追われる身にもなってくれ!

文月つらら

文字の大きさ
10 / 74

考える

しおりを挟む

 無事森の中まで逃げ切り、昨日泊まったところのように少し開けた場所にたどり着いた。
 まだ2回目だというのにもう慣れたような手つきで各自焚き火や寝床を作ったりしている。昨日と違うことといえば、道具屋で買ったらしい鍋とお皿と箸、そしてコップまで人数分準備されていることだ。
 野菜や調味料なんかも買ってあるので当分食べるものには困りそうにない。

「野菜たっぷりのポトフできたわよ~。」

 ソフィアがそう言えば待ってましたとそれぞれ席に着く。俺も食うか、と磨いていた鉱石を一旦しまって器を手に取った。

「ソフィア天才。ほんとおいしいわね。」

「ウインナーなしでも全然いけるぜこれ。」

「シンティアおかわりー!」

 みんなお腹が空いていたようで、ソフィアが作ったポトフはあっという間になくなっていた。ウインナーなしで大丈夫なのかと心配だったが、味付けが絶妙で肉なんてなくても全く問題ないおいしさだった。
 心ゆくまでポトフを堪能したあとはこちらもソフィア特製のハーブティーを淹れてもらい、みんな普通にキャンプを満喫してしている人みたいに寛いでいた。
 その様子に今日はもうあとは自由時間にしてもいいな、とも思ったがどうしても気になることが多すぎたので本題へと乗り出すことにした。

「ルキ、あの男のことなんだが……。」

「悪いがあんまり答えられることはないぜ。別に教えたくないわけじゃない、ただアイツはちょっと特殊だ。」

 ルキはそう言いながら俺から視線を逸らし、ジッと焚き火を見つめた。

「そうは言っても気になるわよ。あの男は一体なんなの? ルキのことも、フィンのことも知ってるみたいだったけど。」

「アドラー・オプスキュリテ。軍人。あの壁はアイツの魔法。壊すのは鋼魔法しか無理。一応言っておくがオレはアイツの仲間じゃないし、アイツの部下だったとかでもない。」

 ルキはそれだけ言うと、これ以上言うつもりがないらしく少し離れた場所に移動した。まだ聞きたいこといろいろあるのだが、本人が言うつもりがないなら仕方ない。

「ルキがアイツの仲間だったら街から出る時に俺たち全員捕まっていただろうしな。」

「それはそうね。鋼魔法で助けてもらってるし、ルキが敵とは思えないわ。」

「お姉さんはそれよりもフィンの双剣を知っていたことが気になったわね~。汚かったって。」

 それは俺も気になっていたことだ。どこかで出会っていたのだとしても、あんながっしりとした体格に眼帯をつけた男なんて忘れるわけがない。
 絶対に会ったことはないはずなのに何故知っているのか。そしてなぜ綺麗になったことを疑問視されたのか。
 ルキはあの男、アドラーが特殊だと言っていた。特殊ってなんだ。確かにただの軍人ではないことはわかる。だが仮に兵士長や軍団長であったとしても、特殊とは言わないだろう。

(俺とルキを知る男か……)

「もう一つ言えるとすれば、アイツはこの国の軍人じゃない。」

「この国の軍人じゃない? でもあそこにいたじゃないか。それに俺を追ってきてる。」

 指名手配されてからまだ2日目、他の国からわざわざやってきたとも思えない。それも他国の指名手配犯を捕まえるために。
 今までそんな話は聞いたことがないし、そこまでするメリットが他国にあるとも思えなかった。

「まぁこの国でキミを見かけた情報があったから、この国の中央司令部から手配書が出ただけだと思うぜ。アイツは軍事力の国、ヒンメルの人間だ。」

 ヒンメル、その名前にわかりやすく反応したのはシンティアだった。先ほどまでも真剣な顔をしていたが、その名前が出た途端顔を強張らせている。
 どうした、と聞くとシンティアがただ首を横に振って口は開かない。

「ねぇ、てことはヒンメルの軍がフィンを追ってるってこと?」

「そういうこと。他国の軍まで動員してね。」

 そこまでさせるほどの罪を犯したのか俺は。一体それが何なのかまではルキも知らないらしく、次にアドラーに出会ってしまったときにでも聞くしかなさそうだ。

「それで、ルキはなんでアイツと知り合いなのよ? 明らかに殺意向けられてたけど。」

「ちょっといろいろあっただけだぜ。ちょっといろいろ。」

「ちょっとなのかいろいろなのかハッキリしなさいよ。」

「はいもうこの話は終わりー。今日はオレが見張ってるからさっさとキミたち寝なさい。」

 そうわかりやすく話を切り替えてルキは魔法弓の整備を始めた。これ以上はもう何も言う気はないらしい。
 その様子にみんなも聞き出すのを諦めたようで、次々と就寝の挨拶が聞こえてきた。
 俺としてはこのあといい加減鉱石を磨きたいのだが、今日一日だけでいろんなことが起きて、いろんな話をして、頭も体もそろそろ限界になっている。

(無理をして倒れるわけにもいかないし、俺も寝るか)

 ルキに見張りのお礼だけ言って、できるだけ綺麗な岩の上に寝転がる。ゴツゴツしていて少し痛いが、土の上で汚れるよりはマシだ。

(明日はこれからどこ行くか決めて、またキャンプかな。そろそろ風呂にも入りたいが……。あと……)

 段々と遠ざかる意識に抵抗することもせず、俺はそのまま朝まで寝た。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン
ファンタジー
 世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。  大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。  GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。  ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。  そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。  探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。  そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。  たまに有り得ない方向に話が飛びます。    一話短めです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

処理中です...