願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉

文字の大きさ
284 / 286
学園編

158. 第一回学園祭の反省会

 このあとは、反省会だ。来年も行うなら、今年の問題点を今のうちに洗い出して、対応策を考えておきたい。来年、いざ準備となったときには、細かいことは忘れているだろう。「三か月後の自分は他人」って、仕事でよく言っていたなあ。

 参加しているのは、領主であるお兄さんと、学園長のウィオ、学科長たち、そして騎士代表の部隊長さんだ。オレが出席すると、どうしてもオレの言葉が聞ける人たちに限られる。

「抽選の問題点はどうだ?」
「予想以上に希望者がいたため、最後のほうは当たりのボールがなくなってしまいました」

 今回は、大体これくらいいるだろうという数のボールの中に、色つきのボールを混ぜて、それを引いた人が当たり、としていた。どうやらその数の見積もりが甘かったらしい。総数が分かってからの抽選じゃないから難しいねえ。

「グループごとの抽選にしたので、遅れてくる人も入れてほしいという要望がありました」
「どう対処した?」
「全員揃ってから並び直してもらいました」

 ごねる人がいて、最終的には騎士が出ていって並び直させた。ルールを先に知らせておく必要があるね。グループの最大人数も決めておいたほうがいいだろう。

『半分は事前抽選にしたら?』
「あたりくじを狙っておそわれる」
『キュウ』
「今回の神罰騒ぎで減るでしょうが、来年になれば忘れる者も出るでしょう」

 のど元過ぎれば、ってやつだね。それに、いわゆる転売ヤーが現れるかもしれない。
 当たるか当たらないか分からないもののために足を運ばせるのは申し訳ない気もするけど、その場で抽選が一番問題が少ないのだろう。

「今回の評判が広まれば、魔法披露を見るために入学試験を受ける者も出てきそうです」
「あり得そうだな」

 入学試験を受ける子どもと保護者は、授業見学と魔法披露に無条件で参加できる。そのためだけに、入学試験のお金を払う人も出てきそうだ。
 予想以上に問題が山積みで、来年の開催がすでに危ぶまれるぞ。

「宿ができるまでは、魔法披露は非公開にするほうがいいかもしれないな」
「魔法に関する情報交換が目的ですから、それが一番丸く収まりそうです」
「ですが、要望が一番高いのは魔法の見学です。周辺国と協力しているというのも、アピールポイントですので、続けたほうがいいと思います」

 今後おそらく、愛し子の参加が減ることはない。横のつながりができてよかったと、みんな口をそろえてこの機会を作ったウィオに感謝していた。ついてきた魔術師たちも前のめりに来年もあるのかと聞いてきたくらいだから、同行者も減らないだろう。

『愛し子会議と魔術師学会と薬師学会を、学園祭とは別に開催したら?』
「学会、ですか?」
『そう。研究の成果を披露するのと、意見交換の場。そこで魔法披露もしちゃえば? それなら関係者しかいないでしょ』
「そこで生徒と魔術師のみに披露するのですね。それでしたら、混乱も避けられるでしょう」
「学会ですか。新しく開発した薬を公開するとなると、薬師も集まりますが、集まりすぎる気もしますの」
「魔法と薬で分けたほうがいいか」

 今回の本来の目的であった愛し子たちの意見交換は、愛し子会議で達成された。魔法披露は、学園の紹介として初年度だけの特別メニューでした、とすれば周りも納得してくれるはず。
 それで一般の観客が押し寄せることは抑えられるけど、じゃあ学会参加者たちはどこに泊まるのかという問題が出てくる。

「学園祭は、学園長と水の騎士様の魔法披露のみで、一般の観客も抽選で見学可能。宿が十分にできてから、研究会と意見交換会を行い、そこで子どもたちと魔術師のみに魔法披露をしてもらう。という方針でよろしいでしょうか?」
「そうしよう」

 町医者先生が、議事録にまとめてくれている。
 とにかく宿ができないことにはどうにもならないので、来年以降の開催については年が明けてから考えよう。

「警備は?」
「午後の部は、何もなく終わりました。午前の部はいろいろとありましたが……」
『ごめんなさい。反省してます。二度としません』
「いいえ。我々が上手く抑えられず、お手をわずらわせてしまい、申し訳ございません」

 姿勢を正して土下座をしているけど、逆に謝られてしまう。
 部隊長さん、固いよ。オレがちょっとやらかしちゃっただけだから、気にしないでほしいなあ。

「あれはルジェが悪い。来年から、ルジェは抽選会場には入れない」
『キャンキャン! ちゃんと反省して、来年はエンジェルルジェになります!』
「ダメだ」
『ガルルッ!』
「そのほうがよろしいでしょう」
「そうだねえ、ルジェくん。来年は一緒に見学しようか」
『キューン』

 全員がうんうんとうなずいている。満場一致で賛成って、くやしいぞ。来年になったらみんな忘れていてくれないかなあ。
 あ、町医者先生、議事録にいまの話は書かないで! 記録に残っちゃうじゃない!

「今後は騎士団に応援を頼む必要があると思います。今回以上に人が集まると、特別部隊だけでは、手が足りません」
『入っちゃいけないところには、入ったら警報が鳴るような魔法陣を書いておいたら?』
「それでも、入ったものを捕まえに行く人手が必要になる」
『じゃあ、オレの結界を張っておく』
「やめろ。なぜ入れないのか興味を持って、教師たちが壊そうとするぞ?」

 え、そっち? まさかの身内に敵がいるなんて。マダム先生も苦笑しているから、これは魔法学科総出で謎の解明に乗り出すような面倒な事態が起きそうだ。
 騎士団長さんに迷惑をかけちゃうけど、騎士を派遣してもらうほうがよさそうだ。二十五人じゃ、さすがに無理だよね。かといって日常的に増員しても仕事はないから、臨時派遣してもらうのが無難だ。

『じゃあさ、王都からくる騎士に警備を任せて、特別部隊の勝ち抜き戦をしようよ!』
「ルジェが見たいだけだろう」
『そうだけど、目標があったほうが日々の訓練も気合が入るでしょう?』
「特別部隊は神獣様のための部隊です。武力で目立つのはよくないと思います」

 特別部隊には、そもそも敵がいない。特別部隊に剣を向けるということは、神獣に剣を向けるということだから、仮想の敵を考えるなら、神にあだなす者となる。そんなの、人間にどうこうできる相手じゃないでしょう。

「カエルラ殿、むしろ奉納試合としてしまえばよいのでは?」
『キャン!』
「兄上、ルジェが興奮して走り回るのが目に見えているのですが」
「そこはほら、今回の羽で解決できるだろ」

 オレという神獣に見せるのだから、奉納試合だ。ウィオがちょっと失礼なことを言っているけど、興奮しちゃうのは仕方がないでしょう。きっとワクワクするような試合が見られるよね。いまから胸が躍るなあ。
 羽がハーネスになっていて、オレが走り回らないように使われるのはちょっと心外だけど。

「部隊長が圧勝するぞ?」
『そこは、縛りありで。ほら、フェゴの王子様みたいな補助にしか魔法を使っちゃいけませんとか』
「あれは、隊員たちもかなりの刺激を受けたようで、さっそく挑戦していますよ。まだだれも成功していませんが」
「では、特別部隊の騎士による奉納試合を学園祭の演目としましょう」

 フェゴの王子様、やっぱりハイスペックだったんだねえ。でも、いいねえ、刺激を受けて挑戦するの。これこそ、多国間交流のだいご味でしょう。
 魔法込みにすれば、当然部隊長さんが勝っちゃうけど、剣だけとか、補助魔法だけとか、みんなが活躍できるようなルールを作ってほしい。

『そうだ! 特別部隊と王都の騎士の対戦にしようよ。絶対に盛り上がるよ!』
「ダメだ」
「ルジェくん、それはダメだよ。特別部隊が負ければ問題になるから、王都の騎士は本気を出せない」

 特別部隊は神獣のための部隊。その騎士を王都の騎士が負かしてしまえば、その程度の騎士を神獣につけているのかと問題になってしまう。

『じゃあさ、勝ったら特別部隊に入れるっていうのは?』
「それこそ、絶対に許可できない」
『なんで!』

 面白そうじゃない。編入を希望する騎士の前に立ちはだかる騎士たち。ラスボスは部隊長さん。それでもダメならウィオ。どうせ誰も勝てないのだからいいじゃない。とっても盛り上がるよ。
 そう訴えたのに、だれも賛同してくれなかった。

「周辺国からも希望者が殺到する。ダメだ」
「神獣様はご自身の影響力をもう少し考えるべきですなあ」
「ルジェくん、薬学科長が言うように、もうちょっと自分が神獣だってことを自覚してほしいな」
『キュゥ』
感想 818

あなたにおすすめの小説

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

辺境伯は才女を隠さない

放浪人
恋愛
王太子の名で出された政策。その多くを書いていたのは、婚約者セレナだった。 けれど彼女は報われるどころか「冷たい悪役令嬢」と噂され、不正の責任を負わされて婚約破 棄。 厄介払い同然に送られた北辺で待っていたのは、無骨で寡黙な辺境伯オスカー。 だが彼だけは、彼女の仕事も価値も最初から知っていた。 「その案は良い。君の名で公告を出す」 隠されてきた才女が、自分の名を取り戻し、やがて王宮すら覆す――。

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

離縁した元夫が毎日のように押しかけてきますが、もう私は辺境伯家の妻です

なつめ
恋愛
妹ばかりを優先する夫と、そんな夫を当然のように擁護する実家に、長年尽くしてきた侯爵夫人イリディア・レーヴェニア。 夫のため、家のため、妹のため。 そう言われるたびに自分を後回しにしてきた彼女は、ある日、流産をきっかけに悟る。 自分は妻ではなかった。 愛されていたのでも、守られていたのでもない。 ただ都合よく働き、黙って耐え、壊れても替えが利く“便利な駒”だったのだと。 離縁後、静養のため北の辺境を訪れたイリディアは、無愛想で寡黙な辺境伯セヴラード・ノルヴァイルと出会う。 豪奢ではない屋敷。 冷たい風の吹く土地。 けれどそこには、温かな食卓と、彼女の顔色を気にしてくれる使用人たちと、不器用ながら誠実に手を差し伸べる男がいた。 やがてイリディアはセヴラードと再婚し、ようやく穏やかな居場所を手に入れる。 しかし、彼女を失って初めてその価値に気づいた元夫は、毎日のように辺境伯家へ押しかけてくる。 妹は「姉だけ幸せになるなんて許せない」と彼女の新しい暮らしを壊そうとし、実家は「家のために戻れ」と迫る。 けれど、もうイリディアは戻らない。 これは、失うだけだった女が、自分の居場所を守るために立ち上がる物語。 血のつながりでも、婚姻の形でもなく、自分を大切にしてくれる場所こそが家なのだと知る物語。

『「君の役目は妹で足りる」と婚約破棄されたので辺境へ去りましたが、滅びかけた王国より先に私の領地が大陸最強になっていました』

常陸之介寛浩📚️書籍・本能寺から始める
恋愛
あらすじ 王太子アルベルトの婚約者として、王都の政務と社交を陰から支えてきた公爵令嬢レティシア。 だが華やかで愛らしい妹エミリアに心を奪われた王太子は、公衆の面前で婚約破棄を宣言する。 「君の役目は妹で足りる」 その言葉に、レティシアは微笑んでうなずいた。 婚約者も、地位も、名誉も、王都での役目も――すべて妹に譲って、王国最北の荒れ果てた辺境領へ去る。 誰もが彼女の没落を信じた。 辺境は痩せた土地、尽きかけた鉱脈、荒れる街道、魔物被害、疲弊した民。 とても令嬢ひとりに立て直せる土地ではない。 ……はずだった。 だが、王都で“地味な婚約者”と蔑まれていた彼女こそ、財務、兵站、外交、治水、徴税、流通、貴族調整まで一手に回していた真の実務者だった。 水路を引き、街道を繋ぎ、鉱山を再生し、魔物を退け、辺境諸族と盟約を結ぶ。 やがて小さな辺境領は、富も軍も人も集まる巨大勢力へと変貌していく。 一方、レティシアを失った王都では、妹と元婚約者による“華やかな政治”が破綻を始めていた。 崩れる財政、乱れる社交、反発する諸侯、迫る凶作、忍び寄る隣国の影。 今さら「戻ってきてほしい」と言われても、もう遅い。 これは、 すべてを奪われたはずの令嬢が辺境から国を超える力を築き、 やがて滅びかけた王国と大陸の秩序そのものを塗り替えていく、 婚約破棄から始まる超大作ファンタジー。

「お産の手伝いなど下女の仕事だ」と追放された産婆令嬢、公爵夫人の難産を、誰も取り上げられなかった

Lihito
ファンタジー
産婆の技を「まやかし」と蔑んだ宮廷医師に婚約を破棄され、王都を追われたフィリーネ。 山あいの町で医師カールと出会い、産婆不在の地で母子の命を守り始める。 やがて王都では逆子の分娩に失敗した元婚約者が信頼を失い、若い女性医師マルガレーテが自らの意志でフィリーネを訪ねてくる。 三日間の実技指導で産婆術を託されたマルガレーテは王都に戻り、その報告が医学院を動かす。 産婆術は正式な医療技術と認定され、元婚約者は資格を剥奪された。 命を迎える手は、静かな町で今日も温かい。

「たかが産婆の娘が、公爵家に嫁ぐなど」と追放された令嬢——三ヶ月後、領地でお産のできる者が誰もいなくなった

歩人
ファンタジー
「産婆の血を引く女など恥だ」——ヘルツォーク公爵家に嫁いだフローラは、家柄を理由に追放された。フローラの母は領地で唯一の助産師だった。母の死後、フローラがその技術を受け継ぎ、五年間で二百三十七人の赤子を取り上げた。逆子、前置胎盤、双子の難産——魔法治癒師が匙を投げた命を、フローラの手だけが救った。追放から三ヶ月で三件の難産事故。領民の怒りは公爵家に向いた。「フローラ様を返せ」——署名は八百を超えた。辺境の漁村で産婆として働くフローラのもとに、かつて取り上げた子供を抱いた母親が訪れる。

うちに待望の子供が産まれた…けど

satomi
恋愛
セント・ルミヌア王国のウェーリキン侯爵家に双子で生まれたアリサとカリナ。アリサは黒髪。黒髪が『不幸の象徴』とされているセント・ルミヌア王国では疎まれることとなる。対してカリナは金髪。家でも愛されて育つ。二人が4才になったときカリナはアリサを自分の侍女とすることに決めた(一方的に)それから、両親も家での事をすべてアリサ任せにした。 デビュタントで、カリナが皇太子に見られなかったことに腹を立てて、アリサを勘当。隣国へと国外追放した。