願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉

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学園編

15. 授業の進み具合

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「授業の進み具合はどうだ?」
「魔法学科は、予定通りに進んでいます。レーナさんだけが少し遅れていますが、他の生徒がよく面倒を見ています」
「読み書きや計算を予科のほうで少し見ていますが、彼女はとても勉強熱心です。年明けからは予科の補修は不要になると思います」

 レーナというのは、土の精霊に愛されている子どもだ。ずっと隠れるようにへきの村に住んでいたために存在が知られていなかった。土魔法の子は例外なく貴族に引き取られるので、それを嫌って隠れ住んでいたらしい。
 精霊の愛し子をこの学園で受け入れると公表したのを聞いて、村に出入りする行商人が知らせてくれた。今は二番目のお兄さんが後見人となって、学園に通っている。
 クラスメイトが親切にしているのは、いずれは自分の領で働いてもらいたいという下心も多少はあるのだろうけど、それでも仲良くできているなら安心だ。

「学園長のように、使役獣を持ちたいという生徒が多いですよ」
『キャン』

 生徒の前に出るときはいつもウィオとセットだから、パートナーという感じにあこがれているそうだ。ぜひぜひ、かっこいい使役獣と契約してほしいなあ。それで、学園もふもふ部を作りたい。もちろん、つるっとした子も歓迎だよ。

「無理やりに契約するようなことがあれば、ルジェが契約を解除する。嫌がる契約はしないようにと、そのことは徹底してくれ」
「解除、できるのですね……」

 息をのんだあと、マダム先生が独り言のようにつぶやいた。契約の解除は本来、契約主からしかできないから、この反応が普通なのだろう。大福くんの契約を解除したときに第三部隊の騎士が誰も驚いていなかったので、なんだか新鮮だ。

「薬学科も予定通りです。基本的な知識と、下処理の仕方を教えています。長期休暇に入る前に、一番基本的なポーションの作り方を教えて、休暇中に練習できるようにする予定です」
「薬師については全く分からないので、任せる」

 すがすがしいほどに、ウィオが丸投げしている。まあね、ポーションは使う専門のウィオに、指導の仕方なんて分かるはずもない。おじいちゃん先生に試行錯誤してもらおう。
 子どもたちは試験のときにポーションを作っているけど、もう一度ちゃんと基礎から教えているそうだ。

「予科は、毎回小テストをしているのですが、少しずつ差が開いてきているのが分かります」
ばんかいはできそうか?」
「冬季休暇に宿題は出しますが、さらに差が広がる気もします。やる気の問題ですので」

 予科は、安く学べるなら行ってみようという軽い気持ちで入学試験を受けた子どもが多い。だから、やる気のある子はどんどん学び、ない子は遅れていく。神獣に会えたことで頑張る気になった子もいるけど、その学園にいることが周りからうらやましがられることだと気づいていない子もいる。気づいていても、勉強嫌いの子はやる気がでないだろう。こればっかりは仕方がない。

「予科は、学年末試験で落ちる生徒が出るでしょう」
「そうか」
「予科の学生は、よほどでなければ進学させてはどうでしょうか。本科への入学試験では落ちるでしょうが」
「よく分からないまま、親に通わされている子どももいるでしょうから、一年で辞めさせるのはかわいそうですね」

 学年末試験に落ちたら、退学と決まっている。授業料を安くする代わりに、留年はさせない。それは入学前に伝えてある。
 けれど予科だけは二年間は学ぶ機会を与えようと、町医者先生が提案している。

「来年、やる気のある年下の子どもが入ってくれば、気持ちも変わるかもしれません」
「それはありそうだな」

 神獣が加護を与える学校で、安く学べるのだ。来年は予科も倍率が跳ね上がるだろう。その狭き門を潜り抜けてきた下級生を見て、やる気を出してくれることを祈ろう。

 それで学習状況の確認は終わって、次はお休みの確認だ。

「学園長、カイさんは次の冬季休暇でトゥレボルに帰省する予定ですか?」
「いや、学年末試験後の夏季休暇だけの予定だ。何か問題があるか?」
「生徒たちの間で帰省の話が出始めているので、少し心配になりまして」
「王都でリュカと遊ぶのを楽しみにしていたから、問題ない」

 今いる生徒の中で一番帰省に時間がかかるのは、水の子だ。トゥレボルが遠いというのもあるが、馬車に弱い水の子のために、かなり余裕をもって日程を組む必要がある。そのため、水の子の帰省は夏だけと、トゥレボルの神官と決めてある。マダム先生は水の子だけ寮に残されてしまうのではないかと心配してくれたようだ。冬の間は王都のお屋敷に居候して、トゥレボルから神官が来て、一緒に過ごす予定だ。ちょっと特別扱いになっちゃうけど、学園長の家ではなくて、火の子の家ってことで納得してほしい。

「薬学科のほうの帰省は問題なさそうか?」
「休暇中に学園の設備を使わせてもらえないかという話が出ております」
「許可するのか?」
「休暇中は教師が研究のために使いますので、その邪魔にならない範囲であればと思っておりますが、どうですかの?」
「生徒間で不公平が出ないように、ルールを決めてはいかがですか? その話を聞けば、魔法学科も訓練場を使いたい生徒が出てくるかもしれません」

 ポーションを作る器具や設備も、魔法を安全に使える訓練場も、裕福な貴族なら家にあるかもしれないが、そうでなければ練習する場がない。せっかくやる気のある子どもたちには、練習する場を与えてあげたい。

『自習の日を決めて、その日は指導の先生付きで施設を開放したら?』
「なるほど。それはよさそうです。前期授業の終わった翌週と、後期授業の始まる前の週でどうでしょう?」

 みんなが納得して自習週間が作られることになった。

 少しずつ学園の形が定まっていく。それが面白くて、尻尾が振れてしまう。

「ルジェ、ご機嫌だな」
『未来を作っている感じがしていいよね』
「未来か」
「子どもたちの未来ですね」

 希望があふれているようで、なんだかうれしい。
 きっと待ち受けているのは楽しいことばかりじゃないだろうけど、それでも自分で選んだ未来を歩んでいってほしい。
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