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書籍化記念
1. 建国祭の劇
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(冒険者編の前、ルジェの正体が分かり、ウィオが騎士団をやめる前のお話です)
第三部隊の遠征の帰り道。
オレの正体が分かってから、お城の騎士団の訓練場にはほとんど顔を出していない。だけど遠征にはついていく。飼い主のお仕事を手伝うのは、飼い狐なら当然のことだ。
今回、オレはウィオの使役獣として、野営地で騎士に癒やしを提供するという、大切な仕事を勤めあげた。
やり遂げたすがすがしい気持ちで、王都へ向かうウィオのお馬さんに乗って風を感じていると、横に並ぶ副隊長さんがウィオに話しかけた。
「隊長、今年の建国祭の劇、うちの当番です」
「……そうか。ヴィンに任せる」
「いやいや、考えてくださいよ」
『副隊長さん、劇って何?』
「毎年建国祭に、騎士団で子どもたちのために劇をするんですよ。その当番がまわってきたんです」
建国祭は、文字どおりオルデキア王国の建国をお祝いする日で、お城でも街中でもお祭りが催される。お城の前では騎士団が国の歴史に関わる劇をして、子どもたちに見せる。なんで騎士団が担当するかというと、それで子どもたちに親しみを持ってもらって、大きくなったときに入団してほしいから、らしい。
だけど、台本も使いまわしで、業務もあってそんなに練習もできないのでクオリティーが低く、子どもたちの評判はいまいちなんだとか。騎士に劇なんて、目的は理解できるが、手段を間違えている気がしないでもない。
孤児院の子たちが世話係の大人の引率で必ず見に来てくれるので、観客がいないってことだけは免れるそうだ。
『じゃあ、オレが考える!』
「ちびっこが?」
ウィオの遠征について出かける以外はお屋敷でのんびりしているので、オレには時間がたっぷりある。
オレはこの国に対して加護を与える気はない。けれど、ウィオについて騎士団に出入りしていたら、オレがこの国の所属だと勘違いされてしまう。だから、お城には行かないで、お屋敷でのんびり飼い狐生活を楽しんでいるのだ。さぼってるわけじゃないよ。
『子どもが楽しめるものにするよ。出るのは、ウィオの隊の人だけ?』
「そうですが、ちびっこがお願いすれば、陛下だって出演されるでしょう」
うーん、王様は王様以外の役ができないからなあ。ひとまずウィオの隊の騎士で考えて、足りなくなったら考えよう。
まずはこの国の歴史について知らなければ、劇も考えられない。オレの知識にはないから、帰ったら詳しい人に聞こう。
『執事さん、建国祭の騎士の劇って知ってる?』
「存じ上げておりますよ」
遠征から帰って最初にすることは、執事さんにお風呂に入れてもらうことだ。
『今年はオレが考えることになったんだけど、この国の歴史で劇になりそうなのでおすすめって何?』
「それはもちろん、ルジェ様のご降臨でしょう」
却下。子どもに神罰を見せちゃうのはよくないと思うよ。清く正しく生きましょうっていう教訓にするには強烈すぎる。
やっぱり子どもに人気がある題材となると、冒険と友情でしょう。みんなで力を合わせて困難に立ち向かう、そういうのがいいな。あと、動物が出てくると、子ども受けはよさそう。
「それでしたら、この地に最初の国を築いた、ローランド王国の建国記はどうでしょうか」
『どんなお話?』
「国を失った騎士が、相棒の獅子と旅をしてこの地にたどり着き、森からあふれる魔物を倒して街を作り、いつしか人が集まり国となった。それがローランド王国の始まりだと伝わっています」
『それ、よさそう!』
詳しく聞いたローランド王国建国記はこうだ。
――騎士ローランドは、祖国が滅ぼされたために、獅子の幻獣アリシャンドラを相棒として旅にでた。そして、美しくも危険なこの地にたどり着く。住む場所を求めてこの地に流れてきた人たちをまとめ、魔物から身を守るための街を作り始める。騎士は剣をとり、獅子と五人の仲間とともに魔物を退け、城壁を築き、やがて街が出来上がった。人々は、騎士と獅子に感謝の気持ちを示し、騎士を国王として選んだ。
「この建国記は、私が知る限り上演されていません」
『なんで?』
「三代前の王朝ですし、獅子役をやる騎士がいないのでしょう」
そういえば、動物役ってどうやるんだろう。お遊戯会みたいにお面をつけるんだと思っていたんだけど、違うのかな?
聞いてみると、なんと、着ぐるみを作るのが主流だった。だから、顔が隠れる役はみんなやりたがらない。
本格的だねえ。貴族がお金に任せてって感じなのかな。森の設定だと本物の木を持ってきたりするらしい。でもそういうのって大変だよ。
『頭に絵をつけちゃえばいいよ。獅子ですって言ったら、子どもは分かってくれるよ』
「それは簡単でよさそうですが……」
高いクオリティーを求めるから面倒になっちゃうんだよ。削れるところは削っちゃおう。子どもの柔らかい頭なら、豊かな想像力で補ってくれるよ。
登場人物は、騎士と仲間五人、それに獅子。盛り上げるために戦闘シーンは必要だから、魔物役が六人は必要だ。さらにナレーションが一人必要だし、裏方が二人は必要だよね。これで十六人。
ウィオの隊の隊員は二十人だから、街の人は諦めて、魔物を十人にしちゃう? やっぱり戦闘シーンを派手にするのがいいよね。
『ねえ執事さん、あらすじが決まったら、セリフを一緒に考えてくれる?』
「もちろんですよ」
やった。これで台本が作れる気がしてきた。
明日、副隊長さんに案を聞いてもらって、大筋を決めよう。
第三部隊の遠征の帰り道。
オレの正体が分かってから、お城の騎士団の訓練場にはほとんど顔を出していない。だけど遠征にはついていく。飼い主のお仕事を手伝うのは、飼い狐なら当然のことだ。
今回、オレはウィオの使役獣として、野営地で騎士に癒やしを提供するという、大切な仕事を勤めあげた。
やり遂げたすがすがしい気持ちで、王都へ向かうウィオのお馬さんに乗って風を感じていると、横に並ぶ副隊長さんがウィオに話しかけた。
「隊長、今年の建国祭の劇、うちの当番です」
「……そうか。ヴィンに任せる」
「いやいや、考えてくださいよ」
『副隊長さん、劇って何?』
「毎年建国祭に、騎士団で子どもたちのために劇をするんですよ。その当番がまわってきたんです」
建国祭は、文字どおりオルデキア王国の建国をお祝いする日で、お城でも街中でもお祭りが催される。お城の前では騎士団が国の歴史に関わる劇をして、子どもたちに見せる。なんで騎士団が担当するかというと、それで子どもたちに親しみを持ってもらって、大きくなったときに入団してほしいから、らしい。
だけど、台本も使いまわしで、業務もあってそんなに練習もできないのでクオリティーが低く、子どもたちの評判はいまいちなんだとか。騎士に劇なんて、目的は理解できるが、手段を間違えている気がしないでもない。
孤児院の子たちが世話係の大人の引率で必ず見に来てくれるので、観客がいないってことだけは免れるそうだ。
『じゃあ、オレが考える!』
「ちびっこが?」
ウィオの遠征について出かける以外はお屋敷でのんびりしているので、オレには時間がたっぷりある。
オレはこの国に対して加護を与える気はない。けれど、ウィオについて騎士団に出入りしていたら、オレがこの国の所属だと勘違いされてしまう。だから、お城には行かないで、お屋敷でのんびり飼い狐生活を楽しんでいるのだ。さぼってるわけじゃないよ。
『子どもが楽しめるものにするよ。出るのは、ウィオの隊の人だけ?』
「そうですが、ちびっこがお願いすれば、陛下だって出演されるでしょう」
うーん、王様は王様以外の役ができないからなあ。ひとまずウィオの隊の騎士で考えて、足りなくなったら考えよう。
まずはこの国の歴史について知らなければ、劇も考えられない。オレの知識にはないから、帰ったら詳しい人に聞こう。
『執事さん、建国祭の騎士の劇って知ってる?』
「存じ上げておりますよ」
遠征から帰って最初にすることは、執事さんにお風呂に入れてもらうことだ。
『今年はオレが考えることになったんだけど、この国の歴史で劇になりそうなのでおすすめって何?』
「それはもちろん、ルジェ様のご降臨でしょう」
却下。子どもに神罰を見せちゃうのはよくないと思うよ。清く正しく生きましょうっていう教訓にするには強烈すぎる。
やっぱり子どもに人気がある題材となると、冒険と友情でしょう。みんなで力を合わせて困難に立ち向かう、そういうのがいいな。あと、動物が出てくると、子ども受けはよさそう。
「それでしたら、この地に最初の国を築いた、ローランド王国の建国記はどうでしょうか」
『どんなお話?』
「国を失った騎士が、相棒の獅子と旅をしてこの地にたどり着き、森からあふれる魔物を倒して街を作り、いつしか人が集まり国となった。それがローランド王国の始まりだと伝わっています」
『それ、よさそう!』
詳しく聞いたローランド王国建国記はこうだ。
――騎士ローランドは、祖国が滅ぼされたために、獅子の幻獣アリシャンドラを相棒として旅にでた。そして、美しくも危険なこの地にたどり着く。住む場所を求めてこの地に流れてきた人たちをまとめ、魔物から身を守るための街を作り始める。騎士は剣をとり、獅子と五人の仲間とともに魔物を退け、城壁を築き、やがて街が出来上がった。人々は、騎士と獅子に感謝の気持ちを示し、騎士を国王として選んだ。
「この建国記は、私が知る限り上演されていません」
『なんで?』
「三代前の王朝ですし、獅子役をやる騎士がいないのでしょう」
そういえば、動物役ってどうやるんだろう。お遊戯会みたいにお面をつけるんだと思っていたんだけど、違うのかな?
聞いてみると、なんと、着ぐるみを作るのが主流だった。だから、顔が隠れる役はみんなやりたがらない。
本格的だねえ。貴族がお金に任せてって感じなのかな。森の設定だと本物の木を持ってきたりするらしい。でもそういうのって大変だよ。
『頭に絵をつけちゃえばいいよ。獅子ですって言ったら、子どもは分かってくれるよ』
「それは簡単でよさそうですが……」
高いクオリティーを求めるから面倒になっちゃうんだよ。削れるところは削っちゃおう。子どもの柔らかい頭なら、豊かな想像力で補ってくれるよ。
登場人物は、騎士と仲間五人、それに獅子。盛り上げるために戦闘シーンは必要だから、魔物役が六人は必要だ。さらにナレーションが一人必要だし、裏方が二人は必要だよね。これで十六人。
ウィオの隊の隊員は二十人だから、街の人は諦めて、魔物を十人にしちゃう? やっぱり戦闘シーンを派手にするのがいいよね。
『ねえ執事さん、あらすじが決まったら、セリフを一緒に考えてくれる?』
「もちろんですよ」
やった。これで台本が作れる気がしてきた。
明日、副隊長さんに案を聞いてもらって、大筋を決めよう。
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