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1年目 スフラル編
2. 頭脳プレーもお手の物
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代官と面会の日、少し早めに着いたので、ギルド長の部屋で行方不明の子どものその後についてを聞いている。
「どうやら子どもを攫っている組織があるようです。あの子だけでなく、近くの街で子どもが消えています」
「手掛かりは?」
「何も。ただ街の外に出て魔物にやられたとしか思われていませんでした。その使役獣が匂いを追わなければ、気づかなかったでしょう」
各街で消えるのが一人ずつだったので、ただの不幸な事故で片付けられていたけど、オレが馬車に乗せられたみたいだと突き止めたことで調べてみると、周辺の街や村で不自然に子どもたちが消えていることに気付いたらしい。
これから国とギルドで協力して調べるそうだ。
オレのお手柄!
でも子供が見つかったわけじゃないから素直に喜べないよ。
そこに代官が到着したと知らせが来た。
その代官っていうのは、いつもは領にいない領主に代わってこの地方を治めている領主の親戚らしい。
ウィオはギルド長と一緒に立ち上がって、頭を下げている。オレもウィオの足元でお座りしていよう。
「私を呼び出すとはいい度胸だな。その使役獣は有益なようだ。よこせ」
まさかの、捜査に協力してとかじゃなくて、オレをよこせって話だった。アウトー!
ギルド長もちょっと待てって顔をしている。だよねえ。この状況でその言葉が出てくるとは思わないよねえ。
「お断りいたします」
「代官様、他者の使役獣を取り上げることはできません」
「取り上げるとは言っていない。私のほうが活用できるから譲れと言っているんだ」
ないわー。ウィオ、ぶっ飛ばしちゃって。
でもウィオは代官をぶっ飛ばしたりはしなかった。ギルドに迷惑がかかるからってことらしい。つまんない。
とりあえず攫われちゃったりしないように、オレはウィオの首に巻き付いておこう。
ギルド長が何とか代官を追い出してくれるまで、ウィオは一言もしゃべらなかった。相手するのが面倒になっちゃったんだろうな。
最終的にギルド長の、冒険者ギルドを敵に回すつもりか、今後二度と依頼を受けないぞ、という趣旨をオブラートに包んでまろやかにした発言を聞いて、代官は諦めて帰っていた。
ギルド長、ごめんね。
「できれば子どもの誘拐の調査を手伝ってほしかったのですが、早急にこの領を離れることを勧めます」
「分かりました。ギルド長、この国の統括長に今のことを知らせてください。私が指名依頼を免除されていることに関係します」
さっさと逃げ出すけど、トラブルなく逃げ出せるかどうか分からない。
領兵とか仕向けられちゃったらウィオがなぎ倒すだろうけど、この国に喧嘩を売りたいわけじゃないんだよね。
冒険者ギルドの各国の統括長にはオレのことが知らされていると聞いているから、この先トラブルがあっても上手く処理してほしい。
余計な手出ししてこなければ、こっちからは何もしないから。ほら、触らぬ神に祟りなしって言うでしょ。
今日は代官とのお話ってことで依頼も受けていなかったので、さっさと街を出よう。
泊まっている宿に急遽移動することになったと告げて荷物を引き上げ、預けていた馬車を、厩舎でくつろいでいたお馬さんに繋ぐ。せっかくのんびりしてたのに、急にお仕事になってごめんね。
ささっと準備して街を出るために門を通ろうとしたところで、門番さんに止められてしまった。
「代官に街から出さないように言われてるんだ。悪いな」
「悪いが付き合う気はない。怪我をさせたくないので離れてくれ」
「俺たちも仕事なんだ」
門番さんたちもオレたちが子どもの捜索に協力したりしているのを知っているから、実力行使はしたくないみたいだ。
周りの人たちもなんだなんだ、と野次馬根性で集まってきているし、ウィオはどうするのかな。
どさくさに紛れて御者台に座ってるオレのことを撫でてる門番さんもいるので、出来れば攻撃はしてほしくないなあ。あ、そこもうちょっと撫でて。
緊張感のない膠着状態が続いたその時、遠くから団体様が走ってくる足音が聞こえた。誰か来たみたい。
「そこの冒険者! その使役獣を代官様に献上しろ!」
「断る」
あーうん、さすが元氷の騎士様。凍り付きそうな声だけで、柔らかいものなら斬れそうだ。
領兵がオレを取り上げに来たみたいだけど、あの代官、仕事できなさそうなのにこういう対応は早いんだな。
なんとなく成り行きを見守っていた周りの人から、使役獣を取り上げるってありえないだろう、冒険者を敵に回す気か、という抗議があがっている。
収拾がつかなくなりそうだなあと思いながら眺めていたら、馬車の行く手に立ちふさがっていた門番さんが、さりげなく道を開けてくれた。
ギルドを敵に回すようなことには加担できないってことなんだろう。これはこのまま進めってことだよね。
よーし、行っちゃうぞー。
『ギャンギャン! ギャンギャン!(お馬さん、びっくりしたフリをして、その脇を抜けて門を出ちゃって)』
『ヒヒーン!』
オレが大声で鳴いたから驚いたという演技で、お馬さんは車のエンブレムになっているような跳ね馬になってから、走り出した。
お馬さんの驚いたって演技に周りにいた人も一斉に逃げたから、道が開いている。よし進めー!
ウィオが逃げたんじゃないから、ウィオのせいじゃないよ。取り上げられそうになったオレがビビッて鳴き声をあげちゃっただけだよ。
急に走り出した馬車に領兵は対応できなくて、置いてけぼりになった。
どう? オレの頭脳プレー。
オレは可愛いだけじゃなくて、賢い狐なんだよ。
「どうやら子どもを攫っている組織があるようです。あの子だけでなく、近くの街で子どもが消えています」
「手掛かりは?」
「何も。ただ街の外に出て魔物にやられたとしか思われていませんでした。その使役獣が匂いを追わなければ、気づかなかったでしょう」
各街で消えるのが一人ずつだったので、ただの不幸な事故で片付けられていたけど、オレが馬車に乗せられたみたいだと突き止めたことで調べてみると、周辺の街や村で不自然に子どもたちが消えていることに気付いたらしい。
これから国とギルドで協力して調べるそうだ。
オレのお手柄!
でも子供が見つかったわけじゃないから素直に喜べないよ。
そこに代官が到着したと知らせが来た。
その代官っていうのは、いつもは領にいない領主に代わってこの地方を治めている領主の親戚らしい。
ウィオはギルド長と一緒に立ち上がって、頭を下げている。オレもウィオの足元でお座りしていよう。
「私を呼び出すとはいい度胸だな。その使役獣は有益なようだ。よこせ」
まさかの、捜査に協力してとかじゃなくて、オレをよこせって話だった。アウトー!
ギルド長もちょっと待てって顔をしている。だよねえ。この状況でその言葉が出てくるとは思わないよねえ。
「お断りいたします」
「代官様、他者の使役獣を取り上げることはできません」
「取り上げるとは言っていない。私のほうが活用できるから譲れと言っているんだ」
ないわー。ウィオ、ぶっ飛ばしちゃって。
でもウィオは代官をぶっ飛ばしたりはしなかった。ギルドに迷惑がかかるからってことらしい。つまんない。
とりあえず攫われちゃったりしないように、オレはウィオの首に巻き付いておこう。
ギルド長が何とか代官を追い出してくれるまで、ウィオは一言もしゃべらなかった。相手するのが面倒になっちゃったんだろうな。
最終的にギルド長の、冒険者ギルドを敵に回すつもりか、今後二度と依頼を受けないぞ、という趣旨をオブラートに包んでまろやかにした発言を聞いて、代官は諦めて帰っていた。
ギルド長、ごめんね。
「できれば子どもの誘拐の調査を手伝ってほしかったのですが、早急にこの領を離れることを勧めます」
「分かりました。ギルド長、この国の統括長に今のことを知らせてください。私が指名依頼を免除されていることに関係します」
さっさと逃げ出すけど、トラブルなく逃げ出せるかどうか分からない。
領兵とか仕向けられちゃったらウィオがなぎ倒すだろうけど、この国に喧嘩を売りたいわけじゃないんだよね。
冒険者ギルドの各国の統括長にはオレのことが知らされていると聞いているから、この先トラブルがあっても上手く処理してほしい。
余計な手出ししてこなければ、こっちからは何もしないから。ほら、触らぬ神に祟りなしって言うでしょ。
今日は代官とのお話ってことで依頼も受けていなかったので、さっさと街を出よう。
泊まっている宿に急遽移動することになったと告げて荷物を引き上げ、預けていた馬車を、厩舎でくつろいでいたお馬さんに繋ぐ。せっかくのんびりしてたのに、急にお仕事になってごめんね。
ささっと準備して街を出るために門を通ろうとしたところで、門番さんに止められてしまった。
「代官に街から出さないように言われてるんだ。悪いな」
「悪いが付き合う気はない。怪我をさせたくないので離れてくれ」
「俺たちも仕事なんだ」
門番さんたちもオレたちが子どもの捜索に協力したりしているのを知っているから、実力行使はしたくないみたいだ。
周りの人たちもなんだなんだ、と野次馬根性で集まってきているし、ウィオはどうするのかな。
どさくさに紛れて御者台に座ってるオレのことを撫でてる門番さんもいるので、出来れば攻撃はしてほしくないなあ。あ、そこもうちょっと撫でて。
緊張感のない膠着状態が続いたその時、遠くから団体様が走ってくる足音が聞こえた。誰か来たみたい。
「そこの冒険者! その使役獣を代官様に献上しろ!」
「断る」
あーうん、さすが元氷の騎士様。凍り付きそうな声だけで、柔らかいものなら斬れそうだ。
領兵がオレを取り上げに来たみたいだけど、あの代官、仕事できなさそうなのにこういう対応は早いんだな。
なんとなく成り行きを見守っていた周りの人から、使役獣を取り上げるってありえないだろう、冒険者を敵に回す気か、という抗議があがっている。
収拾がつかなくなりそうだなあと思いながら眺めていたら、馬車の行く手に立ちふさがっていた門番さんが、さりげなく道を開けてくれた。
ギルドを敵に回すようなことには加担できないってことなんだろう。これはこのまま進めってことだよね。
よーし、行っちゃうぞー。
『ギャンギャン! ギャンギャン!(お馬さん、びっくりしたフリをして、その脇を抜けて門を出ちゃって)』
『ヒヒーン!』
オレが大声で鳴いたから驚いたという演技で、お馬さんは車のエンブレムになっているような跳ね馬になってから、走り出した。
お馬さんの驚いたって演技に周りにいた人も一斉に逃げたから、道が開いている。よし進めー!
ウィオが逃げたんじゃないから、ウィオのせいじゃないよ。取り上げられそうになったオレがビビッて鳴き声をあげちゃっただけだよ。
急に走り出した馬車に領兵は対応できなくて、置いてけぼりになった。
どう? オレの頭脳プレー。
オレは可愛いだけじゃなくて、賢い狐なんだよ。
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