追われる身にもなってくれ!

文月つらら

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得体の知れないモノって怖い

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「ヒンメルの忘れられた土地ゲハイムニス?」

「誰も近づかない、いえ近づけないそんな土地です。それなのに上空から見たところ人……のようなモノが見えまして。気になるので行ってみませんか?」

 再び広間に集められた俺たちはマクシムからの提案に小首を傾げていた。というのも、記憶喪失の俺は別としてもヒンメルに忘れられた土地があるなどみんな聞いたことがなかったからだ。ヒンメルの土地に詳しいはずのアドラーやアリーチェも検討さえつかないとなると、本当にそんな場所が存在しているのかさえ疑問に思えてくる。
 しかしマクシムは一枚の写真を提示しながら、俺たちの様子には構わず話を続けた。

「まぁ、正直に申しますと私もそこがゲハイムニスだという確信は持てていないのですが。この写真を見てわかる通り誰……いやナニかいるのでよろしくお願いします。」

「オレはパスで! どう見ても人の形に見えないもんその影。オレ幽霊とかそういう系マジムリ!」

「シンティアも絶対やだよ! 別に信じてないけど! 信じてないけどやだよ!」

 ルキとシンティアが自分たちは絶対に行きませんと写真を見ながら騒ぐ。確かにこの写真を見ると行きたくないと思う気持ちもわかる。
 濃い霧のようなモヤに薄らと映るぼやけた影。それは人というには無理があるほどに大きく、ぼやけて形はよくわからないがまるでロボットか何かのようだ。
 何者かわからないというのはかなり不安を煽る。だが軍師であるマクシムが行けと言うのだからきっとここは重要な場所か何かなのだろう。財政難の今、意味のない場所に行っている場合ではないしきっとそうに違いない。これでただの好奇心だったら殴るかもしれない。
 俺も怖いものは怖いので正直行きたくない。しかしそんなこと言ってられないので俺は無理矢理気持ちを奮い立たせて行くメンバーを考えることにした。

「じゃあ今回は俺と……、おいおまえら、顔を逸らすな。」

 みんな行きたくないのか、全力で顔を逸らしてきた。アドラーなんか逸らしすぎてもはや天を仰いでいるし、ソフィアは椅子ごと後ろを向いている。

「言っとくが俺1人は嫌だからな。」

「でしたら、わたくしとどうです? ヒンメルの土地で知らない場所があるなんて皇女として良くないですし……。怖いので気は進みませんけれど、何かあってもフィンが守ってくれますわよね?」

「できたらな。じゃあアリーチェは決定であとはそうだな、2人くらい欲しい。」

 本当は回復要員であるソフィアに来て欲しいが、スミラのときも来てもらったし連続は可哀想な気もする。何より絶対嫌だと後ろを向いているし、頼んだところでのらりくらりとかわされて終わるだろう。
 ソフィアがいないとなると、大きな怪我をしないことが大前提になるため器用で常識的な行動ができる人がいい。間違っても俺の腕を刺したり、俺の足を射抜いたり、水場に雷魔法をぶちかまさない常識ある人が。
 そんなやついたかと悲しい疑問が浮かんだが、ここに1人だけいることに気づいた。

「マクシム、たまには篭ってないで一緒にどうだ?」

 まさか自分が誘われると思っていなかったのか、マクシムは一瞬驚いた顔をしながらこちらを見た。

「私ですか。まぁ、たまにはついて行くのも悪くはありませんが……。心配事を言うなら、頭まで筋肉のアリーチェお嬢様が一緒というのがちょっと。」

「ちょっとなんですの!? というかわたくしは頭まで筋肉じゃありませんわ!」

「おや、お嬢様の聞き間違えじゃないですか?」

 仲が良いのか悪いのか、再びジャレ始めた2人をよそに残りの1人を考える。アドラーが行く気ないということはスミラだけ来るとも思えないし、シンティアとルキも来る気がない。残るはリーナだが、先ほどから何も言ってこないあたり行きたくなさそうだ。
 3人だと少し不安ではあるが仕方ないか、と立ち上がるとマクシムの隣にいたエニグマが凄い勢いで飛び跳ねた。

「→⬜︎☆◆!?」

「相変わらず何言ってるかわからん。」

「俺が一緒に行ってやろうか、頬が腫れてるそこのオマエ! って言ってます。エニグマさんが来てくだされば確かにいろいろと助かるのでアリかと。」

「頬が腫れてるは余計だが、来てくれるというならお願いするか。マクシムもいるから翻訳されるし。」

 戦えるのだろうかという疑問はあるが、エニグマが一緒に来てくれれば倉庫使い放題で物資の心配がいらないというのは大きい。これなら怪我しても薬草を取り出すことができるし、それだけでも連れて行く価値がある。だからといって無茶をするつもりはないが。

「じゃあ行くか。道案内はマクシムに任せる。」

「わかりました。ではまず私が登録してあるヒンメルの土地にワープしてそこから歩いて行きましょう。」

「あら、用意がいいですわね。」

「フィンちょっと待って!」

 マクシムがワープしようとした瞬間、リーナが今日一番の大声を上げて俺を呼び止めた。

「なんだよ、リーナ。あ、さては俺と離れるのが寂しくなったのか? 心配しなくてもすぐ帰ってくるから安心して待って、んっ!?」

「ん。行ってらっしゃいのチューくらいしとこうかと思っただけ。あとお土産よろしく。」

 いやもう何この可愛い子俺の彼女だけど、と悶える俺を尻目にマクシムは非情にも土地名を唱えてワープ準備に入った。

「ヒンメルのブリッツへ。」

「え? ちょっとマクシムそこはまずいですわっ!」

 焦るアリーチェの声とともに俺たちはワープした。ヒンメルのブリッツへ。
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