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学園編
14. 学園行事
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学園は初秋の九月に新年度が始まる。二学期制で、国外からの留学生のために、短い休みはなしで長期休暇を二回設けている。
新年は家で迎えられるように、十二月中旬に前期が終わって休暇に入り、一月と二月の前半は休みだ。後期は六月末から一年の勉強の進み具合を確認する試験があり、終われば休暇に入る。
ウィオとオレは、久しぶりに学園に戻ってきた。ここにウィオがいるのがバレると騒がしくなってしまうので、冒険者の格好で髪の毛を隠して、こっそりと。
今検討しているのは、学園祭と入学試験の時期だ。
最初の入学試験は入学式の二か月前にしていた。水の子は、試験のためにトゥレボルからオルデキアに移動し、入学式までオルデキアに留まることになった。二か月の間に二往復は、馬車に弱い水の子には負担になるからだ。そうすると、その間の滞在費がかかる。
「国外からの移動を考えると、学園祭と入学試験、それに入学式のどれかは、同じ時期にしたほうがいいのではありませんか? 入学前に二回も学園を訪れるのは、費用的に難しい人もいるでしょう」
「学園祭で授業見学会を行い、そのまま入学試験がいいと私は思います。授業が思っていたのと違えば、試験を受けずに帰ればいいでしょう」
「となると、決めることは学園祭と入学試験をいつにするか、ですね」
話し合っているのは、学科長たちで、ウィオはただ聞いているだけだ。学園長なのにそれでいいのかなと思うけど、最終的な責任さえ負ってくれれば、現場に口を出さないのはいい上司なのかもしれない。
「前期にしますか? 後期にしますか? 私は後期のほうがいいと思いますが」
「私も後期がいいと思います」
「賛成ですが、六月末は学年末試験がありますから、六月は試験に集中させたほうがいいでしょうね」
それぞれ意見を言いながらも無駄がなく、話の進みが早い。ウィオのいない間、こうやって三人でいろいろ決めてきたんだろうな。
学園祭と入学試験は、冬期休暇明けから準備を初めて、四月と決まった。在校生は必要なら冬期休暇中にアイデアを練っておいて、休暇明けから準備に取り掛かることができる。試験生は四月に試験を受けて、九月の入学までにゆっくりと寮に入る準備ができる。
「では、学園祭は四月の最初の週、入学試験は学園祭終了後にしましょう。学園長、よろしいですか?」
「問題ない」
『キャン』
「次は、学園祭の内容ですね」
魔法学科長であるマダム先生が仕切って、会議が進んでいく。マダム先生はマトゥオーソの宮廷魔術師からの転身だから、きっともっと面倒な話し合いをたくさん乗り切ってきたのだろう。予算が、期間が、ときつく言われない会議って、楽だね。
学園は、予科が二年間、本科が五年間ある。学園祭には予科の生徒たちは任意参加、本科は強制参加とする。魔法学科は魔法の披露、薬学科はポーションを作成して販売の予定だったが、最初の数年は上級生がいないので、派手な魔法合戦も売り物になるようなポーションの作成もできない。
「今の生徒たちが最上級生になるまで、学園祭はやめておきますかの?」
「そうですねえ。魔法学科も、魔法を披露して、神獣様の加護がありながらこの程度かと言われてしまうと、生徒たちがかわいそうです」
「少なくとも最初の三年間は、授業を見せるだけにしたほうがよいのではありませんか? 特に今年度は学園に注目が集まりすぎていますので」
オレのせいで注目が集まっている中、学園祭を開催すれば、たくさんの人が来るだろう。そのときに、大したことなかったと思われてしまうと、子どもたちがかわいそうだ。オレがハードルを上げてしまったから、申し訳ない。
『ウィオと部隊長さんの試合を見せたら?』
「氷の騎士と水の騎士の戦いですか。それは盛り上がるでしょうなあ」
「ルジェ、自分が見たいだけだろう」
『えへへ』
まあそうなんだけど、でも精霊の愛し子はこんなことができますよ、と見せるのもいいんじゃないかと思うのだ。それに、水の子に部隊長さんの魔法を見せてあげたいし。
『あんなにすごいことができるようになるんだぞっていうのを見せたら、子どものころの暴走も大目に見てもらえたりしない?』
「そうですね。子どもは理解できないものを怖がります。精霊の愛し子の特性だと知るには、いいかもしれませんね。予科の子どもたちは、あまり魔法を見る機会もないので、喜びますよ」
予科の学科長は、丸眼鏡をかけたお医者さんだ。予科の生徒は庶民だから、教師も庶民や庶民に近い下位貴族の経験者を雇っている。そのために誰もが学科長になるのを固辞して、なり手がいなかった。それを知って立候補してくれたのが、学校医として雇った町医者さんだ。貴族の出身で、でも庶民相手の町医者をしながら、空いた時間に子どもたちに読み書きも教えている、教育熱心な変わり者だ。
「私も興味があります。おそらくマトゥオーソの宮廷魔術師も見に来ますよ」
『じゃあ決まり! それで、見学料を取ろう』
「水の騎士については、騎士団に相談しておく」
部隊長さんは国の所属だから、勝手に決められない。戦力が知られてしまうことは防衛にもかかわるから、王様の許可がなければこの話は企画倒れになる。
許可が出れば、見たい人はたくさん集まるだろうから、見学料が集まりそうだ。
「授業の見学も、無料にすると人が集まりすぎるでしょうから、有料にしますか」
「入学試験の申し込みを、見学会の前にして、申し込み者のみに絞ってはどうかの?」
「それですと、申し込みだけして試験を受けないものが出るのではないでしょうか」
『たくさんくるのは最初の一回だけじゃない?』
「そうですのう。初回のみ試験申し込み者以外は有料として、翌年は様子を見ますか」
来年の話をすると鬼が笑っちゃうから、ひとまず一回目だけのことを決めよう。
『受験料は取らなくて平気? 無料だと記念受験の人がいっぱい来るんじゃない?』
「ですが、それはこの学園の趣旨に反します」
お金に余裕のない家の子どもも受けられるようにと、初回は受験料をもらわなかった。
「だが神獣様の仰ることももっともじゃの。来年は神獣様目当てに、受験生がどれほど来るか」
「合格すれば、その受験料は授業料の一部にあてればいいのではありませんか? そうすれば、合格者には受験料が無料となり、真剣に入学を希望する者以外から徴収できます」
「いいですね。賛成です」
それでもたくさん来ちゃうだろうけど、受験の教室が足りないなんてことにはならないだろう。
だいたい決めたいことは決まった。後は、国やお兄さんと相談した後に、詳細を詰めよう。
新年は家で迎えられるように、十二月中旬に前期が終わって休暇に入り、一月と二月の前半は休みだ。後期は六月末から一年の勉強の進み具合を確認する試験があり、終われば休暇に入る。
ウィオとオレは、久しぶりに学園に戻ってきた。ここにウィオがいるのがバレると騒がしくなってしまうので、冒険者の格好で髪の毛を隠して、こっそりと。
今検討しているのは、学園祭と入学試験の時期だ。
最初の入学試験は入学式の二か月前にしていた。水の子は、試験のためにトゥレボルからオルデキアに移動し、入学式までオルデキアに留まることになった。二か月の間に二往復は、馬車に弱い水の子には負担になるからだ。そうすると、その間の滞在費がかかる。
「国外からの移動を考えると、学園祭と入学試験、それに入学式のどれかは、同じ時期にしたほうがいいのではありませんか? 入学前に二回も学園を訪れるのは、費用的に難しい人もいるでしょう」
「学園祭で授業見学会を行い、そのまま入学試験がいいと私は思います。授業が思っていたのと違えば、試験を受けずに帰ればいいでしょう」
「となると、決めることは学園祭と入学試験をいつにするか、ですね」
話し合っているのは、学科長たちで、ウィオはただ聞いているだけだ。学園長なのにそれでいいのかなと思うけど、最終的な責任さえ負ってくれれば、現場に口を出さないのはいい上司なのかもしれない。
「前期にしますか? 後期にしますか? 私は後期のほうがいいと思いますが」
「私も後期がいいと思います」
「賛成ですが、六月末は学年末試験がありますから、六月は試験に集中させたほうがいいでしょうね」
それぞれ意見を言いながらも無駄がなく、話の進みが早い。ウィオのいない間、こうやって三人でいろいろ決めてきたんだろうな。
学園祭と入学試験は、冬期休暇明けから準備を初めて、四月と決まった。在校生は必要なら冬期休暇中にアイデアを練っておいて、休暇明けから準備に取り掛かることができる。試験生は四月に試験を受けて、九月の入学までにゆっくりと寮に入る準備ができる。
「では、学園祭は四月の最初の週、入学試験は学園祭終了後にしましょう。学園長、よろしいですか?」
「問題ない」
『キャン』
「次は、学園祭の内容ですね」
魔法学科長であるマダム先生が仕切って、会議が進んでいく。マダム先生はマトゥオーソの宮廷魔術師からの転身だから、きっともっと面倒な話し合いをたくさん乗り切ってきたのだろう。予算が、期間が、ときつく言われない会議って、楽だね。
学園は、予科が二年間、本科が五年間ある。学園祭には予科の生徒たちは任意参加、本科は強制参加とする。魔法学科は魔法の披露、薬学科はポーションを作成して販売の予定だったが、最初の数年は上級生がいないので、派手な魔法合戦も売り物になるようなポーションの作成もできない。
「今の生徒たちが最上級生になるまで、学園祭はやめておきますかの?」
「そうですねえ。魔法学科も、魔法を披露して、神獣様の加護がありながらこの程度かと言われてしまうと、生徒たちがかわいそうです」
「少なくとも最初の三年間は、授業を見せるだけにしたほうがよいのではありませんか? 特に今年度は学園に注目が集まりすぎていますので」
オレのせいで注目が集まっている中、学園祭を開催すれば、たくさんの人が来るだろう。そのときに、大したことなかったと思われてしまうと、子どもたちがかわいそうだ。オレがハードルを上げてしまったから、申し訳ない。
『ウィオと部隊長さんの試合を見せたら?』
「氷の騎士と水の騎士の戦いですか。それは盛り上がるでしょうなあ」
「ルジェ、自分が見たいだけだろう」
『えへへ』
まあそうなんだけど、でも精霊の愛し子はこんなことができますよ、と見せるのもいいんじゃないかと思うのだ。それに、水の子に部隊長さんの魔法を見せてあげたいし。
『あんなにすごいことができるようになるんだぞっていうのを見せたら、子どものころの暴走も大目に見てもらえたりしない?』
「そうですね。子どもは理解できないものを怖がります。精霊の愛し子の特性だと知るには、いいかもしれませんね。予科の子どもたちは、あまり魔法を見る機会もないので、喜びますよ」
予科の学科長は、丸眼鏡をかけたお医者さんだ。予科の生徒は庶民だから、教師も庶民や庶民に近い下位貴族の経験者を雇っている。そのために誰もが学科長になるのを固辞して、なり手がいなかった。それを知って立候補してくれたのが、学校医として雇った町医者さんだ。貴族の出身で、でも庶民相手の町医者をしながら、空いた時間に子どもたちに読み書きも教えている、教育熱心な変わり者だ。
「私も興味があります。おそらくマトゥオーソの宮廷魔術師も見に来ますよ」
『じゃあ決まり! それで、見学料を取ろう』
「水の騎士については、騎士団に相談しておく」
部隊長さんは国の所属だから、勝手に決められない。戦力が知られてしまうことは防衛にもかかわるから、王様の許可がなければこの話は企画倒れになる。
許可が出れば、見たい人はたくさん集まるだろうから、見学料が集まりそうだ。
「授業の見学も、無料にすると人が集まりすぎるでしょうから、有料にしますか」
「入学試験の申し込みを、見学会の前にして、申し込み者のみに絞ってはどうかの?」
「それですと、申し込みだけして試験を受けないものが出るのではないでしょうか」
『たくさんくるのは最初の一回だけじゃない?』
「そうですのう。初回のみ試験申し込み者以外は有料として、翌年は様子を見ますか」
来年の話をすると鬼が笑っちゃうから、ひとまず一回目だけのことを決めよう。
『受験料は取らなくて平気? 無料だと記念受験の人がいっぱい来るんじゃない?』
「ですが、それはこの学園の趣旨に反します」
お金に余裕のない家の子どもも受けられるようにと、初回は受験料をもらわなかった。
「だが神獣様の仰ることももっともじゃの。来年は神獣様目当てに、受験生がどれほど来るか」
「合格すれば、その受験料は授業料の一部にあてればいいのではありませんか? そうすれば、合格者には受験料が無料となり、真剣に入学を希望する者以外から徴収できます」
「いいですね。賛成です」
それでもたくさん来ちゃうだろうけど、受験の教室が足りないなんてことにはならないだろう。
だいたい決めたいことは決まった。後は、国やお兄さんと相談した後に、詳細を詰めよう。
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