1 / 3
婚約者の早漏に悩んでます
しおりを挟む
小国の姫・私、リリィは悩んでいた。
「……また来ます」
いつも通り、まるでマニュアルでもあるかのように規則正しい吐息を漏らし、私の上から婚約者が退く。
「アルフォンス様、せめて少しお話しませんか……?」
男に縋ってみるが返事はなくその背中は遠のいていく。
――何度も身体を重ねているのにそれ以上の言葉を交わすこともない。
心が寄り添うわけでもない。ただ冷たく繰り返される、三擦り半も持たない大国の第一王子・アルフォンスと週に一度行われるこの行為に。
信じられるだろうか。
戦争が起これば戦場では自ら指揮を執り、最前に立つ勇敢さと聡明さを兼ね備え、
政も自ら率先して意見し常に民のためになるよう行動する、齢二十一、大国の太陽・アルフォンス。
女性のなかでは背が高い私が見上げるほどの長身。張りのあるグレーの髪、グリーンにもみえる碧眼。形のいい顎と唇。それだけの容姿でありながらどこか自信がなさげに憂う表情をみせる姿が、国内外からの人気を更に煽っていた。
その大人気、愛され王子がまさか、とんでもない早漏だなんて。
しかも『また来ます』の一言だけ告げて即去って行く淡泊さ。清々しい賢者タイム。
こんな悲劇があるだろうか。
始まりと終わりが圧倒的に近い。そしてもの凄く浅いのだ。なにって、ナニが挿ってくる深さが。
直視したことはないが恐らく先端しか入っていない。その状態での三擦り半だ。
こんなこと誰にも相談できない。
もちろん婚約者とはいえ政略結婚相手である大国の王子の下の相談であることは大前提だけれど……その前に私は自分の小さな国からでさえあまり良い印象を持たれていない。
それは父によく似たこの外見にあった。鋭い目つきに、ピンク色の縦ロール……所謂、おとぎ話にでてくる悪役の姫そのものの容貌。そしてただ口下手なだけなのだが冷徹と印象づけられた口調。
本当は淡いピンクや慎ましい花のモチーフが好みだけれど『お似合いですよ!』と誂えられた深紅のドレスに肩の凝る絢爛豪華な装飾品の数――齢二十四になった現在、もう今更変えることができないイメージが定着していた。過去に私の婚約が何度も破談になったこと(元々相手に恋人がいたり、もっと豊満な姫が好みだったり……が本音だったみたいだけどなぜか私が冷たすぎるからで破談理由は統一されていた)
引く手あまたのアルフォンス王子と、嫁き遅れの姫。しかも私のほうが三つも年上。
すべてが不釣り合いで縁談がきたときは卒倒するかと思った。
過去に婚約破棄された本音の理由の一つに『お高くとまって味見もさせない』と言われたことがあったので今度こそはと二度目の顔合わせで部屋に連れ込み、既成事実をつくるのに成功した。
それからだ。アルフォンス王子は週に一度私のもとにやってきて身体を重ねる。
そこで私にひとつの疑問が湧いた。もしかして、既成事実があるがために彼は愛され王子の名に恥じない優しさ故の義務感で、したくもないのに一生懸命勤めとして果たしてくれているのではないだろうか。
……そうだとしたら三擦り半も淡泊も納得がいく。そしてもの凄く申し訳なくなってきた。
いくら身体を重ねようと心の距離が縮まらないのも当然だ。
今更婚約破棄はもう勘弁なのでそれは受け入れられないけれど、本音を吐き出して欲しい。
どんな罵詈雑言でも受け入れる。婚約破棄以外なら。
ただでさえこの国では継母に嫌われて厄介者扱いなのだ。この数年は本当に邪魔だったようで何度も食事に毒を盛られるわ階段で突き落とされそうになるわ……まあ、つまりこの先生きていくためにこの結婚は必要不可欠。婚約破棄は断じて受け入れられない。
突然本音を聞きたいと言っても口にするはずがないし、婚約者相手に自白剤なんて罪人のような真似はできない。となれば、まずは思う存分発散してもらって、それから本音を聞こう。
必要なのは『どんな男性でもバッキバキになれて長持ちする薬』だ。
そうと決まればお父様御用達の精力剤……はルートから用途がすぐにバレそうなので独自にその派生から手に入れることにした。
『そして裏ルートを使って材料を集め、漸く完成したのがこの秘薬でございます』
「これが……」
顔を隠した老婆から小瓶を受け取る。揺れる液体はいかにもな濃いピンク色。
『はい。これを飲めばどんな殿方でもまるでオオカミのように……国王もまだまだお若いですな』
「……このことは他言無用にね」
お父様、ごめんなさい。そう心の中で謝罪して、今夜の王子を待った。
「……また来ます」
いつも通り、まるでマニュアルでもあるかのように規則正しい吐息を漏らし、私の上から婚約者が退く。
「アルフォンス様、せめて少しお話しませんか……?」
男に縋ってみるが返事はなくその背中は遠のいていく。
――何度も身体を重ねているのにそれ以上の言葉を交わすこともない。
心が寄り添うわけでもない。ただ冷たく繰り返される、三擦り半も持たない大国の第一王子・アルフォンスと週に一度行われるこの行為に。
信じられるだろうか。
戦争が起これば戦場では自ら指揮を執り、最前に立つ勇敢さと聡明さを兼ね備え、
政も自ら率先して意見し常に民のためになるよう行動する、齢二十一、大国の太陽・アルフォンス。
女性のなかでは背が高い私が見上げるほどの長身。張りのあるグレーの髪、グリーンにもみえる碧眼。形のいい顎と唇。それだけの容姿でありながらどこか自信がなさげに憂う表情をみせる姿が、国内外からの人気を更に煽っていた。
その大人気、愛され王子がまさか、とんでもない早漏だなんて。
しかも『また来ます』の一言だけ告げて即去って行く淡泊さ。清々しい賢者タイム。
こんな悲劇があるだろうか。
始まりと終わりが圧倒的に近い。そしてもの凄く浅いのだ。なにって、ナニが挿ってくる深さが。
直視したことはないが恐らく先端しか入っていない。その状態での三擦り半だ。
こんなこと誰にも相談できない。
もちろん婚約者とはいえ政略結婚相手である大国の王子の下の相談であることは大前提だけれど……その前に私は自分の小さな国からでさえあまり良い印象を持たれていない。
それは父によく似たこの外見にあった。鋭い目つきに、ピンク色の縦ロール……所謂、おとぎ話にでてくる悪役の姫そのものの容貌。そしてただ口下手なだけなのだが冷徹と印象づけられた口調。
本当は淡いピンクや慎ましい花のモチーフが好みだけれど『お似合いですよ!』と誂えられた深紅のドレスに肩の凝る絢爛豪華な装飾品の数――齢二十四になった現在、もう今更変えることができないイメージが定着していた。過去に私の婚約が何度も破談になったこと(元々相手に恋人がいたり、もっと豊満な姫が好みだったり……が本音だったみたいだけどなぜか私が冷たすぎるからで破談理由は統一されていた)
引く手あまたのアルフォンス王子と、嫁き遅れの姫。しかも私のほうが三つも年上。
すべてが不釣り合いで縁談がきたときは卒倒するかと思った。
過去に婚約破棄された本音の理由の一つに『お高くとまって味見もさせない』と言われたことがあったので今度こそはと二度目の顔合わせで部屋に連れ込み、既成事実をつくるのに成功した。
それからだ。アルフォンス王子は週に一度私のもとにやってきて身体を重ねる。
そこで私にひとつの疑問が湧いた。もしかして、既成事実があるがために彼は愛され王子の名に恥じない優しさ故の義務感で、したくもないのに一生懸命勤めとして果たしてくれているのではないだろうか。
……そうだとしたら三擦り半も淡泊も納得がいく。そしてもの凄く申し訳なくなってきた。
いくら身体を重ねようと心の距離が縮まらないのも当然だ。
今更婚約破棄はもう勘弁なのでそれは受け入れられないけれど、本音を吐き出して欲しい。
どんな罵詈雑言でも受け入れる。婚約破棄以外なら。
ただでさえこの国では継母に嫌われて厄介者扱いなのだ。この数年は本当に邪魔だったようで何度も食事に毒を盛られるわ階段で突き落とされそうになるわ……まあ、つまりこの先生きていくためにこの結婚は必要不可欠。婚約破棄は断じて受け入れられない。
突然本音を聞きたいと言っても口にするはずがないし、婚約者相手に自白剤なんて罪人のような真似はできない。となれば、まずは思う存分発散してもらって、それから本音を聞こう。
必要なのは『どんな男性でもバッキバキになれて長持ちする薬』だ。
そうと決まればお父様御用達の精力剤……はルートから用途がすぐにバレそうなので独自にその派生から手に入れることにした。
『そして裏ルートを使って材料を集め、漸く完成したのがこの秘薬でございます』
「これが……」
顔を隠した老婆から小瓶を受け取る。揺れる液体はいかにもな濃いピンク色。
『はい。これを飲めばどんな殿方でもまるでオオカミのように……国王もまだまだお若いですな』
「……このことは他言無用にね」
お父様、ごめんなさい。そう心の中で謝罪して、今夜の王子を待った。
13
あなたにおすすめの小説
燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。
彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。
そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。
幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。
そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?
面食い悪役令嬢はつい欲に負けて性悪クズ王子の手を取ってしまいました。
トウ子
恋愛
悪役令嬢に転生したことに気づいた私は、いつか自分は捨てられるのだろうと、平民落ち予定で人生設計を組んでいた。けれど。
「まぁ、とりあえず、僕と結婚してくれ」
なぜか断罪の代わりに王太子に求婚された。最低屑人間の王太子は、私も恋人も手に入れたいらしい。断りたかったけれど、断れなかった。だってこの人の顔が大好きなんだもの。寝台に押し倒されながらため息をつく。私も結局この人と離れたくなかったのよねぇ……、と。
ムーンライトノベルズでも公開。
真面目な王子様と私の話
谷絵 ちぐり
恋愛
婚約者として王子と顔合わせをした時に自分が小説の世界に転生したと気づいたエレーナ。
小説の中での自分の役どころは、婚約解消されてしまう台詞がたった一言の令嬢だった。
真面目で堅物と評される王子に小説通り婚約解消されることを信じて可もなく不可もなくな関係をエレーナは築こうとするが…。
※Rシーンはあっさりです。
※別サイトにも掲載しています。
ちょいぽちゃ令嬢は溺愛王子から逃げたい
なかな悠桃
恋愛
ふくよかな体型を気にするイルナは王子から与えられるスイーツに頭を悩ませていた。彼に黙ってダイエットを開始しようとするも・・・。
※誤字脱字等ご了承ください
私の意地悪な旦那様
柴咲もも
恋愛
わたくし、ヴィルジニア・ヴァレンティーノはこの冬結婚したばかり。旦那様はとても紳士で、初夜には優しく愛してくれました。けれど、プロポーズのときのあの言葉がどうにも気になって仕方がないのです。
――《嗜虐趣味》って、なんですの?
※お嬢様な新妻が性的嗜好に問題ありのイケメン夫に新年早々色々されちゃうお話
※ムーンライトノベルズからの転載です
【完結】夢見たものは…
伽羅
恋愛
公爵令嬢であるリリアーナは王太子アロイスが好きだったが、彼は恋愛関係にあった伯爵令嬢ルイーズを選んだ。
アロイスを諦めきれないまま、家の為に何処かに嫁がされるのを覚悟していたが、何故か父親はそれをしなかった。
そんな父親を訝しく思っていたが、アロイスの結婚から三年後、父親がある行動に出た。
「みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る」で出てきたガヴェニャック王国の国王の側妃リリアーナの話を掘り下げてみました。
ハッピーエンドではありません。
【完結】お父様(悪人顔・強面)似のウブな辺境伯令嬢は白い?結婚を望みます。
カヨワイさつき
恋愛
魔物討伐で功績を上げた男勝りの辺境伯の5女は、"子だねがない"とウワサがある王子と政略結婚結婚する事になってしまった。"3年間子ども出来なければ離縁出来る・白い結婚・夜の夫婦生活はダメ"と悪人顔で強面の父(愛妻家で子煩悩)と約束した。だが婚姻後、初夜で……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる