願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉

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書籍化記念

3. 脚本家デビュー

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 その日の夕方、仕事も夜会もなかったのか、珍しく夕食の席にお父さんがいた。
 劇に出てもいいか聞いてみようと思っていたら、食事が終わった後の団らんで、お父さんのほうから話を振ってくれた。

「ルジェくん、騎士団の劇の台本を考えているんだって?」
『あのね、オレも劇に出ることになったんだけど、問題ない?』
「ルジェくんが?」
『そう。ローランド王の相棒である、獅子ししの幻獣役』
「あら、ルジェちゃん、獅子になるの? それは可愛いたてがみを作らなきゃ」

 どうやら問題ないらしい。というかお母さんが乗り気になっちゃったから、きっと問題があってもお父さんが何とかしてくれるだろう。お父さんも苦笑しているけど止めないから、これは決定だな。
 オレのサイズじゃ小さすぎるから、顔出しパネルみたいなのにしたらどうかと思ってたんだけど、お母さんがたてがみを作るってことは、小さいままになる。

『オレじゃ小さすぎると思うんだけど、いいのかなあ』
「人間が頭に絵を乗せるのと、ルジェがたてがみをつけるのと、どっちもどっちだろう」
『たしかに』

 じゃあ、オレは獅子の演技頑張らないとね。今から練習しよう。

『ガオーッ』
「どうした? 食べ物が詰まったのか?」
『違うよ。獅子のまね』

 うーん、獅子だと思ってもらえなかった。特訓が必要だ。でも、ライオンは、動物番組で見たくらいの知識しかない。
 この世界の獅子について聞いてみると、ほとんどの人が見たことがなかった。ローランド王の相棒の幻獣で、たてがみがある、ということしか一般的には知られていないらしい。だったら、きっとこれが獅子だと言い張れば獅子だと思ってもらえるはず。ネコ科だから猫のマネでいいだろう。

 猫のように抜き足差し足で、お父さんに近寄って、猫のようなあざと可愛さでおねだりだ。にゃーん。

『お父さん、台本を考えるのに、執事さんを借りてもいい?』
「もちろんだよ。獅子のルジェくんも可愛いねえ。シェリス、頼む」
「シェリス、ルジェの相談に乗ってもらって悪いな」
「ルジェ様の発想はとても興味深いですので、私も勉強になります」

 わーい、褒めてもらえた。まあほとんどは前世の知識だけどね。
 オレに劇の経験があることにみんなが驚いているけど、多分想像しているのは本格的なもので、そういう経験はない。オレにあるのはお遊戯ゆうぎ会とか学習発表会とか、なんちゃっての劇の経験だけど、素人しろうと感丸出しの劇だって、それなりに楽しめる。誰も騎士団に本格的な劇なんて求めてないんだから、騎士団にしかできない劇をすればいいのだ。

 褒められたのがうれしくて執事さんの足元でぐねんぐねんになっていたら、抱き上げて顎の下をなでてくれた。執事さん、大好き。

「ルジェくん、獅子じゃなくて猫になったみたいだね」
『にゃん』
「ルジェちゃんのための猫の帽子も作っちゃおうかしら」
「それは可愛いだろうねえ」

 よーし、この先一か月はネコ科になろう。んにゃあ。

 それから数日かけ、執事さんに相談に乗ってもらって、一緒に台本を完成させた。

「ルジェ様、『建国』ではなく、『国を作る』としたほうがいいでしょう」
『そっか。子どもには難しいよね』

 セリフの一言一言を、子どもにも分かるやさしい言葉に変えてくれる。有能な執事さんは、脚本まで書けるなんて、すごいねえ。

 一つ誤算があって、台本を考えてもオレの可愛い肉球では文字が書けないのだ。だから、全部執事さんに書いてもらった。
 主人公たちのそれぞれの見せ場を作って、もちろんオレの見せ場も作って、でもウィオの演じる賢者はしゃべらないもくキャラにして。後は、戦闘シーンの詳細を副隊長さんと詰めれば、出来上がり。

 戦闘シーン以外は出来上がった脚本を、副隊長さんとウィオに見てもらおう。
 ストーリーテラーを副隊長さんに任せるから、りんおうへんにやってもらってかまわないけど、しっかりとしたものができたから、ただ読むだけでも問題ないはずだ。

「よくできてますね」
『執事さんが頑張ってくれたの』
「大枠はいいと思うのですが、隊員たちがセリフを覚えられないかもしれません」
『覚える必要ないよ。セリフを大きな紙に書いて、裏方に見せてもらうから』
「客席から見えませんか?」
『見えてもいいよ。子どもたちだって、騎士がそんなに上手に演技ができるなんて思ってないって。大切なのは、魔物を倒す場面の戦闘』

 そこは本職だからちゃんとやってほしい。
 セリフを覚えようと思うから大変になっちゃうんだよ。黒子くろこがカンペを持っていたっていいじゃない。誰も気にしないって。
 目的が騎士に親しみを持ってもらって、騎士の志望者を増やすことなら、演技が上手かどうかよりも、剣を使う場面のほうが重要だ。
 戦闘の場面は、普通の劇団ではできないところなんだから、本気でやってね。

 副隊長さんの意見を取り入れて、少し修正したら、台本の最後にオレの肉球でサインして、きゃくほん家デビュー作品の完成だ。
 原案はオレ、脚本は執事さんって感じだけど、共同作品ってことで。
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