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第1章「吹き返す呼吸」
吹き返す呼吸 その⑥
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正面玄関へ向かって歩いている途中、向かい側から美優達の姿が見えて来た。
月花 美優
『やはり外には出ていなかったようだな。』
美優は、朱珠の顔を睨みつけながら、右手に握っていた破損した球体を差し出した。
月花 美優
『これは何なんだ?』
『私の腕に画鋲の針が刺さった痕が無いのは、これが関係しているのか?』
コクリと唾を飲み込む朱珠と、平然と佇む茜。
黒田 黎空
『こんな良い物を持ってる、お友達が居るんだったら、もっと早くに紹介してくれたら良かったのに。そしたらそれを使って・・・。』
月花 美優
『黎空は黙ってて。』
美優の言葉に舌打ちをする黎空。
美優は、破損した球体を壁に目掛けて投げ捨てると、いつもの落ち着いた表情に戻り話しを続けた。
月花 美優
『何故、外に逃げなかった?』
神原 朱珠
『私、もう耐えられへんねん。せやから・・・。』
月花 美優
『ここで蹴りをつける・・・と?』
美優の問い掛けに、朱珠は美優の顔を、真っ直ぐな目で見つめながら深く頷いた。
黒田 黎空
『へぇ~、面白そうじゃん。でも3対2で勝てると思ってんの?』
桃井 凛心
『負け確定で超受ける。』
含み笑いを浮かべる黎空と大笑いする凛心。
美優は、そんな2人を冷たい目で見つめた後、朱珠の方へ再び顔を向けると『1対1でやろうよ。』と言葉を発した。
驚いた表情で美優の顔を見る黎空と凛心。
朱珠も想定外の美優の言葉に戸惑いを覚えていた。
神原 朱珠
『(何でなん?)』
『(油断させて、他の2人に不意打ちさせるとか考えてへんやろな!)』
※()=心の声
黒田 黎空
『美優、あんた喧嘩とかしたこととかあんの?』
『ここは喧嘩慣れしてる、私達に任せときなって。』
桃井 凛心
『そうだよ!』『美優が勝つって信じてるよ!』
『でもこいつらセコいからさぁ、さっきみたいに変な物を使ってくるかもしれないし危険だって!』
月花 美優
『なら丁度良いんじゃないか?』
『向こうも殴り合いの喧嘩は初めてだろうからさ。』
『それに、さっきと同じ手を使うのであれば、誰も外傷を追うことは無いわけだろ?』
『何の証拠も残らないのなら、派手にやったところで咎められることも無いし、寧ろそっちの方が都合が良いよ。』
美優が朱珠の方に向かって歩き始めた。
朱珠も前に足を踏み出すと、背後から茜が朱珠に聞こえるくらいの小さな声で『大丈夫よ。あなたは絶対に負けない。』と囁いた。
朱珠は、その茜の言葉に安堵し、強く拳を握りしめた。
朱珠の目の前に立つ美優は、朱珠の目をじっと睨み付けており、朱珠は目を逸らしそうになりながらも、『目を逸らしてはいけない』と思い、美優の顔を、いつもより少し強い表情で睨み返した。
月花 美優
『へぇ~。そんな顔も出来るんだな。』
『一発でも私の顔に拳を撃ち込めたら、今後あんたに付き纏うことは止めてやるよ。』
美優は、そう話すと勢い良く朱珠の腰を蹴りつけた。
その光景を眺めて不敵な笑みを浮かべる黎空と凛心。
咄嗟の出来事に朱珠は体を庇い切れず、腰を押さえたまま廊下にしゃがみ込んだ。
神原 朱珠
『・・・ッ!』
朱珠が美優の顔を眺めると、周囲に霧が広がっていることに気がついた。
美優に腰を蹴られた時に、茜から貰っていた球体が、ブレザーのポケットの中で崩れていたのであった。
美優は廊下に広がる霧の存在を確認すると、不適な笑みを浮かべ、再び朱珠に殴りかかっていった。
------------------------
そんな2人を眺め、怒りを覚える黎空と青ざめた表情の凛心。
黎空は、顔色一つ変えずに喧嘩を眺めている茜の襟元を掴み、壁に強く叩き付けた。
黒田 黎空
『あんた!』
『あの子にも、あの不気味な球体を渡していたのね!』
『他にも何か渡しているなら白状しなさい!』
『こっちが不利になるような物を、渡しているんじゃないでしょうね!』
綾女 茜
『渡したのは、球体1つのみよ。ただ・・・。』
茜は、自身の鞄の中から溢れ出している霧を見下ろしていた。その霧に気づき、目を見開く黎空。
綾女 茜
『どうやら今、壁に体を打ち付けられた時に、鞄の中に入っていた球体同士がぶつかり合って"全て破れてしまった"ようね。』
朱珠と美優の方を再び眺める黎空。
黒田 黎空
『(さっきの美優の反応を見ていると、体に外傷が残らないだけで「痛み」は感じるのよね?)』
『(互いに喧嘩慣れしていないとはいえ、美優にあれだけ殴る蹴るの暴行を受けて、ぐったりしているところを見ると、結果は目に見えているわね。)』
黎空は勝利を確信し、表情に余裕を取り戻すと、茜の襟から手を離し凛心の隣へ戻ると、再び朱珠と美優の方へと目をやった。
------------------------
どのくらい経ったのだろうか?
朱珠は美優に殴られるばかりで、朱珠の体に外傷が無いとはいえ、朱珠の表情は青ざめ虚な目をしており、体を起こし座り込むことで精一杯のようだ。
月花 美優
『どうした?』
『私に一発も打ち込まずに終わる気なのか?』
息を切らし言葉を返す事が出来ない朱珠。
美優は溜息をついた後、『どうやら、私の勝ちみたいだな。』と一言囁くと、黎空と凛心の方へ歩いて行った。
神原 朱珠
『まだや・・・。まだ終わってへん・・・。』
美優が再び朱珠の方へ振り返ると、そこには痛みを堪えながら、弱々しくも何とか立ち上がろうとしている朱珠の姿があった。
黒田 黎空
『何カッコつけてんの?』
桃井 凛心
『キモいんだけど(笑)』
そう言いながら、朱珠を眺めて笑う黎空と凛心。
そんな中、茜と美優は朱珠の姿を、ただじっと見つめていたのであった。
月花 美優
『やはり外には出ていなかったようだな。』
美優は、朱珠の顔を睨みつけながら、右手に握っていた破損した球体を差し出した。
月花 美優
『これは何なんだ?』
『私の腕に画鋲の針が刺さった痕が無いのは、これが関係しているのか?』
コクリと唾を飲み込む朱珠と、平然と佇む茜。
黒田 黎空
『こんな良い物を持ってる、お友達が居るんだったら、もっと早くに紹介してくれたら良かったのに。そしたらそれを使って・・・。』
月花 美優
『黎空は黙ってて。』
美優の言葉に舌打ちをする黎空。
美優は、破損した球体を壁に目掛けて投げ捨てると、いつもの落ち着いた表情に戻り話しを続けた。
月花 美優
『何故、外に逃げなかった?』
神原 朱珠
『私、もう耐えられへんねん。せやから・・・。』
月花 美優
『ここで蹴りをつける・・・と?』
美優の問い掛けに、朱珠は美優の顔を、真っ直ぐな目で見つめながら深く頷いた。
黒田 黎空
『へぇ~、面白そうじゃん。でも3対2で勝てると思ってんの?』
桃井 凛心
『負け確定で超受ける。』
含み笑いを浮かべる黎空と大笑いする凛心。
美優は、そんな2人を冷たい目で見つめた後、朱珠の方へ再び顔を向けると『1対1でやろうよ。』と言葉を発した。
驚いた表情で美優の顔を見る黎空と凛心。
朱珠も想定外の美優の言葉に戸惑いを覚えていた。
神原 朱珠
『(何でなん?)』
『(油断させて、他の2人に不意打ちさせるとか考えてへんやろな!)』
※()=心の声
黒田 黎空
『美優、あんた喧嘩とかしたこととかあんの?』
『ここは喧嘩慣れしてる、私達に任せときなって。』
桃井 凛心
『そうだよ!』『美優が勝つって信じてるよ!』
『でもこいつらセコいからさぁ、さっきみたいに変な物を使ってくるかもしれないし危険だって!』
月花 美優
『なら丁度良いんじゃないか?』
『向こうも殴り合いの喧嘩は初めてだろうからさ。』
『それに、さっきと同じ手を使うのであれば、誰も外傷を追うことは無いわけだろ?』
『何の証拠も残らないのなら、派手にやったところで咎められることも無いし、寧ろそっちの方が都合が良いよ。』
美優が朱珠の方に向かって歩き始めた。
朱珠も前に足を踏み出すと、背後から茜が朱珠に聞こえるくらいの小さな声で『大丈夫よ。あなたは絶対に負けない。』と囁いた。
朱珠は、その茜の言葉に安堵し、強く拳を握りしめた。
朱珠の目の前に立つ美優は、朱珠の目をじっと睨み付けており、朱珠は目を逸らしそうになりながらも、『目を逸らしてはいけない』と思い、美優の顔を、いつもより少し強い表情で睨み返した。
月花 美優
『へぇ~。そんな顔も出来るんだな。』
『一発でも私の顔に拳を撃ち込めたら、今後あんたに付き纏うことは止めてやるよ。』
美優は、そう話すと勢い良く朱珠の腰を蹴りつけた。
その光景を眺めて不敵な笑みを浮かべる黎空と凛心。
咄嗟の出来事に朱珠は体を庇い切れず、腰を押さえたまま廊下にしゃがみ込んだ。
神原 朱珠
『・・・ッ!』
朱珠が美優の顔を眺めると、周囲に霧が広がっていることに気がついた。
美優に腰を蹴られた時に、茜から貰っていた球体が、ブレザーのポケットの中で崩れていたのであった。
美優は廊下に広がる霧の存在を確認すると、不適な笑みを浮かべ、再び朱珠に殴りかかっていった。
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そんな2人を眺め、怒りを覚える黎空と青ざめた表情の凛心。
黎空は、顔色一つ変えずに喧嘩を眺めている茜の襟元を掴み、壁に強く叩き付けた。
黒田 黎空
『あんた!』
『あの子にも、あの不気味な球体を渡していたのね!』
『他にも何か渡しているなら白状しなさい!』
『こっちが不利になるような物を、渡しているんじゃないでしょうね!』
綾女 茜
『渡したのは、球体1つのみよ。ただ・・・。』
茜は、自身の鞄の中から溢れ出している霧を見下ろしていた。その霧に気づき、目を見開く黎空。
綾女 茜
『どうやら今、壁に体を打ち付けられた時に、鞄の中に入っていた球体同士がぶつかり合って"全て破れてしまった"ようね。』
朱珠と美優の方を再び眺める黎空。
黒田 黎空
『(さっきの美優の反応を見ていると、体に外傷が残らないだけで「痛み」は感じるのよね?)』
『(互いに喧嘩慣れしていないとはいえ、美優にあれだけ殴る蹴るの暴行を受けて、ぐったりしているところを見ると、結果は目に見えているわね。)』
黎空は勝利を確信し、表情に余裕を取り戻すと、茜の襟から手を離し凛心の隣へ戻ると、再び朱珠と美優の方へと目をやった。
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どのくらい経ったのだろうか?
朱珠は美優に殴られるばかりで、朱珠の体に外傷が無いとはいえ、朱珠の表情は青ざめ虚な目をしており、体を起こし座り込むことで精一杯のようだ。
月花 美優
『どうした?』
『私に一発も打ち込まずに終わる気なのか?』
息を切らし言葉を返す事が出来ない朱珠。
美優は溜息をついた後、『どうやら、私の勝ちみたいだな。』と一言囁くと、黎空と凛心の方へ歩いて行った。
神原 朱珠
『まだや・・・。まだ終わってへん・・・。』
美優が再び朱珠の方へ振り返ると、そこには痛みを堪えながら、弱々しくも何とか立ち上がろうとしている朱珠の姿があった。
黒田 黎空
『何カッコつけてんの?』
桃井 凛心
『キモいんだけど(笑)』
そう言いながら、朱珠を眺めて笑う黎空と凛心。
そんな中、茜と美優は朱珠の姿を、ただじっと見つめていたのであった。
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