体、アルトたちを睨め殺すように見つめている。
 ドラゴンの体は漆黒の鱗で覆われていて禍々しく鈍い輝きを放っている。そのスカイブルーの瞳は怒りを伴っていてすぐにでもアルトたちを潰そうとしているように見える。

────────────────────
 種族:ドラゴンオブアビススケイル
 冥府のエネルギーを纏うドラゴン型の魔物。推定SSランク。冥府のエネルギーを自在に操り、その攻撃は敵を肉体的にも精神的にも蝕む呪い状態にする。冥府のブレスは受けたものを一瞬で灰とかすだけの威力がある。
 体に纏わりつくエネルギーが治癒力をあげ、常時肉体を再生、回復する。冥府の吸引力によって魂を吸収し魔力を回復する。
 影や闇の中を自由に行動、瞬間移動し敵の攻撃をかわし急襲する。その冥府を纏った攻撃は抵抗力を貫通しダメージを与える。
 深淵の結界を展開し攻撃を一定時間無効化することができる。
 暗闇を操り敵の動きを妨害し、周囲の暗黒を深めることで視界を奪い去る。
 〈冥府を纏うドラゴンの眷属〉を召喚し共闘して敵を追い詰める。
 弱点は聖属性。
────────────────────

 わたしは目の前の竜、ドラゴンオブアビススケイルの詳細を確認した。強い。攻撃も防御も隙がない能力構成だ。しかも冥纏龍ドラゴンオブアビススケイル一体であっても手に負えないくらいの強さなのに、さらに眷属も召喚してくる。弱点が聖属性であることだけが唯一の救いだ。

 後ろでは黒いローブに身に包んだアルト似の青い瞳の少女がぼんやりと虚空を見つめて佇んでいるが今は冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルに集中すべきだ。セリスにかまっている暇はない。やつを倒してからセリスを救えばいい。

「セリス!?」
『ドラゴンに集中して!! あいつの弱点は聖属性! ブレスと影移動をしてくる!』

 わたしは最低限の情報をアルトに伝えていく。しかし全ての情報を伝えるにはあまりにも時間が足りなかった。

 冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルがブレスを放った。あまりに禍々しい漆黒のブレスだ。そのブレスは余波で地面を抉りながらアルトに迫っていく。

「ホーリーバリア!」『ホーリーバリア!』

 即座にアルトが二重で光のバリアを展開する。ブレスが1枚のバリアを貫通し2枚目のバリアを溶かす。勢いが弱まったブレスをアルトがかわそうとするがその脇腹を抉ってしまう。冥府の呪いの侵食が始まる。

『アルト!?』
「大丈夫です! ホーリーヒール!」

 即座に回復魔法を唱えた。徐々に傷が回復していく。
 それにしても相当な威力のブレスだ。ホーリーバリアでは相殺しきれないなんて……なんて考えている暇はない。冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルに絡みついている闇が触手のようにアルトに迫っていく。アルトはそれから逃れようと走るが闇はそれを追尾していく。

「ホーリーライト!」

 追尾していた闇の触手が霧散した。聖なる光の浄化が作用したらしい。アルトを包む光が闇の触手を次々に消していき、やがてなくなった。

「ウインドブロウ!」

 ノーアが冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルの後ろに現れて風の拳打を放つ。〈気配遮断〉を使って後ろに回り込んだのだ。そのままアビスシャドウを付与された剣で斬りかかる。それらは冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルにダメージを与えることはなかったがノーアの方に気を向かせることには成功した。

「ホーリーサンクチュアリ!」

 気が逸れている隙に聖域を展開する。聖域は冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルを包み込みその能力を弱体化させる。
 そのまま聖雷を纏った剣で冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルの首元を狙う。

ギャーオー!!!

 冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルが雄叫びを上げる。首は深く裂傷を作り黒い飛沫をあげた。冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルの体に纏う闇がアルトに襲い掛かろうとするが飛び退いて回避する。冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルの体がみるみるうちに回復していく。やはり生半可な攻撃では倒しきれないのか。アルトは回復していくのを横目に見ながらノーアの方に駆け寄っていく。

「ウインドヴォーテックス!」「〈付与〉ホーリースパーク!」

 発動したノーアの最強魔法にアルトが付与を施した。逆巻く巨大な台風が聖なる雷をはらんで冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルを飲み込んでいく。台風が冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルを完全に包み込んでその姿を隠した。これならいけるか?

 聖雷の台風が晴れていく。黒い影が佇んでいる。これでも倒しきれないのか。
 半透明の黒いバリアを張り巡らせた冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルが姿を表した。そうか。結界を張り巡らせて魔法を防いだのか。

 冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルの周りに黒い渦が5つ出現する。そしてその中から龍仮面の少女冥府を纏うドラゴンの眷属が立ち現れた。その数5体。それはアルトたちと冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルを隔てるように立っていたかと思うとそのうちの一体がいきなりわたしたちの眼前に現れる。

 しまった! 影移動を使われた!

 ノーアが瞬時に気がつき斬撃を加えようとする。しかしその前に龍仮面の少女冥府を纏うドラゴンの眷属の手刀がノーアを貫く。ノーアが「コフッ」と空気が抜けるような声をあげ、体をくの字に曲げながらその体を穿たれている。どくどくと血が流れていくのが見える。龍仮面の少女冥府を纏うドラゴンの眷属が徐にノーアを払い捨てる。ノーアが地面に転がっていく。

「ノーアさん!!」

 アルトがノーアに近づこうと必死で近づこうとする。その間にもノーアを貫いた龍仮面の少女冥府を纏うドラゴンの眷属がアルトの前に現れる。アルトがノーアの元に行かせないような位置取りだ。

「邪魔をするな!!」

 アルトが平時では絶対にしないような口調で声をあげ、薙ぐように斬撃をくわえようとする。龍仮面の少女冥府を纏うドラゴンの眷属はそれを飛び退いてかわす。

『ホーリーライトを使って!』
「ホーリーライト!」

 アルトの周りを聖なる光が包み込む。これで影移動でアルトに近づくことはできないはずだ。案の定、龍仮面の少女冥府を纏うドラゴンの眷属たちはアルトの方へ影移動を使わずに向かってくる。

「ホーリーヒール!」

 ノーアが回復の光に包まれる。お腹に空いた穴が少しずつ元に戻っていく。
 なんとか間に合った。

『アルト! 後ろ!』

 ノーアを攻撃したのとは別の龍仮面の少女冥府を纏うドラゴンの眷属がアルトの後ろに立っていた。それがゆっくりとアルトに向かって手を伸ばしていく。

「タス──」
「〈付与〉ホーリースパーク」『〈付与〉ホーリーレイ』

 アルトが自身の右手に持つ剣の付与を上書きした。振り向きざまに何か言おうとした龍仮面の少女冥府を纏うドラゴンの眷属に雷光を纏う剣をふり払う。その纏う雷光は剣先よりもゆうに10メートルは長く伸び、後続の3体ごと胴体を切り払う。4体が黒い煙となって消えていく。

 ……二重詠唱を応用した二重の付与!? まるでプラズマをはらんだレーザーを振っているみたいだった。あの龍仮面の少女冥府を纏うドラゴンの眷属をまとめて倒すなんてかなりの威力だ!

 最後の一人がアルトに向かってくる。それをアルトが雷光を纏う剣で一閃する。龍仮面の少女冥府を纏うドラゴンの眷属が剣撃を弾こうとする腕が消し飛び、その余波で被っている仮面がひび割れ青い瞳が片方だけ露わになる。

ギャーオー!!!

 今まで大人しくしていた冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルがアルトの目の前に現れた。影移動だ。その鋭く尖った影を纏った爪がアルトを襲う。アルトが咄嗟に左の剣で爪撃を防いだ。しかし剣を伝って爪に纏わりつく影がアルトを蝕んでいく。アルトの肌が灰色を帯びていく。呪いの付与?

『呪いを解いて!』
「ホーリーヒール」

 癒しの光が包み込み肌の色が戻る。そのままアルトが右の剣をを振りかぶる。二重の付与をした聖雷の剣だ。冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルが影に潜ろうとする動作をする。しかし潜れない。

「逃がさない」<逃がさないよ>

 冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルの足に剣が刺さっていた。逃げようとするのを察したノーアが剣を投げつけたのだ。付与されたアビスシャドウの行動阻害によって影移動が阻害された。

 アルトの剣が冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルにせまる。いける! 倒せる!

 冥纏龍ドラゴンオブアビススケイルの前に現れて両断された。
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