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── 1章 アルト編 ──
062.アルト勇者になる。そして
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「さてアルトよ」
ルミナリス教皇がアルトに問いかける。
アルトはハモニス教会から逃げている身だ。教皇様に会ってしまったこの状況はかなりやばいんじゃないだろうか。
「貴公が聖魔法と冥魔法の両方が使えるということは本当か?」
「両方とも使えます。ですが聖魔力は聖霊様に借りています」
いや。違うんです。聖魔法はもうアルトのものなんです。わたしを聖霊と誤魔化してたツケがここで回ってきた。やっぱりちゃんと説明しておけばよかった。
「ふむ。して技能は?」
「〈全剣技〉です」
「初代勇者の技能ではないか」
教皇様が驚いていらっしゃる。だけど悪い意味ではなさそう。もしかすると大丈夫な流れですか?
「教皇様。発言をよろしいでしょうか?」
テレジアが横から割り込んできた。アルトのことをそんなによく思っていなさそうだったからちょっと緊張してしまう。
「発言を許そう」
「ありがとうございます。アルトさんの聖魔法ですがホーリーヒールとホーリーサンクチュアリを確認しております」
「初代聖女の魔法と2代目勇者の魔法か」
「はい。ですので冥魔法を使えるからという理由で排斥するのは実質不可能かと。もし罰したりしたら勇煌派から反乱が起こるレベルです」
なんかすごい庇ってくれてる。実はちょっと変な聖女だなーと思ってたけど撤回します。テレジアはいい聖女です。
「だが魔滅派のことも勘案しなければならぬ」
「そうですが現在の魔人族は人族を滅ぼそうとする意志はないようなのです。魔王と会いましたが思っていたよりも話のわかる方でした」
嬉々として騎士たちを皆殺しにしようとしてたけどね。えっ? 話を蒸し返すな? すみません。
「しかし、魔人族はハモニス神と敵対している破壊神を崇めている。滅ぼすとまでいくと過剰だが敵意を持つことは仕方がないことなのかもしれん」
「難しい問題ですね」
魔王の恩恵でも出てきたけど破壊神というのが新たに出てきたね。これまで自由神、調和神、創造神と出てきたけど破壊神とはちょっと物騒だ。創造神もセリスのことや〈創造神への嫁入り〉のことであんまりいいイメージないし、ぶっちゃけ自由神ってケイのことだと思うんだよね。この国の神ってまともな神様は調和神しかいないのかな。
「そこでアルトに頼みがあるのだ」
おーっと? 急に会話が戻ってきた。
「なんでしょうか?」
「貴公に勇者になってもらいたい」
「……どういうことでしょうか?」
「なに。簡単なことだ。聖魔法と冥魔法の両方の使い手である貴公が勇者になることで魔滅派の行き過ぎを抑制したいのだ。そのためにハモニス教会で貴公を正式に勇者と認定しようと思う。元聖女と魔王の子供であることも公表してな」
教皇様。知ってたんですね。
「まあ最初は魔滅派の反発もあるだろう。しかしそれも時間が解決してくれる。時が経てば貴公が勇者であることが普通になるだろう。そうなれば魔滅派が魔人族を根絶やしにするという思想を捨ててくれるかもしれん。もちろんそのためにも貴公にはこれから活躍してもらわなければならない。誰からにも憧れられる勇者になってもらわなければならない」
「……教皇様は魔人族に悪感情はないんですか?」
「無論ないとは言い切れん。魔人族と人族の歴史は戦争の歴史だからな。しかしもう手を取り合ってもいいだろうとも思っている。それが調和神ハモニスの意向に合っているはずだと余は思っておる」
なんかでっかい話になってきた気がする。
『アルトはどうするの?』
『わかりません』
「もちろんこれはお願いであって強制するものでは無い。だが勇者になれば貴公が今日まで受けていた弾圧を他の者が受けることがなくなるかもしれん。もしかすると周り回ってトロン王国が純人主義の国ではなくなるかもしれん」
教皇様はずるいな。そんなことを言ったらアルトは頷くしかなくなるじゃないか。
「……わかりました。ぼくでできるのであれば頑張ってみます」
「そうか。やってくれるか! 今代初の現地勇者になるな!」
教皇はその威厳さに似合わない笑みを浮かべている。
でもそっか。異世界から来た召喚勇者はいるみたいだけど現地の勇者はアルトが初になるんだね。これから大変になりそうだ。
『セイさん。ぼく頑張ってみます』
『うん。応援してるよ』
これからもアルトを応援して、支えていきたいね。
<難易度D アルトの章が完了しました。次の保持者に転声します>
<アルトの章が完了したことで天の声の副技がアップデートされました>
そんなアナウンスとともにわたしの視界は暗転した。
……どういうこと?
ルミナリス教皇がアルトに問いかける。
アルトはハモニス教会から逃げている身だ。教皇様に会ってしまったこの状況はかなりやばいんじゃないだろうか。
「貴公が聖魔法と冥魔法の両方が使えるということは本当か?」
「両方とも使えます。ですが聖魔力は聖霊様に借りています」
いや。違うんです。聖魔法はもうアルトのものなんです。わたしを聖霊と誤魔化してたツケがここで回ってきた。やっぱりちゃんと説明しておけばよかった。
「ふむ。して技能は?」
「〈全剣技〉です」
「初代勇者の技能ではないか」
教皇様が驚いていらっしゃる。だけど悪い意味ではなさそう。もしかすると大丈夫な流れですか?
「教皇様。発言をよろしいでしょうか?」
テレジアが横から割り込んできた。アルトのことをそんなによく思っていなさそうだったからちょっと緊張してしまう。
「発言を許そう」
「ありがとうございます。アルトさんの聖魔法ですがホーリーヒールとホーリーサンクチュアリを確認しております」
「初代聖女の魔法と2代目勇者の魔法か」
「はい。ですので冥魔法を使えるからという理由で排斥するのは実質不可能かと。もし罰したりしたら勇煌派から反乱が起こるレベルです」
なんかすごい庇ってくれてる。実はちょっと変な聖女だなーと思ってたけど撤回します。テレジアはいい聖女です。
「だが魔滅派のことも勘案しなければならぬ」
「そうですが現在の魔人族は人族を滅ぼそうとする意志はないようなのです。魔王と会いましたが思っていたよりも話のわかる方でした」
嬉々として騎士たちを皆殺しにしようとしてたけどね。えっ? 話を蒸し返すな? すみません。
「しかし、魔人族はハモニス神と敵対している破壊神を崇めている。滅ぼすとまでいくと過剰だが敵意を持つことは仕方がないことなのかもしれん」
「難しい問題ですね」
魔王の恩恵でも出てきたけど破壊神というのが新たに出てきたね。これまで自由神、調和神、創造神と出てきたけど破壊神とはちょっと物騒だ。創造神もセリスのことや〈創造神への嫁入り〉のことであんまりいいイメージないし、ぶっちゃけ自由神ってケイのことだと思うんだよね。この国の神ってまともな神様は調和神しかいないのかな。
「そこでアルトに頼みがあるのだ」
おーっと? 急に会話が戻ってきた。
「なんでしょうか?」
「貴公に勇者になってもらいたい」
「……どういうことでしょうか?」
「なに。簡単なことだ。聖魔法と冥魔法の両方の使い手である貴公が勇者になることで魔滅派の行き過ぎを抑制したいのだ。そのためにハモニス教会で貴公を正式に勇者と認定しようと思う。元聖女と魔王の子供であることも公表してな」
教皇様。知ってたんですね。
「まあ最初は魔滅派の反発もあるだろう。しかしそれも時間が解決してくれる。時が経てば貴公が勇者であることが普通になるだろう。そうなれば魔滅派が魔人族を根絶やしにするという思想を捨ててくれるかもしれん。もちろんそのためにも貴公にはこれから活躍してもらわなければならない。誰からにも憧れられる勇者になってもらわなければならない」
「……教皇様は魔人族に悪感情はないんですか?」
「無論ないとは言い切れん。魔人族と人族の歴史は戦争の歴史だからな。しかしもう手を取り合ってもいいだろうとも思っている。それが調和神ハモニスの意向に合っているはずだと余は思っておる」
なんかでっかい話になってきた気がする。
『アルトはどうするの?』
『わかりません』
「もちろんこれはお願いであって強制するものでは無い。だが勇者になれば貴公が今日まで受けていた弾圧を他の者が受けることがなくなるかもしれん。もしかすると周り回ってトロン王国が純人主義の国ではなくなるかもしれん」
教皇様はずるいな。そんなことを言ったらアルトは頷くしかなくなるじゃないか。
「……わかりました。ぼくでできるのであれば頑張ってみます」
「そうか。やってくれるか! 今代初の現地勇者になるな!」
教皇はその威厳さに似合わない笑みを浮かべている。
でもそっか。異世界から来た召喚勇者はいるみたいだけど現地の勇者はアルトが初になるんだね。これから大変になりそうだ。
『セイさん。ぼく頑張ってみます』
『うん。応援してるよ』
これからもアルトを応援して、支えていきたいね。
<難易度D アルトの章が完了しました。次の保持者に転声します>
<アルトの章が完了したことで天の声の副技がアップデートされました>
そんなアナウンスとともにわたしの視界は暗転した。
……どういうこと?
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