美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい

戌葉

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2年目 フェゴ編

2. 王子様と再会

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 国境のすぐそばに止めた馬車の中で眠った翌日。ギルドから連絡が来て、無事入国の許可が出た。王子様と連絡が取れたのか、統括ギルド長に連絡が行ったのかは分からないけど、いずれにしてもフェゴに入れてよかった。
 そのときにここの責任者っぽい人に疑ったことを謝られたけど、怒ってはいない。そもそもその原因となった闇オークションの摘発もドラゴン騒動も、どちらもオレが起こした事態だと言えなくもない。余計な首を突っ込んで、事を大きくした自覚はある。
 タイロンの王都には今二番目のお兄さんがいるから、「騒がせてごめんなさい」という手紙は送っておいたけど、隣のフェゴにまで影響が出ているとは思わなかった。こちらこそ迷惑かけてごめんなさい。

 昨日は待っている間にやることもないので、お馬さんとたくさん遊んだ。ドラゴンに会いに行くときに村に預けて、「戻るまでここで待っててね」と言っていたのに、迎えに行かなかったので、少し拗ねてしまっていたのだ。
 ドラゴンに送ってもらったところからあの村へ戻ろうとしていたときに、山の周りを巡回しているタイロンの騎士に出会った。村にオレたちが行くと騒動になるからと、その騎士さんたちが馬と馬車を運んできてくれたけど、そのときも知らない人に連れさられそうだと抵抗したらしい。最後は騎士さんの説得に折れてくれたけど、オレが帰ってくるまでずっと待つつもりだったと後で教えてくれた。待たせちゃったのに、迎えにも行かなくて、本当に申し訳ない。
 だから自由時間ができたので、仲良く一緒に遊んだ。オレだけがお馬さんに乗って、国境の近くの草原をお馬さんの走りたいように走り回ってもらった。村でもたくさん運動させてもらっていたらしいけど、身軽で自由に走るのをとても楽しんでくれたので、一緒に走ってよかった。
 馬に狐が乗って走り回るという図がおもしろかったのか、国境越えの荷物チェックで待たされている商人たちからおやつをもらえたのは、嬉しい誤算だった。

 ドラゴンには八つ当たりして悪いことをしたし、ウィオにも心配かけたし、お馬さんも不安にさせちゃったし、独りよがりで行動したことに反省しきりだ。誰もオレに対してお説教できないってことを忘れてた。身分に胡坐をかいていないで節度を守らないと、飼い狐失格になっちゃうので、気をつけよう。


 たくさん遊んでご機嫌を直してくれたお馬さんのひく馬車で、王子様がいると聞いた街に向かっている。名前を借りたのに、会いもせずにマトゥオーソに向かう不義理はできない。きっと討伐で忙しいだろうから会えないかもしれないけど、感謝だけは伝えにいこう。
 今通っているフェゴの北側を横切る街道は、ドラゴンの噂で往来が増えたと商人が教えてくれたけど、移動している冒険者が多い気がする。ドラゴンに会いに行く人たちだけでなく、魔物が多くなって稼ぎ時だと思った冒険者が移動しているのかもしれない。
 王子様がいる街のギルドも、討伐の拠点となっているだけあって、混雑していた。

「上級ランクのライオネルに会いに来たんだが」
「ウィオラスさんですね。地図を預かっています。帰りは待たずに移動してくれていいと、伝言です」

 ギルドに顔を出すと、王子様からの伝言だけでなく、前回は載っていなかった街のおススメの宿と食堂を網羅したチョモマップが受付に預けられていた。わーい、チョモだ。さすが王子様、よく分かってる。

 ギルドからは、王子様と一緒に活発になっている魔物の討伐をしてほしいと依頼された。聞いてみると街や村に影響が出てしまう魔物はすでに討伐していて、森の中がまだ騒がしいので、それを落ち着かせるために討伐を続けているらしい。それだったら申し訳ないけど、のんびりさせて。ドラゴンに会いに行ってから、怒涛の日々だったから、屋根のあるところで落ち着きたい。草原で騎士に会ってからは、騎士に気を遣われているのが分かるから、気疲れしちゃったんだよね。
 王子様おススメの宿に泊まって、久しぶりに羽根を伸ばそう。それで、美味しいご飯をたくさん食べるぞ。

 紹介された宿は、お風呂はついていなかったけど、こじんまりとした家庭的な宿だった。料理が美味しいと勧められた宿だから、夕食が待ちきれない。
 ウィオの隣の椅子に座って待っていたら、この宿名物の煮込み料理を、オレのために下味だけにしたものを出してくれた。
 いただきまーす。もぐもぐ、うまうま。

「狐くんは薄味ってことだったから、味付け前に取り分けたんだけど、もう少し味があったほうがいいですか?」
『キューン、キャン』
「ちょうどいいらしい。美味しいと言っている。わざわざすまない」
「よかったです。常連さんからの紹介ですからね。今後もごひいきに」

 頻繁にドラゴンに会いに来るなら、この街に来る機会もありそうだ。王子様の口利きのお陰でオレのこともお客様として扱ってくれるし、特別に料理の味付けもしてくれるし、ここは定宿にしたいね。

「ここの料理はタイロンに近いな」
『オレは好きだけど、ウィオはもっとスパイスたっぷりのほうが好きだよね』
「だいぶタイロンの味にも慣れてきた」

 オレはタイロンのハーブがお気に入りだ。ハーブというか薬味っぽいので、多いとダメだけど、ほんのりアクセントで入っているのはとっても美味しい。ということで、タイロンの影響を受けたこの地の料理もお気に入りだ。でもウィオはそのハーブがあまり好きじゃない。ガツンとスパイスがきいている料理のほうが好みだ。
 日替わりで色んな料理を頼もう。その中にはウィオの好きな味付けのものもあるはず。


 清潔な宿でぐっすりと眠り、美味しい朝食を食べて、お昼は街中をぶらぶらして珍しいものがあったらウィオに買ってもらって食べて、夕食は宿の美味しい料理を堪能する。
 ここ最近のドタバタから解放されて、休暇とも言える日々を過ごして四日目、市場散策から戻ったら、宿に王子様がいた。

「ウィオラス、久しぶりだな」
「国境への口添え、助かった」

 その王子様の後ろに控えているのは、幼馴染だけだ。ウィオを目の敵にしていたあの護衛がいない。三人目を探してきょろきょろしていたら、王子様が小さな声で教えてくれた。

「もしかして、パースを探しているのかな? 彼は私の護衛を離れて、近衛騎士団に入った。冒険者から出世だと喜んでいたよ」

 あの護衛、そんなに優秀には見えなかったから、出世と見せかけて体のいい配置換えされちゃったんだね。でも本人が出世だと思ってるなら、丸く収まってよかったんだろう。
 護衛と言いながら王子様はあんまり信用していなさそうだったし、なぜ一緒にいるのかよく分からない関係だったけど、王子様たちもいなくなったことを惜しんでいないから、本人たちの希望で一緒にいたんじゃなくて面倒な政治が絡んでいたのかもしれない。
 まあいいや。いなくなってくれたから、ウィオが目の敵にされることもなくなったし、過去の人として忘れよう。

「魔物の討伐はどうだ?」
「そのことだが、夕食前に部屋で少し話さないか?」
「ルジェ、いいか?」
『キャン』

 部屋でってことは、王子様が話したいのはオレかな? この宿のご飯がとっても美味しかったので、ちゃんと話を聞いてあげよう。
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