spiritGUARDIAN ~あの空の向こうへ~ ①

七瀬 ギル

文字の大きさ
6 / 25
第1章「吹き返す呼吸」

吹き返す呼吸 その⑥

しおりを挟む
正面玄関へ向かって歩いている途中、向かい側から美優達の姿が見えて来た。

月花 美優
『やはり外には出ていなかったようだな。』

美優は、朱珠の顔を睨みつけながら、右手に握っていた破損した球体を差し出した。

月花 美優
『これは何なんだ?』
『私の腕に画鋲の針が刺さった痕が無いのは、これが関係しているのか?』

コクリと唾を飲み込む朱珠と、平然と佇む茜。

黒田 黎空
『こんな良い物を持ってる、お友達が居るんだったら、もっと早くに紹介してくれたら良かったのに。そしたらそれを使って・・・。』

月花 美優
『黎空は黙ってて。』

美優の言葉に舌打ちをする黎空。
美優は、破損した球体を壁に目掛けて投げ捨てると、いつもの落ち着いた表情に戻り話しを続けた。

月花 美優
『何故、外に逃げなかった?』

神原 朱珠
『私、もう耐えられへんねん。せやから・・・。』

月花 美優
『ここで蹴りをつける・・・と?』

美優の問い掛けに、朱珠は美優の顔を、真っ直ぐな目で見つめながら深く頷いた。

黒田 黎空
『へぇ~、面白そうじゃん。でも3対2で勝てると思ってんの?』

桃井 凛心
『負け確定で超受ける。』

含み笑いを浮かべる黎空と大笑いする凛心。
美優は、そんな2人を冷たい目で見つめた後、朱珠の方へ再び顔を向けると『1対1でやろうよ。』と言葉を発した。

驚いた表情で美優の顔を見る黎空と凛心。
朱珠も想定外の美優の言葉に戸惑いを覚えていた。

神原 朱珠
『(何でなん?)』
『(油断させて、他の2人に不意打ちさせるとか考えてへんやろな!)』
※()=心の声

黒田 黎空
『美優、あんた喧嘩とかしたこととかあんの?』
『ここは喧嘩慣れしてる、私達に任せときなって。』
 
桃井 凛心
『そうだよ!』『美優が勝つって信じてるよ!』
『でもこいつらセコいからさぁ、さっきみたいに変な物を使ってくるかもしれないし危険だって!』

月花 美優
『なら丁度良いんじゃないか?』
『向こうも殴り合いの喧嘩は初めてだろうからさ。』
『それに、さっきと同じ手を使うのであれば、誰も外傷を追うことは無いわけだろ?』
『何の証拠も残らないのなら、派手にやったところで咎められることも無いし、寧ろそっちの方が都合が良いよ。』

美優が朱珠の方に向かって歩き始めた。
朱珠も前に足を踏み出すと、背後から茜が朱珠に聞こえるくらいの小さな声で『大丈夫よ。あなたは絶対に負けない。』と囁いた。

朱珠は、その茜の言葉に安堵し、強く拳を握りしめた。

朱珠の目の前に立つ美優は、朱珠の目をじっと睨み付けており、朱珠は目を逸らしそうになりながらも、『目を逸らしてはいけない』と思い、美優の顔を、いつもより少し強い表情で睨み返した。

月花 美優
『へぇ~。そんな顔も出来るんだな。』
『一発でも私の顔に拳を撃ち込めたら、今後あんたに付き纏うことは止めてやるよ。』

美優は、そう話すと勢い良く朱珠の腰を蹴りつけた。
その光景を眺めて不敵な笑みを浮かべる黎空と凛心。
 
咄嗟の出来事に朱珠は体を庇い切れず、腰を押さえたまま廊下にしゃがみ込んだ。

神原 朱珠
『・・・ッ!』

朱珠が美優の顔を眺めると、周囲に霧が広がっていることに気がついた。

美優に腰を蹴られた時に、茜から貰っていた球体が、ブレザーのポケットの中で崩れていたのであった。

美優は廊下に広がる霧の存在を確認すると、不適な笑みを浮かべ、再び朱珠に殴りかかっていった。

------------------------

そんな2人を眺め、怒りを覚える黎空と青ざめた表情の凛心。

黎空は、顔色一つ変えずに喧嘩を眺めている茜の襟元を掴み、壁に強く叩き付けた。

黒田 黎空
『あんた!』
『あの子にも、あの不気味な球体を渡していたのね!』
『他にも何か渡しているなら白状しなさい!』
『こっちが不利になるような物を、渡しているんじゃないでしょうね!』

綾女 茜
『渡したのは、球体1つのみよ。ただ・・・。』

茜は、自身の鞄の中から溢れ出している霧を見下ろしていた。その霧に気づき、目を見開く黎空。

綾女 茜
『どうやら今、壁に体を打ち付けられた時に、鞄の中に入っていた球体同士がぶつかり合って"全て破れてしまった"ようね。』

朱珠と美優の方を再び眺める黎空。

黒田 黎空
『(さっきの美優の反応を見ていると、体に外傷が残らないだけで「痛み」は感じるのよね?)』
『(互いに喧嘩慣れしていないとはいえ、美優にあれだけ殴る蹴るの暴行を受けて、ぐったりしているところを見ると、結果は目に見えているわね。)』

黎空は勝利を確信し、表情に余裕を取り戻すと、茜の襟から手を離し凛心の隣へ戻ると、再び朱珠と美優の方へと目をやった。

------------------------

どのくらい経ったのだろうか?
朱珠は美優に殴られるばかりで、朱珠の体に外傷が無いとはいえ、朱珠の表情は青ざめ虚な目をしており、体を起こし座り込むことで精一杯のようだ。

月花 美優
『どうした?』
『私に一発も打ち込まずに終わる気なのか?』

息を切らし言葉を返す事が出来ない朱珠。
美優は溜息をついた後、『どうやら、私の勝ちみたいだな。』と一言囁くと、黎空と凛心の方へ歩いて行った。

神原 朱珠
『まだや・・・。まだ終わってへん・・・。』

美優が再び朱珠の方へ振り返ると、そこには痛みを堪えながら、弱々しくも何とか立ち上がろうとしている朱珠の姿があった。

黒田 黎空
『何カッコつけてんの?』

桃井 凛心
『キモいんだけど(笑)』
 
そう言いながら、朱珠を眺めて笑う黎空と凛心。
そんな中、茜と美優は朱珠の姿を、ただじっと見つめていたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

鷹鷲高校執事科

三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。 東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。 物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。 各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。 表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

徒野先輩の怪異語り

佐倉みづき
キャラ文芸
「助けて、知らない駅にいる――」 きさらぎ駅に迷い込み行方不明となった幼馴染みを探す未那は、我が物顔で民俗学予備研究室に陣取る院生・徒野荒野を訪ねる。 あらゆる怪談や怪奇現象を蒐集、研究する彼の助手にされた未那は徒野と共に様々な怪異に行き当たることに…… 「いつの世も、怪異を作り出すのは人間なんだ」

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...