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学園編
21. お休みの過ごし方
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さて、今日は一日お休みだ。何をしようかな。
『今日は何をする予定?』
「特にない。ルジェは何かしたいことはあるか?」
『うーん、アチェーリの食パンくんに会いに行くには時間がないし、何しようか』
この山の反対側にアチェーリ王国があって、そこで使役獣仲間の食パンくんとその飼い主さんが冒険者として活動している。食パンくんには会いに行きたいけど、馬で飛ばしても一日で往復できる距離ではない。
「ドラゴンに会いに行ったほうがいいんじゃないか?」
『え、いいよ。また今度で』
「ルジェに会うために、飛んでくるんじゃないか?」
『大丈夫じゃない? ウィオが会いたいなら、近いうちに行こうか』
ドラゴンの住む山は、ここからは距離があるけれど、同じ山脈にある。また会いに行くと約束して、しばらく行っていないから、行ったほうがいいんじゃないかとウィオが心配している。ドラゴンのちょっと前は百年前だったりするから、まだ大丈夫だろう。
オレだけ顔を出してくることはできるけど、ウィオはドラゴンにあこがれているから、今度都合をつけて一緒に行こう。
『今日はこのまま部屋でごろごろしようよ』
「そうだな」
神獣の眷属騒ぎがあってから、街をぶらぶら歩くときも、なんとなく視線を感じる。特にここは交易路だから、耳ざとい商人も多い。出かけて、わざわざ騒ぎを呼び寄せる必要もない。
『ベッドにうつぶせに寝て』
「急にどうした? こうか?」
『うん。お客さん、こってますねー』
ウィオの背中に乗って、肉球ふみふみマッサージだ。このあたりが堅いけど、ただの筋肉かな? ウィオは細見に見えるけど、剣士でもあるからしっかり筋肉はついている。戦う筋肉の状態なんて、よく分からない。でもマッサージは気持ちいいはず。
「なんの遊びだ?」
『遊びじゃないよ。筋肉の疲労をとるためのマッサージ』
「……そうか。爪を立てるなよ」
何をしているのかとまどってはいるものの、迷惑しているわけではなさそうだ。だけど、ふみふみは効いていないから、身体が軽すぎるんだろう。じゃあ、足の裏ならどうかな? ふみふみ、ふみふみ。
「やめろ。くすぐったい」
『もう! いつもなでてもらう代わりに、ふみふみマッサージしようと思ったのに』
「気持ちだけもらっておく。ありがとう」
ウィオが起き上がってしまった。戦うなら身体が資本だから、マッサージで役に立ちたかったのに。
仕方がないから、全身治癒しておこう。これで疲れは取れたでしょう。
ウィオと宿の部屋でだらだらとおしゃべりをしながら過ごした翌日、朝から薬師ギルドを訪ねると、ギルド長が待ち構えていた。
「氷の騎士様、薬草の効能が分かりました!」
どの薬草がどう使えるかを興奮気味に伝えてくるギルド長に、ウィオが押されている。
香りが同じなら同じ効能のもの、見た目が似ていてもまったく効能がことなるもの、中には毒が含まれていたものもあったそうだ。
あの山の薬草は、今後もなるべく使わない方針は変えない。よく知らない人が使えば事故が起きかねないからだ。けれど、今回のように少しずつ効能を解明していく作業は続けるらしい。
「その情報を、ネウラの学園にも共有してもらえますか? 薬学科長が興味を持っていました」
「もちろんです。前の薬師長様ですよね。こちらからお願いしたいくらいです」
そんなこと言ったら、長期休暇におじいちゃん先生がうきうきと出張してくるんじゃないかな。
「季節熱にはこの薬草が必要ですので、これを採取してもらえますか?」
「分かりました。ルジェ、覚えてくれ」
『キャン』
くんくん。これは、最初に季節熱用の薬草だと見せてくれたものと同じ香りだね。ただ元のものより、葉っぱがかなり大きくなっているけど。
「作り方は少し変える必要があったのですが、葉が大きい分、薬もたくさん作ることができるので、これで南部の薬不足は解消されるでしょう」
「よかったです」
「できれば、大まかに生えている場所をおしえていただけますか?」
「戻ったら報告します」
あの険しい山に入ることができるのか分からないけど、でもまた薬草が不足したときにウィオが来られるとは限らない。冒険者に依頼を出すためにも、場所を把握しておきたいのだろう。
探すものも決まったので、これからしばらく山の中にこもって薬草探しだ。薬草ハンターの名にかけて、お仕事を頑張るぞ。
お試し用に薬草を採ったところから、山の中腹を西へ移動しながら薬草を探す。
ふんふん、くんくん、発見。お目当ての薬草は、あちこちに生えていて、見つけるのは簡単だ。ただ、似たような見た目の別の植物があるので、オレが香りを確認してから、ウィオが採取している。
「これなら、すぐに集まりそうだな」
『生えている場所の地図を書く必要もないね』
ギルドから借りた袋に、薬草を詰めていく。六袋借りてきたので、これがいっぱいになったら一度山を下りる。
「今日はここで寝るか」
『平らなところが少ないから、ここを拠点にしようよ』
「そうだな」
近くに人はいないから、ここに荷物を置きっぱなしにしても、問題ない。普通は何かあったときのために、荷物は持って移動したほうがいいけど、オレがいる限り、何かなんて起きない。起きたってどうにでもできる。だから身軽になって薬草を探そう。
『今日は何をする予定?』
「特にない。ルジェは何かしたいことはあるか?」
『うーん、アチェーリの食パンくんに会いに行くには時間がないし、何しようか』
この山の反対側にアチェーリ王国があって、そこで使役獣仲間の食パンくんとその飼い主さんが冒険者として活動している。食パンくんには会いに行きたいけど、馬で飛ばしても一日で往復できる距離ではない。
「ドラゴンに会いに行ったほうがいいんじゃないか?」
『え、いいよ。また今度で』
「ルジェに会うために、飛んでくるんじゃないか?」
『大丈夫じゃない? ウィオが会いたいなら、近いうちに行こうか』
ドラゴンの住む山は、ここからは距離があるけれど、同じ山脈にある。また会いに行くと約束して、しばらく行っていないから、行ったほうがいいんじゃないかとウィオが心配している。ドラゴンのちょっと前は百年前だったりするから、まだ大丈夫だろう。
オレだけ顔を出してくることはできるけど、ウィオはドラゴンにあこがれているから、今度都合をつけて一緒に行こう。
『今日はこのまま部屋でごろごろしようよ』
「そうだな」
神獣の眷属騒ぎがあってから、街をぶらぶら歩くときも、なんとなく視線を感じる。特にここは交易路だから、耳ざとい商人も多い。出かけて、わざわざ騒ぎを呼び寄せる必要もない。
『ベッドにうつぶせに寝て』
「急にどうした? こうか?」
『うん。お客さん、こってますねー』
ウィオの背中に乗って、肉球ふみふみマッサージだ。このあたりが堅いけど、ただの筋肉かな? ウィオは細見に見えるけど、剣士でもあるからしっかり筋肉はついている。戦う筋肉の状態なんて、よく分からない。でもマッサージは気持ちいいはず。
「なんの遊びだ?」
『遊びじゃないよ。筋肉の疲労をとるためのマッサージ』
「……そうか。爪を立てるなよ」
何をしているのかとまどってはいるものの、迷惑しているわけではなさそうだ。だけど、ふみふみは効いていないから、身体が軽すぎるんだろう。じゃあ、足の裏ならどうかな? ふみふみ、ふみふみ。
「やめろ。くすぐったい」
『もう! いつもなでてもらう代わりに、ふみふみマッサージしようと思ったのに』
「気持ちだけもらっておく。ありがとう」
ウィオが起き上がってしまった。戦うなら身体が資本だから、マッサージで役に立ちたかったのに。
仕方がないから、全身治癒しておこう。これで疲れは取れたでしょう。
ウィオと宿の部屋でだらだらとおしゃべりをしながら過ごした翌日、朝から薬師ギルドを訪ねると、ギルド長が待ち構えていた。
「氷の騎士様、薬草の効能が分かりました!」
どの薬草がどう使えるかを興奮気味に伝えてくるギルド長に、ウィオが押されている。
香りが同じなら同じ効能のもの、見た目が似ていてもまったく効能がことなるもの、中には毒が含まれていたものもあったそうだ。
あの山の薬草は、今後もなるべく使わない方針は変えない。よく知らない人が使えば事故が起きかねないからだ。けれど、今回のように少しずつ効能を解明していく作業は続けるらしい。
「その情報を、ネウラの学園にも共有してもらえますか? 薬学科長が興味を持っていました」
「もちろんです。前の薬師長様ですよね。こちらからお願いしたいくらいです」
そんなこと言ったら、長期休暇におじいちゃん先生がうきうきと出張してくるんじゃないかな。
「季節熱にはこの薬草が必要ですので、これを採取してもらえますか?」
「分かりました。ルジェ、覚えてくれ」
『キャン』
くんくん。これは、最初に季節熱用の薬草だと見せてくれたものと同じ香りだね。ただ元のものより、葉っぱがかなり大きくなっているけど。
「作り方は少し変える必要があったのですが、葉が大きい分、薬もたくさん作ることができるので、これで南部の薬不足は解消されるでしょう」
「よかったです」
「できれば、大まかに生えている場所をおしえていただけますか?」
「戻ったら報告します」
あの険しい山に入ることができるのか分からないけど、でもまた薬草が不足したときにウィオが来られるとは限らない。冒険者に依頼を出すためにも、場所を把握しておきたいのだろう。
探すものも決まったので、これからしばらく山の中にこもって薬草探しだ。薬草ハンターの名にかけて、お仕事を頑張るぞ。
お試し用に薬草を採ったところから、山の中腹を西へ移動しながら薬草を探す。
ふんふん、くんくん、発見。お目当ての薬草は、あちこちに生えていて、見つけるのは簡単だ。ただ、似たような見た目の別の植物があるので、オレが香りを確認してから、ウィオが採取している。
「これなら、すぐに集まりそうだな」
『生えている場所の地図を書く必要もないね』
ギルドから借りた袋に、薬草を詰めていく。六袋借りてきたので、これがいっぱいになったら一度山を下りる。
「今日はここで寝るか」
『平らなところが少ないから、ここを拠点にしようよ』
「そうだな」
近くに人はいないから、ここに荷物を置きっぱなしにしても、問題ない。普通は何かあったときのために、荷物は持って移動したほうがいいけど、オレがいる限り、何かなんて起きない。起きたってどうにでもできる。だから身軽になって薬草を探そう。
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