美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい

戌葉

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3年目 オルデキア西部・マトゥオーソ編

11. 護衛依頼終了

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 商会が予約してくれた今日の宿に行くと、責任者はまだ戻ってきていなかった。
 ちょっといいこの宿に泊まるのは、責任者他数人とオレたちだ。護衛たちは安い宿に泊まっているけど、それは高い宿だと緊張するからという本人たちの希望らしい。商会の護衛だから身ぎれいにしているけど、酒場で「ガハハッ!」って笑いながら飲んでる方があってそうだもんね。楽しそうだから、オレもちょっと交ざりたい。

 責任者が帰ってきたら知らせてもらえるようにお願いして、オレたちは夕食だ。
 今日のご飯は何かなー。商会の人がオレのための薄味ご飯も頼んでくれているから、毎晩美味しいご飯をいただいてるよ。

「狐くんには味付け薄めってことだったので、ソースを別添えにしといたよ。飼い主さん、いい具合にかけてあげてちょうだい」
「分かった。ありがとう」
『キャン』

 今日は「鶏肉のソテー、赤パプリカのソース添え」って感じのお皿だ。やわらかそうな白っぽいお肉に、赤い野菜のソース、彩りも考えられた緑や黄色の野菜ソテーが添えられている。「緑黄色野菜を食べよう」っていうポスターが作れそう。
 オレのソースは味付け前に取り分けてくれたそうで、ちょっとなめてみたけどオレの敏感な舌にも優しかった。これなら全部かけてもらっても問題ない。
 ウィオにたっぷりかけてもらって、いざ実食。もぐもぐ。

「私もご一緒していいですか?」
「どうぞ。先にいただいています」

 戻ってきてすぐに食堂に来た商会の責任者さんも同席することになった。
 一足違いで食べ始めちゃった。ごめんね。もぎゅもぎゅ。

「美味しそうに食べていますね」
「紹介してもらった宿の料理は、どこも気に入っています」
『キュフ』
「ふふっ。返事は良いですよ。ゆっくり食べてください」

 ありがとう。いまちょっと食べるのに忙しいから、後でちゃんとお礼を言うね。
 やわらかいけど弾力のあるお肉が美味しい。下ごしらえがいいのかな。もきゅもきゅ、うまうま。
 

 大満足の食事が終わって、今後の話だ。
 お礼は伝えたよ。オレは美味しいものをくれる人へはちゃんと敬意を払う、礼儀正しい狐なのだ。

「あの貴族のご子息様ですが、家には知らせず、ドラゴンを見るためにフェゴへ向かっていたそうです」
「それで家の護衛がいなかったのですね」
「ギルドで護衛を雇ったそうですが、依頼完了前に置き去りにされたと主張されていました」

 ちゃんとお金を払わなかったんだろうなあ。それか、あの坊ちゃんの横暴に耐えかねたのか。まあ責任感を持ったまともな護衛を雇ってはいなかったんだろう。商会の人も、坊ちゃん側にも非があると思っていそうな口ぶりだ。
 ただ、動けない状態にして放置したのはさすがにやり過ぎなので、ギルドが依頼を受けた冒険者を探して罰は与えるそうだ。

 この街の警備隊は、商会に坊ちゃんをこのまま王都まで連れていってもらいたいようで、商会は引き留められている。それで商会は、王都の坊ちゃんの家と連絡が取れるまでは、この街に留まると決めたそうだ。
 マトゥオーソの伯爵家ともめたくないし、もし連れていくことで恩が売れるなら、坊ちゃんのわがままも我慢できるらしい。ただ、関わっちゃいけない要注意貴族じゃないかどうかは調べさせている。さすが商人、チャンスは逃さないけど、リスク管理もしっかりだ。

「実は、ここのギルドの副長に使役獣を狙われていると相談したところ、貴族に逆らわないほうがいいと言われたので、明日早朝この街を出たいのです。次の街で待っています」
「ご子息様もどうなるか分かりませんし、依頼はここで完了にしましょう。依頼料は契約通りお支払いします。どうぞそのまま王都へ向かってください」

 当初の予定から変わって隊商三グループ合同で移動したり、盗賊に襲われたりと、想定外のことがたくさんあったので、その追加手当とこの先の分とで相殺だそうだ。
 ドラゴンに触発された魔物を警戒して雇われたはずなのに、襲ってきたのは人間だったけど。

「警備隊によると、現在ギルド長は王都に出張で不在だそうです。副長の独断ではないでしょうか」
「ギルド前で冒険者に聞きましたが、ギルド自体に悪い評判はなさそうでした」
「そうですね、私も聞いたことがありません」

 隊商は途中で護衛の増員をすることもあるので、冒険者ギルドの評判は気にしているそうだ。旅先で冒険者を雇うとなると、ギルドの紹介を信じるしかない。そのギルドが信用できるかは、商会にとって重要な情報だ。
 もしこの街の滞在中にギルド長が戻ってきたら、副長の問題発言を伝えておくと言ってくれた。
 ギルド長がいないから、副長は貴族と対立するような面倒ごとは避けたかったのかも。
 だからって許してあげないけどね。オレがどうのじゃなくて、使役獣と主人の絆を甘く見られたって意味で。あんなこと食パンくんのご主人に言ったら、ご主人はギルドで暴れていたに違いないし、食パンくんは火を吹いて威嚇しただろうし、毛刈りの街での発言だったら冒険者がボイコットするよ。
 まあ、商人の情報網でうわさが広がっちゃうだろうから、それが一番堪えるかもね。副長だけじゃなくてギルド自体の評判もちょっと落ちちゃうかもしれないけど、地元の冒険者にそっぽを向かれなければ、立て直せるでしょう。

「この先の街の宿は、明日朝お渡しします。お食事のことも伝えてありますので、どうぞお泊りください」
『キャン』

 王都まで美味しいご飯が保証された。やったね。
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