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── 2章 ミニック編 ──
087.ミニック、奴隷になる
しおりを挟むミニックが奴隷紋をつけられた。やっぱりこれってミニックが奴隷になってしまったってこと?
────────────────────
名前:ミニック
職業:奴隷︎(違法)
状態:隷属(ライル)
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〈天眼〉さんが出しゃばってきた。だけど今はありがたい。職業欄が奴隷に変更されている。かっこ書きで違法になってるけど。多分ミニックが本当は忌子じゃないから合法ではないんだろうね。
それにどうやらミニックは隷属という状態異常?のようなものになっているらしい。これがどんな状態かはわからないけど状態異常なら解くことができるかもしれない。
ミニックに奴隷紋を刻んだライルという男はミニックの父親と別れた後、ミニックを担いで馬車に連れていく。馬車には鉄でできた檻が置かれておりミニックをその檻の中に入れてしまう。
『ミニック!! 起きなさい!!』
わたしはミニックを起こそうと何度も呼びかける。だけど一向に目を覚ます予兆はない。
馬車が走り出した。ライルは檻の隣に座り込んでいる。ミニックの見張りをするみたいだ。馬車はスタリアの街の門を抜けて道を進んでいく。
それにしてもまさか、あの家族がミニックを奴隷に落とすまでするとは思わなかった。そもそも奴隷狩りは違法だと思い込んでいたからミニックが奴隷にされるという考えは頭からすっぽり抜けていた。でもよく考えるとアルトも忌子は奴隷に落とされるといっていたから考えておくべきことだった。
これはわたしの落ち度だ。ミニックの家族たちが弱いからといって警戒を怠ったから。ミニックの周りに注意を向けていなかったから。
その間にも馬車は道を真っ直ぐに進んでいく。
この道は以前にも護衛依頼で通ったことのある道だ。おそらくカタノヴァに向かうのだろう。
それにしてもこのライルという男は何者なのだろうか? わざわざミニックを奴隷にした理由は? わたしは何かヒントはないかと再度ライルを〈天眼〉で確認した。
────────────────────
名前:ライル
種族:人族
職業:ゴダック商会奴隷部門部長
技能:奴隷術
魔法:風
恩恵:─
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さすが〈天眼〉さん。職業欄を追加してくれた。わたしの欲しい情報をきちんと理解してくれている。
なるほど。ゴダック商会ね。ミニックが数日前に護衛をした商人の経営している商会だ。
確かゴダックは〈収納〉を使ったときミニックを商会に勧誘していた。そのとき断ったらひいていたから諦めたのだと思っていたけど、ミニックが忌子だと知って奴隷にすることを企てたのかもしれない。やっぱり〈収納〉を見られたのは失敗だった。
「ここは、どこなのです?」
やっとミニックが目を覚ました。キョロキョロとあたりを見渡し、ライルと目を合わせる。
「よう。起きたか?」
「誰なのです?」
「それを言う義理はねえ。大人しくそこで座ってな」
「ここから出すのです」
「大人しくしてろっていってるだろ」
「っ……がっ……」
ミニックは立ち上がって檻に手をかけたが急に胸をおさえて苦しみだした。奴隷紋から小さな稲妻のようなものが出てミニックを苦しめている。あれが奴隷紋の効果?
「苦しいだろう? 大人しくしていればもうその苦しみを味わわなくて済む。だから大人しくしていろ」
やはり奴隷紋の効果みたいだ。
わたしはヘタリこんでしまったミニックが落ち着いたのを見はからって話しかける。
『よく聞いて? ミニックは奴隷にされてる。だから今は大人しくしてて』
『……奴隷なのです?』
『そう。あの親父に嵌められた。最初からミニックを奴隷にして売り払うつもりだったみたい』
『まさか、なのです』
さすがに家族に奴隷として売られたのは衝撃だったのかもしれない。でも今はそのことを考えている場合ではない。
『とりあえず今は逆らっちゃダメ。逆らったらまたさっきの稲妻がミニックを襲うから』
『わかったのです』
「おい聞こえてるのか? 聞こえてるなら返事をしろよ」
「わかったのです。大人しくするのです」
「おう。わかってるならそれでいい」
『とりあえず、今わたしが知っていることと推測を話すよ? 目の前にいる男はライル。ゴダック商会の奴隷を扱う部門の幹部みたい。多分、今ミニックが奴隷にされていのはゴダックの差金。ミニックの〈収納〉を欲しがったからだと思う』
『そうなのです? 安易に〈収納〉を使ったからなのです?』
『反省は後。それよりこれからどうするかだよ』
『でも、どうすればいいのです?』
そこなんだよね。とりあえずミニックが目を覚ましたのはよかったとして、今のこの状況を打開する方法は特に思いつかない。唯一〈天授〉で技能を獲得してみるのは手かもしれないけどかなり博打がすぎると思う。
『今のところいい方法は思いつかないんだよね』
『……悪魔さんでもできないのです?』
『わたしにもできることとできないことがあるよ。というかできないことの方が多いし。とりあえず向こうの出方をみるしかないかな』
『使えないのです』
『なんだと!』
『……それならこのまま大人しくしてるのです?』
『ふん。そうだね。何かあったら言うから休んでていいよ』
『わかったのです』
ちょっとムカつくけどわたしは何かいい方法がないかもう少し考えるかな。
◇◇◇
「ついてこい。ゴダック様がお待ちだ」
檻から出されたミニックはライルに連れられてカタノヴァにあるゴダック商会の本店に移動した。
ゴダック商会は高貴な雰囲気を漂わせる大きな建物で、正面には二重の扉があり彫刻が施されている。豪華な屋根の先端には金箔で装飾されたアヒルの像が誇らしげに立っている。
ミニックはすぐに本店の中にある一室に通された。そこには案の定、この商会の会長であるゴダックが座っていた。前にも見た狼獣人の奴隷の女の子を侍らせている。
「やあ、ミニックさん。元気にしておりましたかな?」
ミニックがゴダックを睨みつける。
「おやおや、反抗的ですな。ライル。わしに奴隷紋の権限を渡したまえ」
「かしこまりました」
ライルが近づいていってゴダックの手の甲に自分の手の甲をぽんっと当てた。薄暗い光が二人の腕を包み込む。おそらくあれで奴隷紋の権限が移るのだろう。
「これであの小人族はゴダック様のものです」
「それじゃあ試してみますかな」
「っ……ぐっ……」
ミニックが胸に手を当てて腰を折って倒れ込む。ゴダックとライルはそれを冷たい目をして見下ろしている。
「確認した。ライル。もう下がって良いぞ」
「はっ! それでは失礼します」
ライルが敬礼をしたあと部屋から出ていく。
「ミニックさん。今の状況がわかっていますかな?」
「……ゴダックさんはぼくを奴隷にして〈収納〉を使わせるつもりなのです?」
「その通り。さすがですな」
「こんなの間違ってるのです」
「いえ、間違いじゃありませんぞ。なぜならミニックさんは忌子ですからな」
「ぼくは忌子じゃないのです! 魔法も技能も使えるのです」
「それは関係ありませんな。教会が忌子と言えばそれは忌子なのですぞ。そして忌子の人身売買は合法。それがこの国のルールですからな。まあ今日のところは休みなさい。明日から休む暇もなく働かせてあげますからな。ルナ! ミニックさんを部屋にお連れしなさい!」
やはりミニックが忌子だと知っていたから奴隷にしたらしいね。確かに教会が忌子だと判定しているのは痛いかもしれない。
だけど今日のところは働かせられることはないみたい。やはり今のうちに逃げないといけないけどどうすればいいかな?
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