55 / 74
揺れてそして
しおりを挟む
「なんかさ、戦いたくね? オレは戦いたい。戦いがオレを待ってる気がする。」
「気のせいだと思うぞ。平和で何よりじゃないか。」
リベラシオンに帰ってきた翌日、特にすることもなく俺たちはレストランのいつもの場所でダラけていた。もちろん次の人探しや設備増強、拠点移動候補探しなどやるべきことはたくさんある。あるのはもちろんわかっている。わかっているが、やる気があるかどうかはまた別問題だ。
少し前まではとにかく戦力を増やさないと、と思っていたがとても今はそんな気持ちになれない。それはきっとそう、緊張感が全くもってないからだろう。
ここに拠点を持ってから一度たりとも襲われていないし、道中で襲撃に遭ったこともない。なんなら敵のアドラーもアリーチェもここにいて、みんなして仲良くゲームしている始末。これで一体どうやる気を出せばいいというのか。
最後にみんなで戦ったのなんて巨大きのこのときくらいで、あとは小型モンスターもアドラーがバッサリ一撃で斬り捨てて終わり。対ヒンメル軍団と言いつつも、この雰囲気はただのピクニックしがちなお気楽パーティだ。
「いい加減平和すぎるんだって! オレはもっとこう戦いたいの! かっこよくオレの弓矢が敵を貫くところを見て欲しいの!」
「うるさいぞ、ルキ。そんなこと言われても、何故か襲撃されないんだから仕方ないだろ。そんなに戦いたいなら襲撃大歓迎って旗でも立てとくか?」
「じゃあシンティアが周りに絵描くね! うさぎさんとかくまさんとか!」
うさぎとくまの絵とともに襲撃大歓迎と書かれた旗が立っている拠点なんて聞いたことがないが、もうそれはそれでいい気がしてきた。何がどういいのかと聞かれると押し黙るが。
そう思っている間に、すっかり描く気満々になったシンティアは早速道具屋の方へ走って行った。コケるわよ~、とその後ろをゆっくり歩きながらソフィアもついていく。あの2人が作る旗、となると途端にデザインに不安がなぜか押し寄せてくるが、気のせいだと信じたい。
「そうだわ! せっかくだし、このどさん子等身大人形を隣に置いたらどうかしら。」
「俺が襲う側で敵拠点の入り口にそいつあったら回れ右するけどな。」
「確実にヤベェ拠点だもんな! 絶対ウケるしそうしようぜ!」
早速入り口にとどさん子を持って出て行くリーナ。存在感のあるそれは、知らない人が夜に見たら確実に悲鳴をあげるだろう。
「てかオレ、気づいちまったわ。超大事なことに。」
「俺も気づいてしまったんだが。絶対ろくでもないということに。」
こういうときにルキがまともなことを言うわけがない。なんならこの双剣を賭けてもいい。
「いやマジで超大事だから! 聞いてくれ、俺たち、名乗り口上がない!」
そら見たことか、と俺が目線をルキから外すと、リーナたちが慌ただしく扉を開けて帰ってきた。
「どうした、リーナ。」
「ヒンメル軍がすぐそこまで来てるの! どさん子置いてる場合じゃないわ!」
「すっごいいっぱいいた! すっごい!」
「マジかよ、オレが戦いたいとかフラグ立てちゃったせい?」
「んなわけあるか! どうする、大軍で来られたらこの人数じゃ勝ち目ないぞ……。」
何かうまいこと追い返せる策でもあればいいが、困ったことにそんなものがパッと思い浮かぶ頭ではない。そもそも、拠点を構えた時点で囲まれたときのことを考えておくべきだったのに、何も用意しなかったツケがここにきて最悪な形になろうとしている。
考えている時間も、一網打尽にできる兵器もない。あるのは集まってくれた仲間と、それぞれの武器のみだ。
「おかしいですわ! だってアドラーがアゲートからヒンメルの軍を遠ざけてたはず!」
焦ったようにアリーチェがそう言いながらアドラーを見る。
「何かが起きてやがんな。下手したら俺の軍丸々ここに向かってるかもしれねぇ……。」
「……。参考までに聞くが、どれくらいいるんだ?」
「数えたことなんざねぇが、5千くらいか?」
5千、対してこちらは数人。これをひっくり返すなんてとてもじゃないが無理だ。いわゆるゲームの負けイベントかと思うくらいの圧倒的な敗北だろう。
それでも捕まるわけにはいかないのだから困ったものだ。いっそ戦わずここを捨てて逃げるのが一番生存率は高いかもしれない。
そう考えていると、アドラーが立ち上がってマクシムに話し出した。
「おい、ここに集まった鍛冶屋やら道具屋やらの奴らは今どこかに出かけたりしてるか? それとも全員ここの拠点内にいるか?」
「今出かけている人はいませんね。みなさん今日はそれぞれの店の中にいらっしゃいます。」
「そうか、そいつはラッキーだ。神は俺たちを見捨ててはねえみたいだな。」
一体どういうことだ、とアドラーに問いかけようとしたその時、突然周りの空気が振動しているような妙な感覚が俺たちを襲った。
「まぁ、こうするしかないですわよね。」
「酔ったら悪りぃな。ちょっとだけ耐えてくれや。」
そう言うアドラーの声とともに振動は段々と大きくなっている。自分や地面が揺れているわけではないのに、何故かガクガクと揺れているような不思議な感覚に、俺は話すこともできない。
それはアドラーとアリーチェ以外も同じようで、みんな目を閉じたり跪いたりと苦しそうにしている。
「もっとうまく使えたらよかったんだがなぁ。真面目に練習しとくべきだったかぁ?」
「そうですわね。それにしても、これでわたくしたちの計画は……。」
「仕方ねえさ、また考えればいい。」
そろそろか、と言うアドラーの呟きとともに俺は完全に意識を手放した。
「気のせいだと思うぞ。平和で何よりじゃないか。」
リベラシオンに帰ってきた翌日、特にすることもなく俺たちはレストランのいつもの場所でダラけていた。もちろん次の人探しや設備増強、拠点移動候補探しなどやるべきことはたくさんある。あるのはもちろんわかっている。わかっているが、やる気があるかどうかはまた別問題だ。
少し前まではとにかく戦力を増やさないと、と思っていたがとても今はそんな気持ちになれない。それはきっとそう、緊張感が全くもってないからだろう。
ここに拠点を持ってから一度たりとも襲われていないし、道中で襲撃に遭ったこともない。なんなら敵のアドラーもアリーチェもここにいて、みんなして仲良くゲームしている始末。これで一体どうやる気を出せばいいというのか。
最後にみんなで戦ったのなんて巨大きのこのときくらいで、あとは小型モンスターもアドラーがバッサリ一撃で斬り捨てて終わり。対ヒンメル軍団と言いつつも、この雰囲気はただのピクニックしがちなお気楽パーティだ。
「いい加減平和すぎるんだって! オレはもっとこう戦いたいの! かっこよくオレの弓矢が敵を貫くところを見て欲しいの!」
「うるさいぞ、ルキ。そんなこと言われても、何故か襲撃されないんだから仕方ないだろ。そんなに戦いたいなら襲撃大歓迎って旗でも立てとくか?」
「じゃあシンティアが周りに絵描くね! うさぎさんとかくまさんとか!」
うさぎとくまの絵とともに襲撃大歓迎と書かれた旗が立っている拠点なんて聞いたことがないが、もうそれはそれでいい気がしてきた。何がどういいのかと聞かれると押し黙るが。
そう思っている間に、すっかり描く気満々になったシンティアは早速道具屋の方へ走って行った。コケるわよ~、とその後ろをゆっくり歩きながらソフィアもついていく。あの2人が作る旗、となると途端にデザインに不安がなぜか押し寄せてくるが、気のせいだと信じたい。
「そうだわ! せっかくだし、このどさん子等身大人形を隣に置いたらどうかしら。」
「俺が襲う側で敵拠点の入り口にそいつあったら回れ右するけどな。」
「確実にヤベェ拠点だもんな! 絶対ウケるしそうしようぜ!」
早速入り口にとどさん子を持って出て行くリーナ。存在感のあるそれは、知らない人が夜に見たら確実に悲鳴をあげるだろう。
「てかオレ、気づいちまったわ。超大事なことに。」
「俺も気づいてしまったんだが。絶対ろくでもないということに。」
こういうときにルキがまともなことを言うわけがない。なんならこの双剣を賭けてもいい。
「いやマジで超大事だから! 聞いてくれ、俺たち、名乗り口上がない!」
そら見たことか、と俺が目線をルキから外すと、リーナたちが慌ただしく扉を開けて帰ってきた。
「どうした、リーナ。」
「ヒンメル軍がすぐそこまで来てるの! どさん子置いてる場合じゃないわ!」
「すっごいいっぱいいた! すっごい!」
「マジかよ、オレが戦いたいとかフラグ立てちゃったせい?」
「んなわけあるか! どうする、大軍で来られたらこの人数じゃ勝ち目ないぞ……。」
何かうまいこと追い返せる策でもあればいいが、困ったことにそんなものがパッと思い浮かぶ頭ではない。そもそも、拠点を構えた時点で囲まれたときのことを考えておくべきだったのに、何も用意しなかったツケがここにきて最悪な形になろうとしている。
考えている時間も、一網打尽にできる兵器もない。あるのは集まってくれた仲間と、それぞれの武器のみだ。
「おかしいですわ! だってアドラーがアゲートからヒンメルの軍を遠ざけてたはず!」
焦ったようにアリーチェがそう言いながらアドラーを見る。
「何かが起きてやがんな。下手したら俺の軍丸々ここに向かってるかもしれねぇ……。」
「……。参考までに聞くが、どれくらいいるんだ?」
「数えたことなんざねぇが、5千くらいか?」
5千、対してこちらは数人。これをひっくり返すなんてとてもじゃないが無理だ。いわゆるゲームの負けイベントかと思うくらいの圧倒的な敗北だろう。
それでも捕まるわけにはいかないのだから困ったものだ。いっそ戦わずここを捨てて逃げるのが一番生存率は高いかもしれない。
そう考えていると、アドラーが立ち上がってマクシムに話し出した。
「おい、ここに集まった鍛冶屋やら道具屋やらの奴らは今どこかに出かけたりしてるか? それとも全員ここの拠点内にいるか?」
「今出かけている人はいませんね。みなさん今日はそれぞれの店の中にいらっしゃいます。」
「そうか、そいつはラッキーだ。神は俺たちを見捨ててはねえみたいだな。」
一体どういうことだ、とアドラーに問いかけようとしたその時、突然周りの空気が振動しているような妙な感覚が俺たちを襲った。
「まぁ、こうするしかないですわよね。」
「酔ったら悪りぃな。ちょっとだけ耐えてくれや。」
そう言うアドラーの声とともに振動は段々と大きくなっている。自分や地面が揺れているわけではないのに、何故かガクガクと揺れているような不思議な感覚に、俺は話すこともできない。
それはアドラーとアリーチェ以外も同じようで、みんな目を閉じたり跪いたりと苦しそうにしている。
「もっとうまく使えたらよかったんだがなぁ。真面目に練習しとくべきだったかぁ?」
「そうですわね。それにしても、これでわたくしたちの計画は……。」
「仕方ねえさ、また考えればいい。」
そろそろか、と言うアドラーの呟きとともに俺は完全に意識を手放した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる