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── 1章 アルト編 ──
054.ノクターン城塞都市の状況
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「スペイシャルゲート」
アルトたちはアーサーの出した白い扉を通り一軒の宿屋の中に移動した。宿屋の受付らしい。受付をしていた人は白い扉から出てきた3人に驚くこともせずアーサーに礼をとる。
「やあ。部屋は空いてるかい?」
「もちろんでございます。そちらは……いえ、3名様でよろしかったでしょうか?」
店主はセリスの尻尾を見て少し顔をしかめる。しかしすぐに笑顔に戻して対応を続けていく。
「ああ。それとこの二人のことは内密に頼むよ」
「かしこまりました」
アルトたちが訳ありであることはわかっているみたいだけどすぐに部屋へ案内する。案内されたのは想像以上にこじんまりとした部屋だ。王太子がこんなところに泊まっていて大丈夫なのかなと少し心配になってしまうくらいには狭い。
「そういえばアーサーさんはセリスを見ても大丈夫なんですね?」
アルトは寝かしつけたセリスを見ながらアーサーに質問していた。わたしもちょっと気になる。この国の人は亜人獣人を毛嫌いしてるって聞いたからね。
「ああ。ぼくは外交の関係上亜人獣人をみることも多いからね。慣れてしまったよ。それにハモニス教会の中でも勇煌派は亜人獣人も好きなことが多いからね」
「そうなんですか?」
「ああ──」
アーサーによると実はハモニス教会の全てが亜人獣人を嫌っているわけではないらしい。というよりもハモニス教会の総本山があるフルル聖国では獣人亜人も普通に暮らしているくらいには友好的なのだそうだ。それは初代勇者が亜人獣人とともに旅をして友好的な関係を築いていたことが起因しているという。特に勇者の存在を重視する勇煌派は亜人獣人好きが顕著に出るみたいだ。
そういえばノーアも勇煌派だと言っていた。セリスを見ても大丈夫だったのはそういう理由だったんだね。
逆に魔滅派は亜人獣人を重視しないらしい。それはハモニス教会では人族以外が祝福を授からないことからくる。人族だけが祝福を授かることから調和神ハモニスが人族を特別扱いしていると解釈しているらしい。なので魔滅派は魔人族はもちろん、亜人獣人も人族より劣っていると考えているようだ。トロン王国は元々純人国家であったことに加えて魔滅派の数が多数を占めるため、亜人獣人嫌いが加速していったということのようだ。
「それでなぜエレイン様はノクターン城塞都市にいるんですか? 確か魔王国オクアに隣接した都市ですよね?」
「知っているんだね?」
「はい」
へー。魔王国って魔王のいる国だよね? 魔王国とトロン王国の隣国なんだ。てっきりすごい離れた場所にあるイメージだった。
「じゃあノクターンが今魔人族との戦闘の最前線なのは知っているかい?」
「いえ。知りません」
アーサーによるとノクターン城塞都市には魔王国オクアから魔人族が攻め込もうとしているらしい。それをハモニス教会の〈結界術〉の使い手が魔王国との国境付近にある城塞を全てカバーするほどの結界を駆使して都市を守っているのだとか。
それにしてもハモニス教会がここでも出てくる。
何度も煮湯を飲まされたわたしにとっては今更ハモニス教会のいいところを聞いてもね。ほんとかよって思ってしまうよね。
「ハモニス教会に頼りすぎじゃないですか?」
「それを言われると頭が痛いね。王家としてもそれではいけないことはわかっているんだけどね」
魔王国からの国防、そしてエレイン王女の治療。どちらをとっても王家が教会を頼っているという図式になってしまう。
この国に駐在するハモニス教会の聖職者の中でヴァルガンが一番偉いらしい。そして国王も国防と治療の両方を請け負ってもらっている手前ヴァルガンには強気に出れないそうだ。
それって聖職者が政治を握る構図になっているように見えるけど? 大丈夫か。この国?
「話を戻すと、戦闘の最前線になっているノクターンには怪我人が出るから聖女様が常駐しているんだ。継続して治療をしてもらうにはちょうどいいんだよ」
「でもそれだと危険じゃないですか?」
アルトの言う通りだと思う。戦闘の最前線にあたる都市で療養させるのは危ないんじゃないかな?
「それは大丈夫。戦闘とは言っても結界で隔てられた向こう側で行われているからね。今まで結界の中に侵入されたことはないから城塞都市内は安全だ。それに教会側からの要請でね。聖女様の治療を受けさせる代わりにエレインをノクターンの境界で療養させるように言われているんだ。聖女様の負担を少なくするためだと言われると無碍にはできなくてね」
「そうですか。随分と強力な結界なんですね?」
「ああ。セラフィナ嬢はすごい〈結界術〉の使い手だよ。本来ならエレインもセラフィナ嬢に従事するはずだったんだけどね」
アーサーの顔に少し影が差した。しかしすぐにいつもの顔に戻ってアルトに茶目っ気を込めて言った。
「それじゃあぼくは一度王都に戻るよ。実は執務が溜まってしまっているんだ。片付けないと明日のエレインの治療に支障が出そうだからね」
なるほど。王太子様は一度帰るみたいだね。そりゃ、こんな簡素な部屋では寝ないよね。
それにしても執務か。王太子は大変だね。
アルトたちはアーサーの出した白い扉を通り一軒の宿屋の中に移動した。宿屋の受付らしい。受付をしていた人は白い扉から出てきた3人に驚くこともせずアーサーに礼をとる。
「やあ。部屋は空いてるかい?」
「もちろんでございます。そちらは……いえ、3名様でよろしかったでしょうか?」
店主はセリスの尻尾を見て少し顔をしかめる。しかしすぐに笑顔に戻して対応を続けていく。
「ああ。それとこの二人のことは内密に頼むよ」
「かしこまりました」
アルトたちが訳ありであることはわかっているみたいだけどすぐに部屋へ案内する。案内されたのは想像以上にこじんまりとした部屋だ。王太子がこんなところに泊まっていて大丈夫なのかなと少し心配になってしまうくらいには狭い。
「そういえばアーサーさんはセリスを見ても大丈夫なんですね?」
アルトは寝かしつけたセリスを見ながらアーサーに質問していた。わたしもちょっと気になる。この国の人は亜人獣人を毛嫌いしてるって聞いたからね。
「ああ。ぼくは外交の関係上亜人獣人をみることも多いからね。慣れてしまったよ。それにハモニス教会の中でも勇煌派は亜人獣人も好きなことが多いからね」
「そうなんですか?」
「ああ──」
アーサーによると実はハモニス教会の全てが亜人獣人を嫌っているわけではないらしい。というよりもハモニス教会の総本山があるフルル聖国では獣人亜人も普通に暮らしているくらいには友好的なのだそうだ。それは初代勇者が亜人獣人とともに旅をして友好的な関係を築いていたことが起因しているという。特に勇者の存在を重視する勇煌派は亜人獣人好きが顕著に出るみたいだ。
そういえばノーアも勇煌派だと言っていた。セリスを見ても大丈夫だったのはそういう理由だったんだね。
逆に魔滅派は亜人獣人を重視しないらしい。それはハモニス教会では人族以外が祝福を授からないことからくる。人族だけが祝福を授かることから調和神ハモニスが人族を特別扱いしていると解釈しているらしい。なので魔滅派は魔人族はもちろん、亜人獣人も人族より劣っていると考えているようだ。トロン王国は元々純人国家であったことに加えて魔滅派の数が多数を占めるため、亜人獣人嫌いが加速していったということのようだ。
「それでなぜエレイン様はノクターン城塞都市にいるんですか? 確か魔王国オクアに隣接した都市ですよね?」
「知っているんだね?」
「はい」
へー。魔王国って魔王のいる国だよね? 魔王国とトロン王国の隣国なんだ。てっきりすごい離れた場所にあるイメージだった。
「じゃあノクターンが今魔人族との戦闘の最前線なのは知っているかい?」
「いえ。知りません」
アーサーによるとノクターン城塞都市には魔王国オクアから魔人族が攻め込もうとしているらしい。それをハモニス教会の〈結界術〉の使い手が魔王国との国境付近にある城塞を全てカバーするほどの結界を駆使して都市を守っているのだとか。
それにしてもハモニス教会がここでも出てくる。
何度も煮湯を飲まされたわたしにとっては今更ハモニス教会のいいところを聞いてもね。ほんとかよって思ってしまうよね。
「ハモニス教会に頼りすぎじゃないですか?」
「それを言われると頭が痛いね。王家としてもそれではいけないことはわかっているんだけどね」
魔王国からの国防、そしてエレイン王女の治療。どちらをとっても王家が教会を頼っているという図式になってしまう。
この国に駐在するハモニス教会の聖職者の中でヴァルガンが一番偉いらしい。そして国王も国防と治療の両方を請け負ってもらっている手前ヴァルガンには強気に出れないそうだ。
それって聖職者が政治を握る構図になっているように見えるけど? 大丈夫か。この国?
「話を戻すと、戦闘の最前線になっているノクターンには怪我人が出るから聖女様が常駐しているんだ。継続して治療をしてもらうにはちょうどいいんだよ」
「でもそれだと危険じゃないですか?」
アルトの言う通りだと思う。戦闘の最前線にあたる都市で療養させるのは危ないんじゃないかな?
「それは大丈夫。戦闘とは言っても結界で隔てられた向こう側で行われているからね。今まで結界の中に侵入されたことはないから城塞都市内は安全だ。それに教会側からの要請でね。聖女様の治療を受けさせる代わりにエレインをノクターンの境界で療養させるように言われているんだ。聖女様の負担を少なくするためだと言われると無碍にはできなくてね」
「そうですか。随分と強力な結界なんですね?」
「ああ。セラフィナ嬢はすごい〈結界術〉の使い手だよ。本来ならエレインもセラフィナ嬢に従事するはずだったんだけどね」
アーサーの顔に少し影が差した。しかしすぐにいつもの顔に戻ってアルトに茶目っ気を込めて言った。
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