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冬~婚約成立
3. 両家顔合わせ
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辺境伯夫妻は五十代くらいの、とても品の良いご夫婦だ。その横には三十代くらいの次期辺境伯夫妻が座っている。ジョフリーの兄夫婦になるが、ジョフリーとは年が離れている。
一方、エリササイドは、エリサの母と同年代のモルビエ伯爵夫妻、エリサの両親と弟である。弟のアンリはまだ成人していないが、次期男爵ということで顔合わせに出席している。
まずは事務的なことを済ませようと、今後のスケジュールを話し合った。伯爵夫妻の養女となる書類を王宮に提出し、認められれば、正式に婚約を行う。すでに辺境伯が各所に手をまわしているので、すんなりと認められるはずだ。
その話し合いの最中、エリサはナタリーの言いつけを守って、沈黙を保っていた。
事務的な話が終わったところで、辺境伯がエリサに話しかけた。
「魔法省の知り合いに、エリサ嬢の魔法陣はとても画期的だと聞いたよ。私には理解できなかったが」
「……恐れ入ります」
ここで何が画期的なのかを説明したくなるが、それをしてはいけないのは前世の記憶からも知っている。思わず詳細に説明したくなるが、聞いている人は詳しく知りたいわけじゃない。ただ「何か難しいことやっててすごいね」と言っただけなのだ。その難しいことの中身に興味はない。
ちなみに目覚まし時計の魔法陣とタイマーの魔法陣が画期的なのは、発動している魔法を終了させるところにある。
開発のきっかけは、目覚まし時計とは関係なく、第七円の使用方法を考えていたときの気づきだ。
魔法陣には、処理を途中で止める機能がない。あるのは、発動を阻止する魔法陣だ。発動している魔法を強制終了させる機能がないのだ。なぜそんなことを考えたのかというと、プログラムの非同期処理について考えていて、タスク停止で整合性を取るのが面倒だったと思い出したからだが、今回の件とは全く関係ない。
魔法陣にはスイッチを入れる機能はあるが、切る機能がない。時間になったら自動的に切れる機能しかない。オンだけでなく、オフも任意のタイミングできるようにしたら便利なのではないか。
そう考えたエリサは、発動している魔法を終了させる方法に取り組み、ついに開発した。発動時間は第二円に定義されているが、それを時間経過で終了するのではなく、魔力を与えられた場合と変えた。発動開始が魔力を与えられたらとなっているのだから、終了も魔力を与えられた場合に変更できると考えたのだ。
ただそれを知られると手柄を横取りされてしまうので、周りの生徒が興味を持たないように、目覚まし時計の魔法陣の中に潜ませた。学園で他の生徒に「魔法陣を見せてみろ」と言われると、身分からエリサは従うしかない。そしてその魔法陣を盗まれるのだ。だからわざと、彼らの興味を持たないものの中にこっそりと入れ込んだ。教師のグラールだけは気づいたが、エリサが魔法省に提出するまで、気づかないふりをしてくれていた。
辺境伯は魔法陣の話を聞きたいのかエリサを見ているので、どうやら難しいことの中身に興味があったようだ。ただ、一言だけ返しただけでそれ以上エリサがしゃべる気がないと分かると、辺境伯夫人が救いの手を差し伸べてくれた。
「旦那様、今お仕事の話はやめましょう。エリサさん、ジョフリーは失礼なことをしていないかしら? 剣にばかり熱中して、ご令嬢のお相手はあまり得意じゃないのよ。許してやってね」
「……はい」
魔法陣のことから話はそれたが、変化球が飛んできてどう答えていいのか分からないので、こちらも曖昧に笑ってごまかした。ミシェルほどではないが、ジョフリーも女性の扱いには慣れていると感じたが、家族に隠れて遊んでいるのだろうか。そういえばジョフリーの女性関係は聞いたことがない。
「母上、エリサ嬢は今日はしゃべらないそうなので、あまり質問しないであげてください」
「あらあら。お話は苦手なのかしら?」
「魔法陣の話でしたら、いくらでもしてくれますよ。ですから父上も魔法陣の話を聞きたければ、別の機会にしてください」
話しかけても一言だけしか返さないエリサに、辺境伯夫妻が少し戸惑いを見せたところで、ジョフリーがエリサの作戦をバラしてしまった。ジャンとナタリーは青くなっているが、辺境伯家とモルビエ伯爵家の面々は苦笑している。これはやっぱり減点かなと、エリサは心の中でため息をついた。
辺境伯夫人たちは、ジョフリーからそれとなくエリサの令嬢らしからぬところを匂わせられていたので、むしろ聞いていたよりも貴族令嬢としてきちんとしていると思っているのだが、エリサは知る由もない。
「お茶会や夜会では、お義母様か私かおそばにいるようにしますから、気楽になさってね」
「ありがとうございます」
エリサの義理姉になる、次期辺境伯夫人から救いの言葉が投げかけられた。
辺境伯家の人たちはエリサの思う以上にエリサを歓迎していることに驚くが、それだけエリサの魔法陣技師としての腕を買ってくれているのだ。おそらく辺境伯は、魔法省の友人にわざわざエリサのことを確認し、その結果合格点を取れていたのだろう。
身に着けた知識や技能が自身を助けるのは、どの世界でも変わらない。
一方、エリササイドは、エリサの母と同年代のモルビエ伯爵夫妻、エリサの両親と弟である。弟のアンリはまだ成人していないが、次期男爵ということで顔合わせに出席している。
まずは事務的なことを済ませようと、今後のスケジュールを話し合った。伯爵夫妻の養女となる書類を王宮に提出し、認められれば、正式に婚約を行う。すでに辺境伯が各所に手をまわしているので、すんなりと認められるはずだ。
その話し合いの最中、エリサはナタリーの言いつけを守って、沈黙を保っていた。
事務的な話が終わったところで、辺境伯がエリサに話しかけた。
「魔法省の知り合いに、エリサ嬢の魔法陣はとても画期的だと聞いたよ。私には理解できなかったが」
「……恐れ入ります」
ここで何が画期的なのかを説明したくなるが、それをしてはいけないのは前世の記憶からも知っている。思わず詳細に説明したくなるが、聞いている人は詳しく知りたいわけじゃない。ただ「何か難しいことやっててすごいね」と言っただけなのだ。その難しいことの中身に興味はない。
ちなみに目覚まし時計の魔法陣とタイマーの魔法陣が画期的なのは、発動している魔法を終了させるところにある。
開発のきっかけは、目覚まし時計とは関係なく、第七円の使用方法を考えていたときの気づきだ。
魔法陣には、処理を途中で止める機能がない。あるのは、発動を阻止する魔法陣だ。発動している魔法を強制終了させる機能がないのだ。なぜそんなことを考えたのかというと、プログラムの非同期処理について考えていて、タスク停止で整合性を取るのが面倒だったと思い出したからだが、今回の件とは全く関係ない。
魔法陣にはスイッチを入れる機能はあるが、切る機能がない。時間になったら自動的に切れる機能しかない。オンだけでなく、オフも任意のタイミングできるようにしたら便利なのではないか。
そう考えたエリサは、発動している魔法を終了させる方法に取り組み、ついに開発した。発動時間は第二円に定義されているが、それを時間経過で終了するのではなく、魔力を与えられた場合と変えた。発動開始が魔力を与えられたらとなっているのだから、終了も魔力を与えられた場合に変更できると考えたのだ。
ただそれを知られると手柄を横取りされてしまうので、周りの生徒が興味を持たないように、目覚まし時計の魔法陣の中に潜ませた。学園で他の生徒に「魔法陣を見せてみろ」と言われると、身分からエリサは従うしかない。そしてその魔法陣を盗まれるのだ。だからわざと、彼らの興味を持たないものの中にこっそりと入れ込んだ。教師のグラールだけは気づいたが、エリサが魔法省に提出するまで、気づかないふりをしてくれていた。
辺境伯は魔法陣の話を聞きたいのかエリサを見ているので、どうやら難しいことの中身に興味があったようだ。ただ、一言だけ返しただけでそれ以上エリサがしゃべる気がないと分かると、辺境伯夫人が救いの手を差し伸べてくれた。
「旦那様、今お仕事の話はやめましょう。エリサさん、ジョフリーは失礼なことをしていないかしら? 剣にばかり熱中して、ご令嬢のお相手はあまり得意じゃないのよ。許してやってね」
「……はい」
魔法陣のことから話はそれたが、変化球が飛んできてどう答えていいのか分からないので、こちらも曖昧に笑ってごまかした。ミシェルほどではないが、ジョフリーも女性の扱いには慣れていると感じたが、家族に隠れて遊んでいるのだろうか。そういえばジョフリーの女性関係は聞いたことがない。
「母上、エリサ嬢は今日はしゃべらないそうなので、あまり質問しないであげてください」
「あらあら。お話は苦手なのかしら?」
「魔法陣の話でしたら、いくらでもしてくれますよ。ですから父上も魔法陣の話を聞きたければ、別の機会にしてください」
話しかけても一言だけしか返さないエリサに、辺境伯夫妻が少し戸惑いを見せたところで、ジョフリーがエリサの作戦をバラしてしまった。ジャンとナタリーは青くなっているが、辺境伯家とモルビエ伯爵家の面々は苦笑している。これはやっぱり減点かなと、エリサは心の中でため息をついた。
辺境伯夫人たちは、ジョフリーからそれとなくエリサの令嬢らしからぬところを匂わせられていたので、むしろ聞いていたよりも貴族令嬢としてきちんとしていると思っているのだが、エリサは知る由もない。
「お茶会や夜会では、お義母様か私かおそばにいるようにしますから、気楽になさってね」
「ありがとうございます」
エリサの義理姉になる、次期辺境伯夫人から救いの言葉が投げかけられた。
辺境伯家の人たちはエリサの思う以上にエリサを歓迎していることに驚くが、それだけエリサの魔法陣技師としての腕を買ってくれているのだ。おそらく辺境伯は、魔法省の友人にわざわざエリサのことを確認し、その結果合格点を取れていたのだろう。
身に着けた知識や技能が自身を助けるのは、どの世界でも変わらない。
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