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3章 トルゴード編
3. やりたいこと
理沙の希望で、王都に向かって移動する前に、今いる街の周りの浄化をすることになった。
再度クインスの国境に来るのは嫌なので、今のうちに済まそうという聖女様の希望を優先する、という形だ。
多分王都までいつどこに泊まってというのは決まっていたんだろうから、予定を変えて申し訳ない。
ジェン君はおそらくその予定の組み直し中だろう。今日はターシャちゃんだけが部屋に来ている。
「分かりますよ。私が日本のことを思い出したのは、馬車の乗り心地の悪さがきっかけでしたから」
「そうなんですか?」
「サスペンションが良くないわねと思って、サスペンションがこの世界にはないことで、前世を思い出しました」
ターシャちゃん、絶対理系ね。言葉の端々から理系の感じがするのだ。論理的思考と言うか。
「理沙さん、浄化のことはいったん置いておいて、今後やりたいことはありますか?」
「うーん、大学の進路も決まってなくて、したいことがよく分からないんです。クインスではお母さんの宿を手伝うつもりでいたんですが。お母さんは?」
「まずは冒険者よ。あとは旅行ね」
「ええ?まだ冒険者やるの?だったら私も冒険者やりたい。薬草採取やってみたい」
私が冒険者をしていたことにターシャちゃんが驚いているが、せっかく異世界に来たのだから、定番はやっておくべきだと思う。冒険者が定番だと理沙が教えてくれるまで知らなかったけど。
この世界、どこの国にもギルドはあるけど、依頼は国によって偏りがあるそうだ。ちょっと見てみたい。
それから3人で、何が異世界らしいかで盛り上がった。
やっぱり一番は魔法だけど、この世界に魔法はない。理沙の祈りは魔法なのかもしれないけど、聖女にしか使えない。
「メグちゃんみたいに魔法を使ってみたかったわ」
「メグちゃん?」
「理沙は知らないわね。昔のアニメよ。ターシャちゃん知ってる?」
「名前は知っています。私は月に成り代わりお仕置きする世代ですね。なぜ惑星を差し置いて衛星が主役なのかが納得できませんでした」
「ターシャさんって理系ですよね?」
理沙も同じことを思ったようだ。
そしてやはり理系だった。具体的な名前は覚えていないが、前世はメーカーの技術職だったそうだ。確かに研究とかモノづくりが似合いそうだ。
けれどその時の知識を披露してしまうと、この世界にない技術を持ち込んでしまうので、そこはかなり気を付けているらしい。
「理沙さん、今度浄化の際に私も一緒に行っていいですか?」
「いいですが、なんで?」
「浄化が実際にどう作用しているのかが分かれば、瘴気の対策方法が分かるかと思いまして」
ターシャちゃんが官吏養成学校に通っているのは、いずれお城に努めて、禁書を読みたいからだそうだ。過去の瘴気が蔓延した時の記録は、たぶん禁書になっているらしい。
瘴気が何なのか、どうすれば対処できるのかを調べたい。
「前回の瘴気が蔓延したのって、300年前?」
「政子さん、何かご存じですか?」
「クインスの過去の聖女の記録を見せてもらったけど、前回の召喚は300年前。けれど浄化をする前に亡くなったそうよ」
「その情報は、おそらくトルゴード王国も掴んでいません」
あの時、宰相も見せるのをだいぶ渋ったくらいだ。他国には公開していない情報なのだ。
クインスには恨みしかないが、生活を保障してもらった恩はあるので、砂をかけるようなことはしたくない。それにあの地に住む友人や恩人を思うとあまり事を荒立て、国が荒れるのは望んでいない。
だから、ターシャちゃんには内緒にしてくれるようにお願いした。その代わり、ターシャちゃんには知っていることを全部話した。
いつか、ミュラの宿にも行きたいし、ローズやレイ君にも会いたい。それから気のいい冒険者たちにも。
あの地を訪れるための道は残しておこう。
「ターシャちゃん、こんなこと聞いていいか分からないんだけど……」
「なんでしょう」
「旦那様のあの仮面って、本物?」
「ちょっと、お母さん!」
だって、どうしても聞きたかったのよ。仮面よ。気になるじゃない。
「分かります。私も初対面の時に思いました。魔物につけられた傷を隠すためにしていますが、漫画みたいですよね」
「海賊みたいな眼帯じゃないのねえ」
「眼球は無事なので、視力も普通にありますよ」
ターシャちゃんによると、金属のものや皮のものを、場面によって使い分けているそうだ。
「騎士の仕事の時は邪魔になるからと着けていないんですが、今回は聖女様に前に出るのでしています」
「私、別に気にしませんけど。その、グロくなければ……」
「ありがとうございます。伝えておきます」
普通に傷跡が残っているだけなのに、ご令嬢は傷跡などを見ることがまずないので刺激が強すぎるらしい。
その後、ジェン君は仮面を外して見せてくれたけど、イケメンだった。ここにもイケメン。この世界の騎士はイケメンしかなれないのだろうか。
再度クインスの国境に来るのは嫌なので、今のうちに済まそうという聖女様の希望を優先する、という形だ。
多分王都までいつどこに泊まってというのは決まっていたんだろうから、予定を変えて申し訳ない。
ジェン君はおそらくその予定の組み直し中だろう。今日はターシャちゃんだけが部屋に来ている。
「分かりますよ。私が日本のことを思い出したのは、馬車の乗り心地の悪さがきっかけでしたから」
「そうなんですか?」
「サスペンションが良くないわねと思って、サスペンションがこの世界にはないことで、前世を思い出しました」
ターシャちゃん、絶対理系ね。言葉の端々から理系の感じがするのだ。論理的思考と言うか。
「理沙さん、浄化のことはいったん置いておいて、今後やりたいことはありますか?」
「うーん、大学の進路も決まってなくて、したいことがよく分からないんです。クインスではお母さんの宿を手伝うつもりでいたんですが。お母さんは?」
「まずは冒険者よ。あとは旅行ね」
「ええ?まだ冒険者やるの?だったら私も冒険者やりたい。薬草採取やってみたい」
私が冒険者をしていたことにターシャちゃんが驚いているが、せっかく異世界に来たのだから、定番はやっておくべきだと思う。冒険者が定番だと理沙が教えてくれるまで知らなかったけど。
この世界、どこの国にもギルドはあるけど、依頼は国によって偏りがあるそうだ。ちょっと見てみたい。
それから3人で、何が異世界らしいかで盛り上がった。
やっぱり一番は魔法だけど、この世界に魔法はない。理沙の祈りは魔法なのかもしれないけど、聖女にしか使えない。
「メグちゃんみたいに魔法を使ってみたかったわ」
「メグちゃん?」
「理沙は知らないわね。昔のアニメよ。ターシャちゃん知ってる?」
「名前は知っています。私は月に成り代わりお仕置きする世代ですね。なぜ惑星を差し置いて衛星が主役なのかが納得できませんでした」
「ターシャさんって理系ですよね?」
理沙も同じことを思ったようだ。
そしてやはり理系だった。具体的な名前は覚えていないが、前世はメーカーの技術職だったそうだ。確かに研究とかモノづくりが似合いそうだ。
けれどその時の知識を披露してしまうと、この世界にない技術を持ち込んでしまうので、そこはかなり気を付けているらしい。
「理沙さん、今度浄化の際に私も一緒に行っていいですか?」
「いいですが、なんで?」
「浄化が実際にどう作用しているのかが分かれば、瘴気の対策方法が分かるかと思いまして」
ターシャちゃんが官吏養成学校に通っているのは、いずれお城に努めて、禁書を読みたいからだそうだ。過去の瘴気が蔓延した時の記録は、たぶん禁書になっているらしい。
瘴気が何なのか、どうすれば対処できるのかを調べたい。
「前回の瘴気が蔓延したのって、300年前?」
「政子さん、何かご存じですか?」
「クインスの過去の聖女の記録を見せてもらったけど、前回の召喚は300年前。けれど浄化をする前に亡くなったそうよ」
「その情報は、おそらくトルゴード王国も掴んでいません」
あの時、宰相も見せるのをだいぶ渋ったくらいだ。他国には公開していない情報なのだ。
クインスには恨みしかないが、生活を保障してもらった恩はあるので、砂をかけるようなことはしたくない。それにあの地に住む友人や恩人を思うとあまり事を荒立て、国が荒れるのは望んでいない。
だから、ターシャちゃんには内緒にしてくれるようにお願いした。その代わり、ターシャちゃんには知っていることを全部話した。
いつか、ミュラの宿にも行きたいし、ローズやレイ君にも会いたい。それから気のいい冒険者たちにも。
あの地を訪れるための道は残しておこう。
「ターシャちゃん、こんなこと聞いていいか分からないんだけど……」
「なんでしょう」
「旦那様のあの仮面って、本物?」
「ちょっと、お母さん!」
だって、どうしても聞きたかったのよ。仮面よ。気になるじゃない。
「分かります。私も初対面の時に思いました。魔物につけられた傷を隠すためにしていますが、漫画みたいですよね」
「海賊みたいな眼帯じゃないのねえ」
「眼球は無事なので、視力も普通にありますよ」
ターシャちゃんによると、金属のものや皮のものを、場面によって使い分けているそうだ。
「騎士の仕事の時は邪魔になるからと着けていないんですが、今回は聖女様に前に出るのでしています」
「私、別に気にしませんけど。その、グロくなければ……」
「ありがとうございます。伝えておきます」
普通に傷跡が残っているだけなのに、ご令嬢は傷跡などを見ることがまずないので刺激が強すぎるらしい。
その後、ジェン君は仮面を外して見せてくれたけど、イケメンだった。ここにもイケメン。この世界の騎士はイケメンしかなれないのだろうか。
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