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十八話 炎龍VSリュー
しおりを挟む古傷が無くなったリターナーは、恐らくその場で泣き崩れてしばらくの間身動きの取れない状況になるだろうと予想した俺はすぐにラティアの元を訪れた。
「ラティア、娘の近くにいてやれ」
「これは、大魔王様。それは一体どういう……いえ、そういうことですね。わかりました。大至急娘の部屋に行ってまいりますね」
……今の一言で一体どこまでを理解したのか非常に気になるところだが、すぐに動いてくれようとしているラティアを止めるわけにもいかないので、俺は深く気にするのをやめ、その場からすぐに退散する。
それにしても、ラティアって普通の人間なはずだよな?
ステータスにも特に目を見張るものはなかったはずだが……地頭が相当キレるということだろうか?
忠臣に仕事のできる奴がいるのは非常に有難いことなので、何も問題はないのだが、あのできる女具合は非常にミステリアスで気になりすぎるところだ。
今度ラティアの印象をラティア以外の面子に聞き回ってみるのもいいかもしれないな。
さて、リターナーが行動不能状態になった結果、恐らく朝飯の時間は予定よりも遅れるだろう。
空いた時間を無駄に過ごすような愚行はしない。
俺は、その後すぐに『転移』である場所へと移動した。
◇
辺り一面緑の広がる大地。
俺は今、昨日この世界に来た時にいた草原に一人で来ていた。
その理由は単純で、今の自分の全力がどの程度か把握するためだ。
「『上位炎龍生成』」
俺は、炎龍神イグトリスの加護で得たスキルを用いて、上位炎龍を目の前に生み出した。
体高は控えめに言っても二十メートルはあるだろう。昨日見た炎龍王程ではないにしても、かなりの迫力がある。
すぐに『神の眼』でステータスを確認する。レベルは現時点で六十後半。ステータス値も上位龍ということもあって、人間のレベル六十後半とは比べ物にならない程に強力だ。
「ヴィオオオォォッ!!」
俺に生成された炎龍は、血走った目で俺を見下げながら大きく威嚇の叫び声を上げた。
なぜ、俺に生成されたというのに、俺に敵対心をもっているのかと言えば、それは俺がそうなるように生み出したからだ。
自分の全力を試すのに、自分に絶対服従の炎龍と戦ったのでは意味が無い。
あくまで殺しあい。殺るか殺られるかの生死をかけた戦いでないと、やる意味がない。
「かかってこいよ、トカゲもどきがっ!」
俺はそう言い捨てると、力強く大地を蹴り、炎龍の足元に一瞬で移動する。
俺の全力の移動に炎龍は、反応すらしていない。
恐らく、威嚇だけで俺が戦意を喪失するだろうと油断していたのだろう。
俺はその間違いを正すため、その巨体の土手っ腹を拳で殴りつける。
「ギャブッ!?」
炎龍は、だらしない声を漏らしながら五十メートル程後方に吹っ飛んでいく。
六割程の力で殴りつけただけで、上位炎龍を五十メートルも吹っ飛ばせる自分の力に改めて驚かされた。
「とんでもない身体能力だな……」
「ギィャヤァアアァアッ!!」
自己分析に浸っていると、俺に吹っ飛ばされた炎龍が先程の数倍くらいの大きさの叫び声を上げると、炎のブレスを俺に吐き出してくる。
だが、俺には『完全炎熱耐性』があるため、炎のブレスは無意味に終わる。
「ギィア!?」
ブレスを吐き終わり、俺を焼き殺したと思った炎龍が、無傷の俺を発見して驚いた声を上げる。
俺はここで悟った。
上位炎龍であっても、今の俺のスペックをもって戦えば、雑魚と何も変わらないのだということを。
それが分かってしまえば、先程まで自分の力をどれだけぶつけられるのだろうかとワクワクしていた気持ちは泡のように消え去り、残ったのはやり場のない気持ちだった。
「つまらんな」
俺は一言そう呟くと、この意味の無い戦いを終わらせるため、一つの魔術を発動する。
「『死の宣告』」
その魔術は、雑魚魔物の代表格であるゴブリンを殺した物と同じで、そんな雑魚と同じようにレベル六十後半の上位炎龍も一瞬で屠ってしまえた。
強すぎる力と言うのは、時にこのようなどうしようもない感情を覚えさせるものなのだなと、この時初めて理解した。
死んでしまえば、ゴブリンも炎龍も変わらない。
俺の前では等しく雑魚魔物だった。
だが、この力は俺が望んだ力だ。
圧倒的な力の代償に、戦いに対するモチベーションの全てを無に返されただけのこと。デメリットとしては、低すぎるものだとも言える。
元々別に戦闘狂というわけでもなかった俺は、深く気にすることなく、上位炎龍からドロップした戦利品を『異空収納』にしまう。
「……帰るか」
俺はやることがなくなってしまったので、城に帰るため、『転移』を発動し、その場を去った。
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