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メガネスーツ女子と未知との遭遇
頁15:人の住み処とは 1
しおりを挟む小さめの竪穴式住居、江戸時代の城下町の貧乏長屋、荒削りの石を積み上げた今にも崩れそうな石かまくら、ウエスタンな雰囲気漂う木造の酒場っぽい建物、柱四本に天井代わりの布を広げて固定してあるだけのもはや家とは呼べない東屋的な物体…エトセトラ。
そんなごちゃ混ぜ建築物がそう広くない集落の中にランダムに乱立している。統一感も去る事ながら、建設計画も恐らく全く考えられてはいないのだろう。
一応住居を建てられるだけの技術はある様だが、何か【芯】が欠落している。そんな不安定な光景だ。
恐らくはその 【芯】が【世界設定】なのかもしれない。名称未設定の影響はかなり大きそうだった。
「いやァ~、これは見事にちぐはぐだウゲぷっ!?」
自分のせいだと理解していない駄目神様の鳩尾にたまたま肘が突き刺さった。不思議な事もあるものだ。
「お二人さん、泊まる所とかも分からんだろ? とりあえずはウチに来るかい?」
「え、よろしいのですか?」
「まあ男一人暮らしのむさ苦しい家だけどな! 泊まる所は追々考えればいいさ」
これは有難い申し出だ。全く何の知識も情報もない場所で無目的に散策するよりは何かしらの拠点があった方が行動がしやすいだろう。
「ではお言葉に甘えても…」
「がっはっは! 若いモンは遠慮なんかしないでいいんだぞ!」
「センキューおっさん! あんたイイ人だな、見た目はアレだけdグひゅッ!?」
今日は良く肘が刺さる日ですこと…。ていうか誰のせいで装備がこんな見た目になったと思ってるんですか。
「よっしゃ、それじゃあ案内してやるか!」
どこか嬉しそうに、モザイク大将がドスドス歩き出す。
こんな事言うのはアレなのですが……どうか柱だけの東屋タイプ(?)ではありませんように…。
◇◆◇◆◇◆
ひろしさんの自宅は数種類見られる建築パターンの内の『ウエスタン風木造建築』だった。(よかった。)
村の入り口から見てやや奥まった位置にあり、向かうまでの間に何人かの村人さん達とすれ違った。
「おや…ひろしさん、珍しい恰好の人達だねぇ?」
「おおよしこさん、何と『 』からの旅人さんなんだとよ!」
「ええ!? そんな遠い所から…苦労したんだねえ……(涙)」
「え? あ、その………ええ、ぼちぼち……」
どういう風に解釈されたんだろう。そしてやはり日本人名…。きっとヨシ・コサンさんとかではないんだろうな。
「オゥひろし、いつも『 』退治すまんな! そちらはどなたサンだい?」
体格の良い初老の男性が豪快に声を掛けてきた。
こちらの方の方が余程戦いに向いていそうな気がするのだが。
「気にするなって、俺はこの村唯一の『 』だし当然の事をしてるまでよ! こいつらは『 』からわざわざこんな『 』の終わりみたいな村を見に来た物好きな旅人なんだとよ! ぶはははは!!」
「そりゃあ奇特なこった!! どははははは!!! よろしくなお二人さん!!」
「ど、どうも…宜しくお願いします…」
なんだか自虐も筋金入りだった。
分かったのは、この村の人達は排他的ではない『いい人達』である事。
余所者を嫌うような住民だった場合、私達みたいに完全に浮いている外見の人間が安全無事でいられるかは怪しくなる。その点は運が良かったと言えるだろうか。
そしてひろしさんは敵対生物と戦える唯一の【戦闘向け職業】の人らしく、住民からはとても信頼されている様子だった。この人の生まれ持った人柄もあるのかもしれない。
「さ、上がってくれ」
「おじゃましま~っス☆」
神々廻さんがそのまま上がろうとしていたので慌てて止める。
「ちょっと、土足ですよ!」
「あ、いけね」
「履物は『 』の横の『 』に適当に入れてくれていいぞ」
「すいません、お借りします」
…あれ、日本人の習性でつい土足を気にしたけれど…この世界でも家に入る時は靴を脱ぐんだな。偶然かしら?
言われた通り『扉』?の横の『下駄箱』?に靴を入れさせて頂く。
あれ……なんだろうこの感覚。何かが変だ。
私、今何に靴を入れた?
「よっこいしょ、っと…」
「きゃ!」
ひろしさんが身に纏ったモザイクを脱いだのを見てついつい驚いてしまった。下に服は着ているだろうと予想してはいても急に脱がれると…。
「おっとこいつは失礼! でも安心してくれ、着てるし穿いてるぞ!」
やめて下さいそのフレーズはギリギリです。
元の地球ならセクハラと訴えられそうなギャグをガハハとぶん投げ、ひろしさんは装備していた物を部屋の隅に立っていた木製十字形の………『何か?』にテキパキと戻した。
(次頁/15-1へ続く)
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