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再び、現実
ラッキーナントカってあるけど、必ずしもラッキーが幸せとは限らない例
しおりを挟む「───君の疑問に答えよう」
あれ、その台詞って本編前話の最後に言わなかったっけ? タイムリープ??
「大事な事なので2回言った」
なるほど。【大事な事】ってひと言も4文字中50%が『事』だもんな。どんだけコトコトだよ。シチューかよ。
って、またしても脇道に思考が逸れてるぞマサカズゥゥゥゥ!!!
「しかし、まだ全てを答える訳にはいかないがな」
顔前で組んだ手に隠された口元が、ニィッとした気がした。
そうだ。まだ自分はあくまでも外側なんだ。ただ単に、世界の裏側への道の一つを見つけただけ。そしてその道はいつ封鎖されてもおかしくはない。
ここが分水領なんだ。日常と、非日常の。
「疑問───えっと…」
山ほどあるはずなのに、出てこない。いや、厳密には何から聞けばいいのか頭の中が整理できてないんだ。
だってここに来るまでの間に濃密なメンタルブレイクの連続だったせいで。
くそっ、どうする! 何しに来たんだ俺!!
「あ…、その……、…鍵とか……防犯が……」
ハアアアァァァァァァァ!?
よりによって何言っちゃってんのぉぉぉぉぉぉぉ!!??
自分の口がまるで借り物のように捻り出した単語に俺は全身から血の気が引く感覚を覚えた。
これが…糸色亡月王って奴なのか…。
「ふ…、成程。まさかそこに気付くとはな。すまん、君を少々見くびっていた様だ」
「マジかよ…」
「ええっ?」
何この反応こわい。また何かの地雷踏んじゃった?
司令は『参った』という表情を、青沼さんはただただ驚きを隠せずにいるようだった。
「えっと…俺、何か…」
「や、俺もまさか気付かれちゃいないだろって思ってたから敢えて聞こえないフリしてたんだけどよ…」
え、この人そんな駆け引きできるんだ。(←失礼)
「まず最初の質問としてそれを選んだという事は、想像は出来ているようだな…」
司令が前傾姿勢を崩し、背もたれに寄り掛かり呟いた。
「そう、我々はとある組織の一翼だ。この世界に寄り添う影のような存在と言っていい」
まさかの苦し紛れの大暴投がなんか大変な目を出してしまったらしい。
「君には既に見抜かれている様だが、当然、この基地は世を忍ぶ仮の姿だ。当たり前だが、本来の姿を堂々と晒せば我々という世界の異物が公になり、それは【奴等】にも利用される弱点になり得る」
奴等?
そのニュアンスだと友好的な何かじゃないよな。なんか話が一気にキナ臭くなったぞ。
司令は視線を何もない中空に投げ、続けた。
「秘密の組織が表の世界で活動を行うためには、巧妙に世間に溶け込み同化する必要がある」
全然溶け込んでないですよね。あなたの服装も部屋の時代設定も青沼さんのでっかいノックも。
俺は全力で口を噤んだ。うっかり言っちゃわないように。むぐぐ。
「しかしそれでも、情報と機密は常にここに流れ込み、それを狙う者もいる。そういった不届き者に対処する為の装置…君の言葉で言う防犯対策について……教えてあげよう。【無慈悲なる鉄槌】をな……!!」
思わず喉がゴクッと鳴った。
【トールハンマー】という響きの下に【無慈悲なる鉄槌】という文字が見えてしまった。俺もとうとう重度の中二病に感染したようだ。死にたい。
司令は椅子から立ち上がり、大仰に腕を振るいあげ、俺の後方——玄関の天井付近を指差した。
「見るがいい…! これが我々の技術の粋を集めて作られた完璧なセキュリティーだッ!!」
(本編次話【どハイテクとどアナログがお手手つないで俺の脳を殺しに来るんですが】へ続くッ!)
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