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第1章「吹き返す呼吸」
吹き返す呼吸 その⑦
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朱珠は美優に歩み寄り、美優の顔を目掛けて腕を伸ばすも、その力は弱く、拳は美優に届く間も無く簡単に振り払われてしまった。
その後も朱珠の拳は、回を増す事に弱々しいものへと変わっている。
月花 美優
『もう止めろ。』
『あんたに、争いは向いていない・・・。』
その言葉を聞いた瞬間、朱珠の目からは大粒の涙が溢れていた。
だがその涙とは裏腹に、朱珠は力強い目で美優を睨み付け、『あかんねん!』『私、約束したんや!』と、強い口調で言葉を発した。
その言葉を聞き薄らと微笑む茜と、圧倒され驚いた表情を見せる美優達。
そんな中、美優は「一つの異常」に気付く。
それは、さっきまで朱珠と美優達を覆っていた霧が段々と薄くなり、周囲の灰色だった景色は見慣れた光景へと、徐々に戻りつつあったのだ。
美優は歩いて来た廊下の方へ顔をやると、廊下は既に鮮やかな色を取り戻していた。
そんな中、朱珠は、その一瞬の隙を見逃さなかった。
「セコい」と言われようが、「ダサい」と言われようが、
そんなことは、どうでも良かった。
朱珠は「虐めから解放されたい」という思いと同じくらいに、茜の想いや行いを無駄にしたくは無かったし、図書室に居る幽霊と交わした約束を守りたかったのだ。
お互いに喧嘩をしたことが無いとはいえ、朱珠が美優と拳を交わし合う中で、朱珠が美優に勝てないことは、誰が見ても十分に理解できていたに違いない。
だからこそ、この一瞬を見逃す訳にはいかなかったのである。
朱珠は自分の体に残された力の全てを拳に込め、美優の頬を目掛けて右腕を伸ばし、見事に美優の左頬に拳を打ち込んだ。
月花 美優
『・・・ッ!』
朱珠の拳が美優の頬に触れた頃には、霧は完全に姿を消し、いつもの日常を取り戻しており、朱珠に殴られた美優の頬は、微かに腫れていた。
拳を打ち込むことに集中していた朱珠は、周囲の霧が消えていたことに気がついておらず、美優の頬の腫れを見て初めて状況を把握し、先程よりも余計に青ざめたのであった。
神原 朱珠
『ひぃ!』『う・・・嘘やろ!』
『御免!』『ちゃうねん!』『私・・・!』
そんな中、黎空と凛心も動揺を隠し切れない様子だった。
だが、そんな朱珠を眺める美優の表情は、先程までの表情とは異なり非常に穏やかなものであり、2人を眺める茜の表情も同様に穏やかなものであった。
月花 美優
『何、謝ってんだよ。』
『そんなことされたら、私の立場が無いだろ。』
美優は黎空達の方へ向かい、側に立っていた茜の肩を軽くタッチした後、『あんた達の勝ちだ。私は、あんた達から身を引くよ。』と静かに語りかけ、壁に立て掛けてあった鞄を手に取った。
黒田 黎空
『ちょっと美優!』『あんた何言ってんのよ!』
月花 美優
『あんたも私の立場を、無くす気なのか?』
『約束は約束だ。』
黒田 黎空
『でも!』
美優は虚な目で黎空を眺めながら、『金も無い奴に、ずっと集って何になるっていうんだ?』と言い、正面玄関の方へと歩いて行った。
黎空は美優を睨み付けながら舌打ちをした後、悔しそうな表情で茜と朱珠を眺めた後、美優と同じく正面玄関へ去って行き、その後を続く様に凛心も駆け足で、正面玄関の方へと消えて行ったのである。
立ち尽くす朱珠の方へ歩み寄る茜。
綾女 茜
『おめでとう。』
神原 朱珠
『あんがと!』
茜を眺める朱珠の表情は、一昨日から見ていた表情とは一転し、晴れ晴れとした表情をしていた。
綾女 茜
『動ける?』
茜の言葉を聞き、体の痛みを再び思い出す朱珠。
神原 朱珠
『そうやった!』『私、体痛いんやった!』
しゃがみ込む朱珠。
茜は朱珠の背中を摩りながら隣にしゃがみ込んだ。
綾女 茜
『ゆっくり休んで大丈夫よ。』
『今日は、もうずっと一緒だから。』
神原 朱珠
『ずっと一緒?』
綾女 茜
『家に帰るまで、側にいてあげる。』
その言葉を聞き、満足気な表情を浮かべる朱珠。
そんな中、茜のスマホに電話がかかって来た。
綾女 茜
『もしもし。』
電話に出る茜。
どうやら電話の相手は、図書室に向かう途中で電話越しに話した紫月の様であった。
綾女 茜
『今、蹴りがついたわ。こっちは、もう大丈夫よ。あの子達が、そっちに行くことも無いと思うわ。』
『寒い中、無理を言って御免ね。アサガオちゃんも、もう帰って良いわよ。今日は付き合ってくれて、本当に有難う。』
朝顔 紫月(電話)
『そうなんだ。それなら安心した。』
『私なら大丈夫だよ。寒さ対策もして来たし、クロワッサンを食べながら、温かいコーヒーも飲んでいたから、体もぽかぽかだよ。』
綾女 茜
『本当にクロワッサンが好きね。食べた物と飲んだ物の領収書を切っておいて。明日、私が払うから。』
朝顔 紫月
『えっ!』『リーダー、そんな事しなくても大丈夫だよ!』
綾女 茜
『私が頼んだ仕事なんだから。私が出すわ。』
朝顔 紫月
『分かった。有難う。』
『宛名は、どうしたら良い?』
『「blanc」で良いかなぁ?』
綾女 茜
『私の名前で良いわ。』
『宛名は「綾女 葵」でお願い。』
朝顔 紫月
『うん、分かった。有難う、リーダー。』
『じゃあ、また明日ね。』
綾女 茜
『うん。気を付けて帰ってね。』
朝顔 紫月
『うん。リーダーもね。』
電話を切る茜。茜の方を不思議そうに眺める朱珠。
神原 朱珠
『なあ、茜ちゃん。』
『今の領収書の件やねんけどな、「綾女 葵」ってどうゆうことなん?』
綾女 茜
『私の名前よ。』
神原 朱珠
『えっ?』『どゆこと?』
『私には「茜」って言ったやん!』
綾女 茜
『そうだったかしら?』
『私の名前は「綾女 葵(あやめ あおい)」よ。』
※以下、「綾女 茜」は「綾女 葵」で記載。
神原 朱珠
『(もしかして、私が信頼できる人間かを探るまで、偽名を名のてたってことなん?)』
『(やっぱり、この子変わってるわぁ~。)』
※()=心の声
そんなことを思いながら、葵の顔を眺める朱珠。
綾女 葵
『どうかした?』
『私の顔に、何か付いているのかしら?』
慌てて首を振る朱珠。
葵はスマホの画面に目をやると、少し慌てた様子を見せた。
神原 朱珠
『どないしたん?』
綾女 葵
『仕事がある日は仕方ないとして、仕事の無い日は、門限が決まっているの。』
『まさかこんな時間になっていたなんて、思ってもいなかったわ・・・。』
神原 朱珠
『(何だかんだ不思議な子ではあるけど、門限を気にして焦ってる所とか、親近感あって可愛いなぁ。安心したわ!)』
『私なら大丈夫やから、先に帰ってええで!』
『私も少し痛みが和らいでから帰るから、気にせんといて!』
綾女 葵
『でも・・・。』
神原 朱珠
『ええねん、ええねん。私の門限は、17時やから!』
『葵ちゃん、早いんやろ?』
『早よ帰らな、皆心配すんで!』
綾女 葵
『有難う。じゃあ、門限まで後15分しか無いから、先に帰らさせてもらうわね。』
神原 朱珠
『今日は、ほんまにあんがと!』
笑顔で葵の顔を見る朱珠。
心なしか葵もいつもより少し笑顔に見えた。
手を振った後、正面玄関に向かって歩いて行く葵。
去って行く葵の背中を眺めながら、朱珠は1つ聞きたいことを思い出し、大きな声で葵に話しかけた。
神原 朱珠
『 私、部活も入ってへんし、何も用無いねん!』
『せやから、明日から葵ちゃんと一緒に帰りたいんやけど、ええかな?』
『葵ちゃん、門限何時なん?』
『明日から一緒に帰ろうや!』
すると葵は朱珠の方へ振り返り、いつもより少し大きな声で『17時半よ。』と言い、再び朱珠に背を向けて正面玄関の方へと歩き始めた。
神原 朱珠
『(確か門限まで15分しか無いって言いよったよなぁ・・・。)』
『・・・ッ!』『嘘やろ!』
『(じゃあ、今17時15分なん?)』
『(とっくに門限過ぎてんやん!)』
『(何であの子、教えてくれへんの?)』
『(あの子、怖いねんけど~!)』
朱珠が鞄からスマホを取り出すと、そこには、帰りが遅いことを心配した母親からの連絡が大量に入っていた。
顔を真っ青にして、痛い体を起こし立ち上がる朱珠。
神原 朱珠
『葵ちゃん!』『待って!』『私も帰るー!』
そう言いながら、朱珠は葵の方へ走って行った。
朱珠は自分の鞄の中で球体が割れたことには気がついていたが、葵の鞄の中で球体が複数個破損していたことを知らず、また、初めての喧嘩ということもあり、時間の感覚が麻痺していたのであった。
そして何故、ここまで効果が継続的に反映されてしまったのかというと、葵の鞄の中で割れた複数個の球体から溢れ出した霧が廊下で密集し行き場を無くしたことにより、本来よりも霧が消滅する時間が長引いていたのである。
葵は、ちゃんと門限の時間内には帰宅することが出来たものの、朱珠が帰宅した時刻は17時30分を回っており、母親から物凄い剣幕で叱られたのだが、その理由を話す中で、初めて虐めに合っていたことを、母親に打ち明けることができた。
勿論、虐めに合っていたことを黙っていたことで、より叱られたのだが、朱珠は、母親の愛情を改めて実感することができ、朱珠と母親の絆は深まったのであった。
その後も朱珠の拳は、回を増す事に弱々しいものへと変わっている。
月花 美優
『もう止めろ。』
『あんたに、争いは向いていない・・・。』
その言葉を聞いた瞬間、朱珠の目からは大粒の涙が溢れていた。
だがその涙とは裏腹に、朱珠は力強い目で美優を睨み付け、『あかんねん!』『私、約束したんや!』と、強い口調で言葉を発した。
その言葉を聞き薄らと微笑む茜と、圧倒され驚いた表情を見せる美優達。
そんな中、美優は「一つの異常」に気付く。
それは、さっきまで朱珠と美優達を覆っていた霧が段々と薄くなり、周囲の灰色だった景色は見慣れた光景へと、徐々に戻りつつあったのだ。
美優は歩いて来た廊下の方へ顔をやると、廊下は既に鮮やかな色を取り戻していた。
そんな中、朱珠は、その一瞬の隙を見逃さなかった。
「セコい」と言われようが、「ダサい」と言われようが、
そんなことは、どうでも良かった。
朱珠は「虐めから解放されたい」という思いと同じくらいに、茜の想いや行いを無駄にしたくは無かったし、図書室に居る幽霊と交わした約束を守りたかったのだ。
お互いに喧嘩をしたことが無いとはいえ、朱珠が美優と拳を交わし合う中で、朱珠が美優に勝てないことは、誰が見ても十分に理解できていたに違いない。
だからこそ、この一瞬を見逃す訳にはいかなかったのである。
朱珠は自分の体に残された力の全てを拳に込め、美優の頬を目掛けて右腕を伸ばし、見事に美優の左頬に拳を打ち込んだ。
月花 美優
『・・・ッ!』
朱珠の拳が美優の頬に触れた頃には、霧は完全に姿を消し、いつもの日常を取り戻しており、朱珠に殴られた美優の頬は、微かに腫れていた。
拳を打ち込むことに集中していた朱珠は、周囲の霧が消えていたことに気がついておらず、美優の頬の腫れを見て初めて状況を把握し、先程よりも余計に青ざめたのであった。
神原 朱珠
『ひぃ!』『う・・・嘘やろ!』
『御免!』『ちゃうねん!』『私・・・!』
そんな中、黎空と凛心も動揺を隠し切れない様子だった。
だが、そんな朱珠を眺める美優の表情は、先程までの表情とは異なり非常に穏やかなものであり、2人を眺める茜の表情も同様に穏やかなものであった。
月花 美優
『何、謝ってんだよ。』
『そんなことされたら、私の立場が無いだろ。』
美優は黎空達の方へ向かい、側に立っていた茜の肩を軽くタッチした後、『あんた達の勝ちだ。私は、あんた達から身を引くよ。』と静かに語りかけ、壁に立て掛けてあった鞄を手に取った。
黒田 黎空
『ちょっと美優!』『あんた何言ってんのよ!』
月花 美優
『あんたも私の立場を、無くす気なのか?』
『約束は約束だ。』
黒田 黎空
『でも!』
美優は虚な目で黎空を眺めながら、『金も無い奴に、ずっと集って何になるっていうんだ?』と言い、正面玄関の方へと歩いて行った。
黎空は美優を睨み付けながら舌打ちをした後、悔しそうな表情で茜と朱珠を眺めた後、美優と同じく正面玄関へ去って行き、その後を続く様に凛心も駆け足で、正面玄関の方へと消えて行ったのである。
立ち尽くす朱珠の方へ歩み寄る茜。
綾女 茜
『おめでとう。』
神原 朱珠
『あんがと!』
茜を眺める朱珠の表情は、一昨日から見ていた表情とは一転し、晴れ晴れとした表情をしていた。
綾女 茜
『動ける?』
茜の言葉を聞き、体の痛みを再び思い出す朱珠。
神原 朱珠
『そうやった!』『私、体痛いんやった!』
しゃがみ込む朱珠。
茜は朱珠の背中を摩りながら隣にしゃがみ込んだ。
綾女 茜
『ゆっくり休んで大丈夫よ。』
『今日は、もうずっと一緒だから。』
神原 朱珠
『ずっと一緒?』
綾女 茜
『家に帰るまで、側にいてあげる。』
その言葉を聞き、満足気な表情を浮かべる朱珠。
そんな中、茜のスマホに電話がかかって来た。
綾女 茜
『もしもし。』
電話に出る茜。
どうやら電話の相手は、図書室に向かう途中で電話越しに話した紫月の様であった。
綾女 茜
『今、蹴りがついたわ。こっちは、もう大丈夫よ。あの子達が、そっちに行くことも無いと思うわ。』
『寒い中、無理を言って御免ね。アサガオちゃんも、もう帰って良いわよ。今日は付き合ってくれて、本当に有難う。』
朝顔 紫月(電話)
『そうなんだ。それなら安心した。』
『私なら大丈夫だよ。寒さ対策もして来たし、クロワッサンを食べながら、温かいコーヒーも飲んでいたから、体もぽかぽかだよ。』
綾女 茜
『本当にクロワッサンが好きね。食べた物と飲んだ物の領収書を切っておいて。明日、私が払うから。』
朝顔 紫月
『えっ!』『リーダー、そんな事しなくても大丈夫だよ!』
綾女 茜
『私が頼んだ仕事なんだから。私が出すわ。』
朝顔 紫月
『分かった。有難う。』
『宛名は、どうしたら良い?』
『「blanc」で良いかなぁ?』
綾女 茜
『私の名前で良いわ。』
『宛名は「綾女 葵」でお願い。』
朝顔 紫月
『うん、分かった。有難う、リーダー。』
『じゃあ、また明日ね。』
綾女 茜
『うん。気を付けて帰ってね。』
朝顔 紫月
『うん。リーダーもね。』
電話を切る茜。茜の方を不思議そうに眺める朱珠。
神原 朱珠
『なあ、茜ちゃん。』
『今の領収書の件やねんけどな、「綾女 葵」ってどうゆうことなん?』
綾女 茜
『私の名前よ。』
神原 朱珠
『えっ?』『どゆこと?』
『私には「茜」って言ったやん!』
綾女 茜
『そうだったかしら?』
『私の名前は「綾女 葵(あやめ あおい)」よ。』
※以下、「綾女 茜」は「綾女 葵」で記載。
神原 朱珠
『(もしかして、私が信頼できる人間かを探るまで、偽名を名のてたってことなん?)』
『(やっぱり、この子変わってるわぁ~。)』
※()=心の声
そんなことを思いながら、葵の顔を眺める朱珠。
綾女 葵
『どうかした?』
『私の顔に、何か付いているのかしら?』
慌てて首を振る朱珠。
葵はスマホの画面に目をやると、少し慌てた様子を見せた。
神原 朱珠
『どないしたん?』
綾女 葵
『仕事がある日は仕方ないとして、仕事の無い日は、門限が決まっているの。』
『まさかこんな時間になっていたなんて、思ってもいなかったわ・・・。』
神原 朱珠
『(何だかんだ不思議な子ではあるけど、門限を気にして焦ってる所とか、親近感あって可愛いなぁ。安心したわ!)』
『私なら大丈夫やから、先に帰ってええで!』
『私も少し痛みが和らいでから帰るから、気にせんといて!』
綾女 葵
『でも・・・。』
神原 朱珠
『ええねん、ええねん。私の門限は、17時やから!』
『葵ちゃん、早いんやろ?』
『早よ帰らな、皆心配すんで!』
綾女 葵
『有難う。じゃあ、門限まで後15分しか無いから、先に帰らさせてもらうわね。』
神原 朱珠
『今日は、ほんまにあんがと!』
笑顔で葵の顔を見る朱珠。
心なしか葵もいつもより少し笑顔に見えた。
手を振った後、正面玄関に向かって歩いて行く葵。
去って行く葵の背中を眺めながら、朱珠は1つ聞きたいことを思い出し、大きな声で葵に話しかけた。
神原 朱珠
『 私、部活も入ってへんし、何も用無いねん!』
『せやから、明日から葵ちゃんと一緒に帰りたいんやけど、ええかな?』
『葵ちゃん、門限何時なん?』
『明日から一緒に帰ろうや!』
すると葵は朱珠の方へ振り返り、いつもより少し大きな声で『17時半よ。』と言い、再び朱珠に背を向けて正面玄関の方へと歩き始めた。
神原 朱珠
『(確か門限まで15分しか無いって言いよったよなぁ・・・。)』
『・・・ッ!』『嘘やろ!』
『(じゃあ、今17時15分なん?)』
『(とっくに門限過ぎてんやん!)』
『(何であの子、教えてくれへんの?)』
『(あの子、怖いねんけど~!)』
朱珠が鞄からスマホを取り出すと、そこには、帰りが遅いことを心配した母親からの連絡が大量に入っていた。
顔を真っ青にして、痛い体を起こし立ち上がる朱珠。
神原 朱珠
『葵ちゃん!』『待って!』『私も帰るー!』
そう言いながら、朱珠は葵の方へ走って行った。
朱珠は自分の鞄の中で球体が割れたことには気がついていたが、葵の鞄の中で球体が複数個破損していたことを知らず、また、初めての喧嘩ということもあり、時間の感覚が麻痺していたのであった。
そして何故、ここまで効果が継続的に反映されてしまったのかというと、葵の鞄の中で割れた複数個の球体から溢れ出した霧が廊下で密集し行き場を無くしたことにより、本来よりも霧が消滅する時間が長引いていたのである。
葵は、ちゃんと門限の時間内には帰宅することが出来たものの、朱珠が帰宅した時刻は17時30分を回っており、母親から物凄い剣幕で叱られたのだが、その理由を話す中で、初めて虐めに合っていたことを、母親に打ち明けることができた。
勿論、虐めに合っていたことを黙っていたことで、より叱られたのだが、朱珠は、母親の愛情を改めて実感することができ、朱珠と母親の絆は深まったのであった。
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