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そりゃあ疑問に思うだろう
しおりを挟む街中に入って数分。それまで欲しいものといえばマスクとゴーグルだったのが、今は完全にサングラスに変わっていた。
どこを見ても何かのステージかと思うほどのカラフルなライトと建物は、それまでの岩山だらけとは違いすぎて脳が混乱さえしてくる。ここに長いこといたらセンスどころか思考さえも変わってしまいそうだ。
そう感じているのはみんなも同じなのか、ずっと騒がしくあれこれ喋っていたアドラーやルキも完全に黙り込んでいた。どこを見ても蛍光色は結構メンタルにくるものがあるらしい。
ここまで特色が強い街だと思っていなかったし、正直今すぐにでも引き返したい。なんかもう引き返しても許される気がする。建物だけでなく街中にいる人々のファッションも到底俺には理解できそうにないくらい奇抜だし、多分もう全てが俺の感覚とは違うんだと思う。
露出狂かと思うほどの服の人もいれば着る毛布か何かかと思う服の人。かと思えば世紀末かと思うような人もいて、ちょっと話を聞くとかが簡単にできる感じでもない。
(完全に来る街間違えただろこれ……。こんな状況下でどう探すんだよ鑑定士……)
もういっそその辺にいてほしい。ゲームでよくある第一村人みたいな感じで、ここは◯◯だよって地名言うキャラ。そんな立ち位置でいてくれないと、あちこち建物に入って探すなんて不可能だ。
もちろんそんな簡単に見つけることなんて現実では相当運が良くないと無理な話だが。
「路上で鑑定してるとかないかな、路上鑑定士流行ってるだろ今。」
「シンティアそれ初めて聞いた。」
「しっ! 今のフィンはかなり頭がアレだから耳を傾けちゃダメよ。」
「失礼だな、俺はただ鑑定士がその辺にい……いたー!」
リーナに反論しようと振り向いたとき、ちょうどその方向に路上鑑定と看板を立てて道路に座っているおじさんがいた。正直路上鑑定士が流行ってるとか完全に思いつきで言ったからマジでいるとは思わず、本当に路上鑑定士っているんだと俺が一番驚いている。
だがいたならちょうどいい、さっさと上手いこと言って連れ帰ろう。もうほんとさっさと。
俺はそう心に決めておじさんのそばに駆け寄った。なんて言おうか、など悩んでいる時間も惜しい。というかこのおじさんが凄腕の鑑定士かもまだわからないが、もうこの際違っててもいい。鑑定士ならもうほんと誰でもいい。
急にダッシュで近寄られたおじさんはこちらのそんな考えを知ってるはずもなく、一体何事かと目を丸くさせて俺を見ていた。
「おじさん鑑定士なんだろ? 一緒に来てくれないか、リベラシオンに。頼む。マジで頼む。一刻も早くここを出たいから頼む。」
「フィンのやつ何も説明せずに要求だけ言い出したぜ……。」
流石に無茶が過ぎたか、とおじさんを見ると、おじさんは少し考える素振りをしてから口を開いた。
「その顔は反乱軍リーダーのフィンですか。そして後ろのはヒンメル軍の軍人。変装してうまく隠してはいるがアリーチェ皇女も。反乱軍と敵国皇女と敵国軍人……。相容れない存在同士が何故こんなところにいるんでしょう?」
いや本当にこの人鑑定士か? 実は情報屋とかじゃないのか、と思うくらい痛いところを見抜いてくるおじさん。というかおじさんが言う疑問は本当その通りで、答えがあるならむしろ俺が聞きたいほどだ。
「その疑問は至極真っ当だし俺が一番気になってるが今は置いといてほしい。むしろわかるなら教えてくれ。なんでこのパーティが存在できてしまっているのかを。」
そう答えになっていない答えを言うと、おじさんはまた少し考えたあと静かに笑った。
「まぁ、いいでしょう。見たことがない状況には見たことがない物が集まる。面白いものが見れそうですし、リベラシオンに行ってもいいですよ。もちろん鑑定は有料ですが。」
「あら、話がわかる方ですわね。お堅そうな雰囲気ですのに。」
「鑑定士としては面白いものが見られればいいのでね。名前がない頃に一度伺った土地ですし、道もわかるのですぐ移動しましょう。それではまた向こうで。」
持ち物は特にないのか、小さな鞄だけ持っておじさんは歩いて行った。正直そんな簡単に決めていいのかとこっちが不安になったが、まぁ本人がいいと言うんだしこのままにしておこう。
それにこれでこの街から出られるのが本当に嬉しい。そしてできれば二度と来たくない。
「よし、なんかわからんが鑑定士も仲間になったし帰るぞ、おまえら。」
「お姉さん一回またお風呂入りにクライノート行きたいわ~。」
「わたくしも賛成ですわ。というか髪型も変えてメガネもして帽子も被ったのに、あの鑑定士に見破られてしまいましたし……。さらに変装用の小物を探さないとまずいですわ。」
それはあのおじさんが凄かっただけだと思うが、用心しておいたほうがいいのは確かだろう。いやそもそも俺たちと一緒に行動しなければ、そんなあれこれ考えなくていいはずなのだが。
本人はまだこれからも一緒に着いてくるつもりなのか、押し入れにウィッグがあっただのなんだのアドラーと相談を始めていた。そこまでして着いてくるのは何故なのか。というか、アドラーもそうだがアリーチェも本来の仕事を放り出してて大丈夫なのだろうか。
「アリーチェもアドラーも仕事はいいのか? もう数日間ずっと一緒にいるが。」
「俺はうまくやってるから大丈夫だ。GPS偽装なんておてのものだし、部下にもちゃんと指示はしてる。」
「わたくしも抜かりありませんわ! 皇女と言っても形だけ。わたくしがどこにいようが、家に帰って来ない日があろうが別に騒がれもしませんわ。わたくしが必要なのは行事のときだけですから。」
そう少し寂しそうに言うアリーチェに心が痛んだ。別に俺が悪いわけではないが、公的行事でのお飾りとしての存在は少女にはつらいことだろう。
「ですからたくさんフィンと一緒にいられますわ! また昔みたいにアーチェと呼んでくださってもいいんですのよ?」
先ほどの表情が嘘だったかのように笑いながら抱きついてくるアリーチェ。悲しげな表情より笑った表情の方が可愛らしくて、これ以上は家のことには触れないでおこうと俺も抱きしめ返した。
「仕方ないな。気が向いたら呼んでやるよ。」
そう言えばアリーチェは嬉しそうにまた笑った。同時に後ろから人を殺せそうな視線を感じるのは気のせいだと思いたい。
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