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6章 ベイロール編
6. 失恋の歌
理沙はあの王子様に愛人のことを聞いたらしい。
その答えは、いるけどそれが何か問題あるのかというものだった。それで、もう会わないと決めた。
王族は愛人がいるのが普通なのかもしれないけど、私たちにとっては問題大有りよ。
「あの王子様のどこがよかったの?」
「だって、推しに似てたんだもん」
あー、理沙の好きなあのグループね。マー君王子はアイドルにいそうだなと思ったけど、理沙の好みのど真ん中だったわけか。
「王子様ってやっぱりちょっと憧れるし」
「それはまあ分からなくはないわ」
でもほら、どこぞやの王室を見ていると、他の国の庶民がお妃様になるのって結構大変そうよ。
「それに、王子様と結婚したら将来安泰かなって」
「理沙、意外と計算高い?」
「……お母さんが私の将来を気にしてくれているのが分かってたから。お母さんも冒険者の依頼を受けたりしなくてよくなるし」
だから手っ取り早く庇護者を求めたのか。
私がいろいろ先回りして突っ走るところが、思った以上に理沙を追い詰めていたのかもしれない。
それに魔物に襲われたのを理沙に知られたのは本当に不味かったわ。私以上にショックで責任感じてしまったのでしょうね。
「それは本当に私が悪かったわ。だけどね、実はちょっと安心したのよ」
「お母さん、最初から彼のこと嫌ってたもんね」
「違うわよ。恋愛ができるくらいには心の余裕ができたってことでしょう」
この世界に来た当初は恋愛なんて考える余裕などなかった。訳の分からないことに巻き込まれて、慣れない環境の中で生きていくのが精いっぱいだった。怒りだけでなくもちろん望郷の念もあったし、寂しさと悔しさとやるせなさといった負の感情に振り回された。
この世界の人と恋愛をしようと思えたのは、この世界でこの世界の人たちと生きて行ってもいいと、多少なりとも思えるようになったということなんじゃないかな。
「そうかも」
「これから出会いがたくさんあるわよ」
「しばらくは浄化に専念するもん」
ふふ、頬を膨らませて可愛いわね。
よーし、今日は飲もう。失恋は、飲んで騒いで忘れるに限るわ。
ターシャちゃんとロニアも呼んで、それだけでは寂しいから、護衛の当番ではないデイジーちゃんにも参加してもらおう。
と言っても理沙はまだ20歳になっていないのでジュースね。
「こんな時くらいいじゃない。日本じゃないんだし」
「ダメ。成人年齢が引き下げられたのに飲酒可能年齢が下げられなかったのは、それなりの理由があるはずだからダメ」
駄々をこねてもダメなものはダメ。健康上のリスクがあるから禁止されているんでしょう。それは世界が変わっても変わらないはずよ。
理沙はまだ若いから分からないでしょうけど、健康は何よりも大事。会社の健康診断で毎回何かしら引っかかるようになって、健康の大切さを思い知るのよ。その時に後悔したって時間は巻き戻らないんだから。
飲みながら、過去の恋愛話で盛り上がっている。
ターシャちゃんの元婚約者の愛人さんは子どももいたそうだ。跡取り問題で揉めるからそれはご法度だったらしく、本当はジェン君との婚約するために解消するはずだったのに、相手の有責になったらしい。昼メロドラマだわ。
「ねえ、理沙は、その、あの王子様とは……」
「手も繋いでないわ。とっても健全なお付き合いでした。そんなこと言わせないでよ!」
いろいろ始まる前に私が大騒ぎして壊しちゃったのか。理沙が怒っても仕方がないわね。
「ごめんね」
「大体周りに常に人がいるのに、どうやっていい雰囲気になれるのよ」
理沙が拗ねてる。
そうよね。私はお茶会に付き合わなかったけど、デイジーちゃんたち護衛騎士が常についていたわけだし、寝る部屋は一緒だし。
デイジーちゃんによると、部屋から出て行ってと言われなくても状況を察して扉の外で警護することはあるらしいけど、なんだかいろいろ筒抜けね。
次に理沙が誰かといい雰囲気になったときはもう少し気を遣ってあげないと、関係が深まる前に理沙が諦めてしまうかもしれないわ。
空気を変えるように、デイジーちゃんが今までに出会った最低なヤツという暴露話を始めた。
女性騎士は、騎士団内部で付き合うことが多いらしいけど、職場恋愛っていろいろ面倒もあるわよ。
「口説いてきたくせに、自分より強い女は無理って言われました」
「ひどーい!」
「そんなヤツはこっちから願い下げです」
「そうだそうだ!」
騎士だけでなく、ちょっと勘違いした貴族のぼんぼんから言い寄られたりもするようで、いろんな話が出てくる出てくる。
いい感じに場が温まってはいるけど、理沙が一番酔っているように見える。デイジーちゃんの話に大きくリアクションして、一緒に怒ったり笑ったり。
「ターシャちゃん、理沙の飲み物ってお酒じゃないよね?」
「違います。ただのジュースですよ。場に酔っているのでしょう」
そもそも私たちもそんなに強いお酒を飲んでいるわけじゃないのに、今日はなんでもありって雰囲気で気も大きくなっている。
理沙もそんな感じなのかも。いろいろな鬱憤を晴らしちゃいなさい。
デイジーちゃんの話が終わったので、次は私の番。よし、行こう。
「3番、マサコ、歌いまーす!」
失恋の歌と言えばやっぱりほら、お気に入りの唄を一人で聴く、あなたが愛したのは私の幻って曲ね。ジャスミンティーが飲みたくなったわ。
ターシャちゃんは、歌姫とボディーガードの恋を描いた映画の主題歌だって。
でも理沙のは聞いても分からなかった。仕事で若い子との会話について行けるように、時間があるときには音楽番組を見ていたはずだったのに、記憶力の問題かしら。
その答えは、いるけどそれが何か問題あるのかというものだった。それで、もう会わないと決めた。
王族は愛人がいるのが普通なのかもしれないけど、私たちにとっては問題大有りよ。
「あの王子様のどこがよかったの?」
「だって、推しに似てたんだもん」
あー、理沙の好きなあのグループね。マー君王子はアイドルにいそうだなと思ったけど、理沙の好みのど真ん中だったわけか。
「王子様ってやっぱりちょっと憧れるし」
「それはまあ分からなくはないわ」
でもほら、どこぞやの王室を見ていると、他の国の庶民がお妃様になるのって結構大変そうよ。
「それに、王子様と結婚したら将来安泰かなって」
「理沙、意外と計算高い?」
「……お母さんが私の将来を気にしてくれているのが分かってたから。お母さんも冒険者の依頼を受けたりしなくてよくなるし」
だから手っ取り早く庇護者を求めたのか。
私がいろいろ先回りして突っ走るところが、思った以上に理沙を追い詰めていたのかもしれない。
それに魔物に襲われたのを理沙に知られたのは本当に不味かったわ。私以上にショックで責任感じてしまったのでしょうね。
「それは本当に私が悪かったわ。だけどね、実はちょっと安心したのよ」
「お母さん、最初から彼のこと嫌ってたもんね」
「違うわよ。恋愛ができるくらいには心の余裕ができたってことでしょう」
この世界に来た当初は恋愛なんて考える余裕などなかった。訳の分からないことに巻き込まれて、慣れない環境の中で生きていくのが精いっぱいだった。怒りだけでなくもちろん望郷の念もあったし、寂しさと悔しさとやるせなさといった負の感情に振り回された。
この世界の人と恋愛をしようと思えたのは、この世界でこの世界の人たちと生きて行ってもいいと、多少なりとも思えるようになったということなんじゃないかな。
「そうかも」
「これから出会いがたくさんあるわよ」
「しばらくは浄化に専念するもん」
ふふ、頬を膨らませて可愛いわね。
よーし、今日は飲もう。失恋は、飲んで騒いで忘れるに限るわ。
ターシャちゃんとロニアも呼んで、それだけでは寂しいから、護衛の当番ではないデイジーちゃんにも参加してもらおう。
と言っても理沙はまだ20歳になっていないのでジュースね。
「こんな時くらいいじゃない。日本じゃないんだし」
「ダメ。成人年齢が引き下げられたのに飲酒可能年齢が下げられなかったのは、それなりの理由があるはずだからダメ」
駄々をこねてもダメなものはダメ。健康上のリスクがあるから禁止されているんでしょう。それは世界が変わっても変わらないはずよ。
理沙はまだ若いから分からないでしょうけど、健康は何よりも大事。会社の健康診断で毎回何かしら引っかかるようになって、健康の大切さを思い知るのよ。その時に後悔したって時間は巻き戻らないんだから。
飲みながら、過去の恋愛話で盛り上がっている。
ターシャちゃんの元婚約者の愛人さんは子どももいたそうだ。跡取り問題で揉めるからそれはご法度だったらしく、本当はジェン君との婚約するために解消するはずだったのに、相手の有責になったらしい。昼メロドラマだわ。
「ねえ、理沙は、その、あの王子様とは……」
「手も繋いでないわ。とっても健全なお付き合いでした。そんなこと言わせないでよ!」
いろいろ始まる前に私が大騒ぎして壊しちゃったのか。理沙が怒っても仕方がないわね。
「ごめんね」
「大体周りに常に人がいるのに、どうやっていい雰囲気になれるのよ」
理沙が拗ねてる。
そうよね。私はお茶会に付き合わなかったけど、デイジーちゃんたち護衛騎士が常についていたわけだし、寝る部屋は一緒だし。
デイジーちゃんによると、部屋から出て行ってと言われなくても状況を察して扉の外で警護することはあるらしいけど、なんだかいろいろ筒抜けね。
次に理沙が誰かといい雰囲気になったときはもう少し気を遣ってあげないと、関係が深まる前に理沙が諦めてしまうかもしれないわ。
空気を変えるように、デイジーちゃんが今までに出会った最低なヤツという暴露話を始めた。
女性騎士は、騎士団内部で付き合うことが多いらしいけど、職場恋愛っていろいろ面倒もあるわよ。
「口説いてきたくせに、自分より強い女は無理って言われました」
「ひどーい!」
「そんなヤツはこっちから願い下げです」
「そうだそうだ!」
騎士だけでなく、ちょっと勘違いした貴族のぼんぼんから言い寄られたりもするようで、いろんな話が出てくる出てくる。
いい感じに場が温まってはいるけど、理沙が一番酔っているように見える。デイジーちゃんの話に大きくリアクションして、一緒に怒ったり笑ったり。
「ターシャちゃん、理沙の飲み物ってお酒じゃないよね?」
「違います。ただのジュースですよ。場に酔っているのでしょう」
そもそも私たちもそんなに強いお酒を飲んでいるわけじゃないのに、今日はなんでもありって雰囲気で気も大きくなっている。
理沙もそんな感じなのかも。いろいろな鬱憤を晴らしちゃいなさい。
デイジーちゃんの話が終わったので、次は私の番。よし、行こう。
「3番、マサコ、歌いまーす!」
失恋の歌と言えばやっぱりほら、お気に入りの唄を一人で聴く、あなたが愛したのは私の幻って曲ね。ジャスミンティーが飲みたくなったわ。
ターシャちゃんは、歌姫とボディーガードの恋を描いた映画の主題歌だって。
でも理沙のは聞いても分からなかった。仕事で若い子との会話について行けるように、時間があるときには音楽番組を見ていたはずだったのに、記憶力の問題かしら。
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