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8章 ローズモス編
3. 血中濃度
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「聖女様、ローズモス王国へようこそお越しくださいました」
「お出迎えありがとうございます」
国境まで迎えに来てくれたのは、理沙のお披露目にも来ていた王太子殿下だ。
ベイロールも国境まで来てくれたのは王太子だったし、聖女を歓迎していると示すためには必要なのだろう。
今回は王都へ行く途中ですべての浄化を終わらせることになっている。ローズモスで浄化が必要な所はトルゴード側の少しだけなので、やるべきことをすべて終わらせてから、旅行を楽しみたいという理沙の希望だ。
そのために、王太子殿下にも浄化に付き合ってもらうことになってしまうが、事前に伝えたところ浄化を見てみたいと乗り気だったらしい。
トルゴードの王子様とお妃様も一緒なので、対応はそちらにお任せしよう。
「ソトゥースク殿は既にご覧になったそうですが、どういう感じなのですか?」
「聖女様から光が周りへと広がっていきますが、光がこの身を包み込んで私自身も浄化されるように感じました」
少し離れたところにいる王子様たちの会話に耳を傾けていると面白い会話が聞こえた。
へえ。私はそんな風に感じたことはなかったわ。ロニアに聞くと、ロニアも同じように感じたらしい。
「ターシャちゃんは?」
「あくまで気分の問題かもしれませんが、身の内の瘴気が浄化されるような気がしました。政子さんが感じないのは、もしかするとこの世界の瘴気に染まっていないからかもしれませんね」
この世界で育っていなければ、そもそも浄化される瘴気が溜まっていないから、何も感じない可能性があるのか。
血液検査のように血中濃度が数値で見えたりしないから分からないけど、アルコールの摂取でγ-GTPの値が上がるみたいに、瘴気を摂取することで上昇するものがあるのかもしれない。健康診断の後にはお酒好きの同僚たちがγ-GTPの値を報告し合ってたのを思い出すわ。
そんな話をしているうちに、理沙の準備が整ったようで、指を組んで祈り始めた。
こうして浄化をするのも後数回だ。それでお役目は終わる。
理沙の被っているベールが理沙の身体が光るのと同時にふわっと持ち上がり、それから光が四方八方へと一気に広がった。久しぶりの浄化だからずいぶんと気合いを入れたみたいだ。
しばらく感動に言葉もない様子だったローズモスの王太子が、我に返って呟いた。
「これは……、心まで浄化されるようですね」
「本当に。何度見ても、この奇跡には感動を覚えます」
そんな王子様たちとは裏腹に、理沙は今日のご飯何かなあと、すでに気分は夕食へと飛んでいる。
前回のクインスへの旅ではいつ魔物が出てきて襲われるか分からない、緊張を強いられるところでの浄化が多かったので、今回理沙はずいぶんとリラックスしている。護衛のカーラちゃんたちも気を抜いてはいないけど、前のようにピリピリした雰囲気はない。
「ターシャさんは、どこの国の料理が好きですか?」
「やはりローズモスでしょうか。国土も広く地域によって味付けも異なるので、何かしら気に入る味付けがあると思いますよ」
クインスは素材の味を生かす感じの料理が多く、ベイロールはスパイシーな料理が多かった。ターシャちゃんの出身地であるボターニは脂っこいものが多いらしい。
クインスでもトルゴードでも、食べ物が合わないってことがなかったのは幸いだったわ。
「レリチア様にローズモスは甘いものが美味しいって聞きました」
「庶民にも手が出せるのはローズモスだけですね。砂糖の原料となる植物がよく育つ土地のお陰です」
ローズモスの広い国土には農地が多い。
「この周りは麦畑かしら」
「この辺りはそうですね。魔物が少ないのでこうして農業ができるのです」
この世界はどこまでいっても魔物に振り回されるのね。
見渡す限りの畑は、クインスやトルゴードでは見なかった景色だ。
魔物が出ない農業に適した土地にあるからこそ、このローズモス王国は大国になったのだろう。
対してクインスやトルゴードは外壁に囲まれた街や村の中で、魔物から隠れて息をひそめるように生活している。
クインスは独自の文化を発展させてきた古い国だと聞いたけど、それは周りの国が自国の領土に組み込みたいと思うほどの魅力がなかったから国としてあり続けたのだともとれる。
その中でクインスは、聖女に救いを求めた。勝手に連れてこられた側としては決して許せる行為ではないけれど、こうして魔物に脅かされることのない地域を見ると、彼らの気持ちも分からなくはないと思ってしまう。
そんな土地はあきらめて移住すればいいじゃないかと思わなくもないけれど、私たちだって自然災害の多発する国に住んでいたのだ。なぜそんな危険なところに住み続けるんだと言われると、そこで生まれたからとしか答えられない。
理沙の聖女召喚を止めたいという望みは雲をつかむような話だけれど、とっかかりとして魔物図鑑と瘴気の地図の作成が始まっている。
それが魔物に脅かされているこの世界の人と、将来聖女として召喚されるかもしれない人の両方に明るい未来をもたらしてくれるように祈ろう。
「お出迎えありがとうございます」
国境まで迎えに来てくれたのは、理沙のお披露目にも来ていた王太子殿下だ。
ベイロールも国境まで来てくれたのは王太子だったし、聖女を歓迎していると示すためには必要なのだろう。
今回は王都へ行く途中ですべての浄化を終わらせることになっている。ローズモスで浄化が必要な所はトルゴード側の少しだけなので、やるべきことをすべて終わらせてから、旅行を楽しみたいという理沙の希望だ。
そのために、王太子殿下にも浄化に付き合ってもらうことになってしまうが、事前に伝えたところ浄化を見てみたいと乗り気だったらしい。
トルゴードの王子様とお妃様も一緒なので、対応はそちらにお任せしよう。
「ソトゥースク殿は既にご覧になったそうですが、どういう感じなのですか?」
「聖女様から光が周りへと広がっていきますが、光がこの身を包み込んで私自身も浄化されるように感じました」
少し離れたところにいる王子様たちの会話に耳を傾けていると面白い会話が聞こえた。
へえ。私はそんな風に感じたことはなかったわ。ロニアに聞くと、ロニアも同じように感じたらしい。
「ターシャちゃんは?」
「あくまで気分の問題かもしれませんが、身の内の瘴気が浄化されるような気がしました。政子さんが感じないのは、もしかするとこの世界の瘴気に染まっていないからかもしれませんね」
この世界で育っていなければ、そもそも浄化される瘴気が溜まっていないから、何も感じない可能性があるのか。
血液検査のように血中濃度が数値で見えたりしないから分からないけど、アルコールの摂取でγ-GTPの値が上がるみたいに、瘴気を摂取することで上昇するものがあるのかもしれない。健康診断の後にはお酒好きの同僚たちがγ-GTPの値を報告し合ってたのを思い出すわ。
そんな話をしているうちに、理沙の準備が整ったようで、指を組んで祈り始めた。
こうして浄化をするのも後数回だ。それでお役目は終わる。
理沙の被っているベールが理沙の身体が光るのと同時にふわっと持ち上がり、それから光が四方八方へと一気に広がった。久しぶりの浄化だからずいぶんと気合いを入れたみたいだ。
しばらく感動に言葉もない様子だったローズモスの王太子が、我に返って呟いた。
「これは……、心まで浄化されるようですね」
「本当に。何度見ても、この奇跡には感動を覚えます」
そんな王子様たちとは裏腹に、理沙は今日のご飯何かなあと、すでに気分は夕食へと飛んでいる。
前回のクインスへの旅ではいつ魔物が出てきて襲われるか分からない、緊張を強いられるところでの浄化が多かったので、今回理沙はずいぶんとリラックスしている。護衛のカーラちゃんたちも気を抜いてはいないけど、前のようにピリピリした雰囲気はない。
「ターシャさんは、どこの国の料理が好きですか?」
「やはりローズモスでしょうか。国土も広く地域によって味付けも異なるので、何かしら気に入る味付けがあると思いますよ」
クインスは素材の味を生かす感じの料理が多く、ベイロールはスパイシーな料理が多かった。ターシャちゃんの出身地であるボターニは脂っこいものが多いらしい。
クインスでもトルゴードでも、食べ物が合わないってことがなかったのは幸いだったわ。
「レリチア様にローズモスは甘いものが美味しいって聞きました」
「庶民にも手が出せるのはローズモスだけですね。砂糖の原料となる植物がよく育つ土地のお陰です」
ローズモスの広い国土には農地が多い。
「この周りは麦畑かしら」
「この辺りはそうですね。魔物が少ないのでこうして農業ができるのです」
この世界はどこまでいっても魔物に振り回されるのね。
見渡す限りの畑は、クインスやトルゴードでは見なかった景色だ。
魔物が出ない農業に適した土地にあるからこそ、このローズモス王国は大国になったのだろう。
対してクインスやトルゴードは外壁に囲まれた街や村の中で、魔物から隠れて息をひそめるように生活している。
クインスは独自の文化を発展させてきた古い国だと聞いたけど、それは周りの国が自国の領土に組み込みたいと思うほどの魅力がなかったから国としてあり続けたのだともとれる。
その中でクインスは、聖女に救いを求めた。勝手に連れてこられた側としては決して許せる行為ではないけれど、こうして魔物に脅かされることのない地域を見ると、彼らの気持ちも分からなくはないと思ってしまう。
そんな土地はあきらめて移住すればいいじゃないかと思わなくもないけれど、私たちだって自然災害の多発する国に住んでいたのだ。なぜそんな危険なところに住み続けるんだと言われると、そこで生まれたからとしか答えられない。
理沙の聖女召喚を止めたいという望みは雲をつかむような話だけれど、とっかかりとして魔物図鑑と瘴気の地図の作成が始まっている。
それが魔物に脅かされているこの世界の人と、将来聖女として召喚されるかもしれない人の両方に明るい未来をもたらしてくれるように祈ろう。
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