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2年目 フェゴ編
4. 魔物の暴走の理由
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王子様たちと夕食を一緒にとる約束をして部屋に戻ると、ウィオが椅子に座り、膝に乗せたオレのブラッシングを始めた。
「ルジェ、魔物の移動はもしかして……」
『オレが河原まで送ってもらったからだね。ごめん。全く気にしてなかった』
ドラゴンは神を除けばこの世界の頂点だ。魔物の捕食者なのだ。ドラゴンが動けば、魔物にも影響が出る。そのことに思い至らず、タクシー代わりに使ってしまった。そのせいで人間に影響が出てしまったのは、本当に申し訳ないとしか言えない。
『ウィオ、ドラゴンが現れたせいで出た影響を落ち着かせたいから、手伝ってほしい』
「ルジェが気にする必要はないような気もするが」
『オレはそこまで薄情じゃないよ』
神獣であるオレの希望で幻獣の頂点であるドラゴンが動いた結果、人間に影響が出たとしても、オレたちが責任を感じる必要はないのかもしれない。
でも、オレは人間社会などどうなってもいいとまでは割り切れない。もし影響が出たのがオルデキアの王都だったら。お屋敷の人たちが巻き込まれたら。そう思うと、知らないふりは出来ない。
かと言ってフェゴだけ特別扱いにすると後々問題になりそうだから、ギルドの依頼の範囲での協力だ。ウィオも、ギルドの依頼ならと納得してくれた。
ギルドや王子様に頼まれたとして、何を受けて何を受けないのか、ちゃんと話し合う。
森の魔物を一掃するというような、この混乱に乗じて今までの懸念事項を片づけてしまおうというような依頼は受けない。政治や外交問題が関わりそうな依頼や、貴族が絡んだ依頼も受けない。
嗅覚や足の速さといった狐の能力を必要とする依頼は受けるけど、治癒や浄化能力を必要とする依頼は受けない。
一つ一つ確認して、ウィオと認識を合わせた。この数日のんびりしたから、明日からは依頼を頑張ろう。
そういえば、今までこういう認識合わせはしたことがなかった。オレが何かしようとして、ウィオが止めることが多かった。ウィオの気苦労を減らすためにも、まず最初に行うべきことだった気もする。これからは今回確認したことの範囲内で動くように気をつけよう。
懸念事項への対処が決まったので、胸のつかえがとれた。明日から頑張るためにも今日は美味しい夕食を楽しもうと、今夜の料理に思いをはせながらブラッシングに身を任せていたら、ウィオに思わぬことを尋ねられた。
「ところでルジェ、魔物はドラゴンからは逃げたのに、なぜルジェからは逃げないんだ? ルジェに攻撃力がないからか?」
『違うよ。オレが魔力も神力も抑えて、ちょっと魔力の多い使役獣に擬態しているからだよ』
オレは飼い狐志望だから、人間社会に溶け込むためにも、混乱を生じさせそうな力は隠している。
だから、魔物からはオレがとっても美味しそうに見えている。動物たちは抑えても漏れてしまう神力に寄ってくるけど、魔物たちは抑えても漏れてしまう魔力に寄ってくるのだ。
本性を現せば、きっと今回のドラゴンどころじゃなく、魔物が逃げ惑うんじゃないかな。攻撃力はなくても、圧倒的な魔力と神力に恐れをなして逃げるはずだ。
『何でそんなこと聞くの?』
「魔物がドラゴンの気配に逃げ惑ったと聞いて、なぜルジェからは逃げないのか不思議だったんだ」
もしかして、魔物が森からあふれ出てきたという話をしていたときに、みんなでオレを見ていたのは、そのせい? オレ、ドラゴンよりも弱いと思われてる?
それは、ちょっと悔しいぞ。
『魔力を解放して見せようか? 思いっきり魔物たちを威嚇できるよ?』
「ルジェ、必要ない。変なことを聞いて悪かった」
『よーし、ここはウィオにカッコいいところを見せちゃうよ』
ウィオの膝からおりて、四つ足を床につけて踏ん張る。オレがドラゴンよりも強いということを、ここでちゃんと見せておかないとね。
もふもふの尻尾をピンと立てて準備したところで、ウィオがオレを抱き上げて自分の膝の上にひっくり返して乗せ、お腹をわしゃわしゃと撫で始めた。オレの好きなナデナデで誤魔化そう作戦だな。でも、そんなことで誤魔化されはしないよ。
ウィオの手を甘噛みして、逃れようとジタバタしていると、ウィオがオレを抱いて立ち上がった。
「ルジェ、夕食に行こう。今日はルジェのためのチョモを作ってくれている」
『キャン!』
そうだった。今日はオレのための薄味チョモを作ってくれる約束の日だった。ここのチョモは、今までのと違って焼きチョモなのだ。楽しみだな。チョモチョモ~。
食事へと興味が移ったオレを見て、ウィオがホッと息を吐いたのが分かったので、ペロッと頬を舐めると、ちょっと不機嫌な顔で睨んできた。
「ルジェ、もしかして、からかったのか?」
『ドラゴンにお仕置きされちゃったいたずら狐だもん』
えへへ。いたずら成功。
オレはウィオの飼い狐だから、ウィオが困るような騒動を起こすようなことはしないよ。
これは、王子様たちに恥ずかしいことをばらされた仕返しじゃなくて、ちょっとしたコミュニケーション、じゃれあいだ。ウィオが苦笑いしているから、ちょっとやり過ぎちゃったかな。ごめんね。
でもウィオだって、美味しい料理でオレの気がそらせると思っているみたいだから、おあいこだよね。
ネタばらしもしたところで、さあ、ご飯を食べに行こう。
「ルジェ、魔物の移動はもしかして……」
『オレが河原まで送ってもらったからだね。ごめん。全く気にしてなかった』
ドラゴンは神を除けばこの世界の頂点だ。魔物の捕食者なのだ。ドラゴンが動けば、魔物にも影響が出る。そのことに思い至らず、タクシー代わりに使ってしまった。そのせいで人間に影響が出てしまったのは、本当に申し訳ないとしか言えない。
『ウィオ、ドラゴンが現れたせいで出た影響を落ち着かせたいから、手伝ってほしい』
「ルジェが気にする必要はないような気もするが」
『オレはそこまで薄情じゃないよ』
神獣であるオレの希望で幻獣の頂点であるドラゴンが動いた結果、人間に影響が出たとしても、オレたちが責任を感じる必要はないのかもしれない。
でも、オレは人間社会などどうなってもいいとまでは割り切れない。もし影響が出たのがオルデキアの王都だったら。お屋敷の人たちが巻き込まれたら。そう思うと、知らないふりは出来ない。
かと言ってフェゴだけ特別扱いにすると後々問題になりそうだから、ギルドの依頼の範囲での協力だ。ウィオも、ギルドの依頼ならと納得してくれた。
ギルドや王子様に頼まれたとして、何を受けて何を受けないのか、ちゃんと話し合う。
森の魔物を一掃するというような、この混乱に乗じて今までの懸念事項を片づけてしまおうというような依頼は受けない。政治や外交問題が関わりそうな依頼や、貴族が絡んだ依頼も受けない。
嗅覚や足の速さといった狐の能力を必要とする依頼は受けるけど、治癒や浄化能力を必要とする依頼は受けない。
一つ一つ確認して、ウィオと認識を合わせた。この数日のんびりしたから、明日からは依頼を頑張ろう。
そういえば、今までこういう認識合わせはしたことがなかった。オレが何かしようとして、ウィオが止めることが多かった。ウィオの気苦労を減らすためにも、まず最初に行うべきことだった気もする。これからは今回確認したことの範囲内で動くように気をつけよう。
懸念事項への対処が決まったので、胸のつかえがとれた。明日から頑張るためにも今日は美味しい夕食を楽しもうと、今夜の料理に思いをはせながらブラッシングに身を任せていたら、ウィオに思わぬことを尋ねられた。
「ところでルジェ、魔物はドラゴンからは逃げたのに、なぜルジェからは逃げないんだ? ルジェに攻撃力がないからか?」
『違うよ。オレが魔力も神力も抑えて、ちょっと魔力の多い使役獣に擬態しているからだよ』
オレは飼い狐志望だから、人間社会に溶け込むためにも、混乱を生じさせそうな力は隠している。
だから、魔物からはオレがとっても美味しそうに見えている。動物たちは抑えても漏れてしまう神力に寄ってくるけど、魔物たちは抑えても漏れてしまう魔力に寄ってくるのだ。
本性を現せば、きっと今回のドラゴンどころじゃなく、魔物が逃げ惑うんじゃないかな。攻撃力はなくても、圧倒的な魔力と神力に恐れをなして逃げるはずだ。
『何でそんなこと聞くの?』
「魔物がドラゴンの気配に逃げ惑ったと聞いて、なぜルジェからは逃げないのか不思議だったんだ」
もしかして、魔物が森からあふれ出てきたという話をしていたときに、みんなでオレを見ていたのは、そのせい? オレ、ドラゴンよりも弱いと思われてる?
それは、ちょっと悔しいぞ。
『魔力を解放して見せようか? 思いっきり魔物たちを威嚇できるよ?』
「ルジェ、必要ない。変なことを聞いて悪かった」
『よーし、ここはウィオにカッコいいところを見せちゃうよ』
ウィオの膝からおりて、四つ足を床につけて踏ん張る。オレがドラゴンよりも強いということを、ここでちゃんと見せておかないとね。
もふもふの尻尾をピンと立てて準備したところで、ウィオがオレを抱き上げて自分の膝の上にひっくり返して乗せ、お腹をわしゃわしゃと撫で始めた。オレの好きなナデナデで誤魔化そう作戦だな。でも、そんなことで誤魔化されはしないよ。
ウィオの手を甘噛みして、逃れようとジタバタしていると、ウィオがオレを抱いて立ち上がった。
「ルジェ、夕食に行こう。今日はルジェのためのチョモを作ってくれている」
『キャン!』
そうだった。今日はオレのための薄味チョモを作ってくれる約束の日だった。ここのチョモは、今までのと違って焼きチョモなのだ。楽しみだな。チョモチョモ~。
食事へと興味が移ったオレを見て、ウィオがホッと息を吐いたのが分かったので、ペロッと頬を舐めると、ちょっと不機嫌な顔で睨んできた。
「ルジェ、もしかして、からかったのか?」
『ドラゴンにお仕置きされちゃったいたずら狐だもん』
えへへ。いたずら成功。
オレはウィオの飼い狐だから、ウィオが困るような騒動を起こすようなことはしないよ。
これは、王子様たちに恥ずかしいことをばらされた仕返しじゃなくて、ちょっとしたコミュニケーション、じゃれあいだ。ウィオが苦笑いしているから、ちょっとやり過ぎちゃったかな。ごめんね。
でもウィオだって、美味しい料理でオレの気がそらせると思っているみたいだから、おあいこだよね。
ネタばらしもしたところで、さあ、ご飯を食べに行こう。
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